徒然あずちょも
「てつだおうか? こるせっと」
そう言うので背を向けたら、二の腕を取られて正面から抱きしめられた。
「なあ……」
「うん、なあに?」
耳元で囁く声は常になく熱っぽい。密着した体は熱く、汗と埃の混じった匂いが鼻をかすめる。ふたりとも出陣帰りだった。あまりに意図があからさまで笑ってしまった。
「脱ぐのを手伝ってくれるんだろう?」
「そうだよ」
囁きに耳をくすぐられ首をすくめたら、耳朶をピアスごと口に含まれた。舌がピアスの縁や裏をなぞり、うなじがちりちりとざわめく。戦帰りの体は熾火を残している。その愛撫だけで吐息が漏れた。
「かんじた?」
金具で舌を切ってしまえ。それでも期待している自分は否定しようがなく、股間は兆し始めている。腹立ちまぎれに後頭部の髪を握ってやれば、小さく笑う声がした。
「ごめんって」
「やるならさっさとしろ。焦れているくせに」
「うん、そうだね」
唇は耳を離れ、首筋を啄みながら降りていく。小豆の手は背筋を撫で下ろし、コルセットに辿り着くと強く押さえた。勃ち上がったもの同士が押し付けられる。はっと喘ぎが漏れた。皮膚に汗が滲み、全身の感度が上がる。耳や首筋に小豆の毛先が触れるだけで表皮の神経がざわつく。息が上がる。汗と整髪剤のかすかな匂いを嗅ぎ取る。小豆の匂い。今から自分を抱く男の匂い。縋りついても背中を引っ掻く指はシャツの上を滑べるだけで心許ない。それが焦りを募らせる。
小豆の指は丁寧に紐を解いていった。しゅるしゅると布の擦れる音がする。紐が解けるほどに腰回りの圧迫感が緩んでいき、それはまるで硬い殻を一枚一枚剥がされていくようだった。山鳥毛のやわい中身が徐々に露わになっていく。羞恥に肌が粟立った。
「あっ……」
興奮しすぎて涙が溢れる。目の前にある汗の滲んだ首筋に歯を立てる。その瞬間、顔を引き剥がされ唇を奪われた。壁に体を押し付けられる。今までの丁寧さが嘘のように乱暴にコルセットは暴かれた。
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