6-5 零番迷宮 後編



【途中報告】
From:最上一善
見誤ったな。君なら間違いなくその一手を目指すと信じた。偽物のクイーンを許せず、一ノ瀬君こそが最強たるクイーンだという証明をすると信じた。言っただろう?信憑性の宿る覚悟とはただ、示すだけでいいと。

よく聞きたまえ。ポーンは昇格することでキング以外全ての駒に成りすませる。これは黄昏学園における解決しなければならない謎そのものだ。僕たちはこの無数に立ち並ぶ謎を動かすことで、全てを解決へと導く。

では謎が成りすませないキングとは何か?それは光だよ。解決という僕らが守るべき光であり、そして掴むべき光そのものだ。つまりそこを目指す最強の一手がクイーンであり、僕たち解決部だよ。決してキングではない。

思うに僕たち解決部にとっての歩むべき歴史というのは、学園という大樹の繁栄と維持であり、そこに実る生徒たちの記憶なのだと思う。時に思い返すことさえ憚られることもあるが、想いを分かち合えるという価値を無視することだけは絶対にあってはならないことだ。

それは一ノ瀬君から分かち与えられたものがあるように、その実った記憶を次の青葉へと託し、手渡していくという責任が僕たちにはある。そうして歴史とは紡がれていくのだと、僕は思うよ。

そのためにも迷宮という枝は剪定しなければならない。それが僕たち自身に与えられた役割だ。一ノ瀬濫觴を模倣し枝を実らせることではない。彼女の価値を見誤った君の負けだよ。

解決部は守られるキングではなく、何にも囚われずに全てを切り拓くクイーンなんだ。そのためのビショップとして僕はここにいる。君が本当に一ノ瀬君だったのなら、この見誤り方はしなかったはずだ。それが君が一ノ瀬濫觴ではない何よりの証明だよ。

何故対抗馬としての白羽の矢が僕に立ったのか。きっとあの時の君は、この時を見据えて僕を選んだんだね。

ビショップをビショップの8へ。
これで、今度こそチェックメイトだ。

さあ、帰っておいで、世成君。

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