徒然あずちょも


 花が落ちた。
 窓辺に活けていた白椿だった。一輪挿しから伸びる枝はすっくと天を目指し、大輪の白い花弁を王冠の如く頂いていた。それが、落ちた。
 見つけたのは小豆だった。ぼったりとした花を掌に乗せ、山鳥毛に差し出した。おちちゃったようだ。ところどころ黒ずみ始めていた椿は、それでも朝日を浴びて照り輝いていた。
 寝起きの山鳥毛は目を細め、伸びをし、残念だなとぼんやり言った。声にはまだ濃厚な眠気が滲んでいる。するりと指先で花弁を撫でた。
 うん、そうだね。空の屑入れの底に、そっと花を置いた。




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