徒然あずちょも
金的を食らった。
山鳥毛を押し倒し、しかしなんとなく意地の悪いことをしたい気分だったので、脇やら首やらをくすぐってみたのだ。山鳥毛は声を上げて身を捩り、こらだの駄目だの言っていたが、それでもなお続けていたら跳ねた膝が小豆の股間に直撃した。
痛いなんてかわいいものじゃない。痛みが下腹で爆発し、ひゅっと息が止まった。声もなくその場にくずおれると、下から「すまん! 悪い!」と焦った声が聞こえる。普段なら小豆も答えられるが、今ばかりはどうすることもできずに悶絶するばかりだ。
脂汗をだらだら流しながら悶えること数分、ようよう身を起こすと大丈夫かと声をかけられる。山鳥毛の声はしょげかえり、顔は心底申し訳なさそうだった。小豆の秘蔵の笹団子をうっかり食べてしまったときだって、こんなに殊勝な顔はしていなかった。
「おれるかとおもった……」
「すまない」
ちょっと考えて尋ねてみる。
「うめあわせしてくれる?」
山鳥毛はいいぞと頷いた。元はと言えば小豆が変なちょっかいをかけたのが原因なのだが、それを言い訳にするつもりはないようだった。随分従順だ。文句の一つくらい貰いそうなものなのに。とんでもなく痛い目にはあったが、腹を立ててはいなかったので、山鳥毛の素直さに自尊心がくすぐられてしまった。山鳥毛は誰に対しても誠実で礼儀正しいが、こういう健気さを見せるのは小豆にだけなのだ。
首筋を撫でると首をすくめ、顔を近づければ目をつぶる。触れるだけのくちづけをし、舌を出してと要求すればピンク色の舌が唇の間から伸ばされる。
山鳥毛の舌をぺろりと舐め上げながら、ぞくぞくと嗜虐的な気分が湧き上がってくるのを感じる。そもそもくすぐってみようと思ったのも、いじめたい気分があったからなのだ。
「ねえ、ふくぬいで」
カッと刻印が赤く染まる。潤んだ瞳が小豆を見上げる。手がインナーの裾にかかる。
どちらが先なのだろうと時折小豆は考えてしまう。小豆の嗜虐心に山鳥毛が応えているのか、それとも彼の被虐心に小豆が誑かされているのだろうか。
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