無自覚コミュニケーション
-Uは目撃する-
あれはゾウに行く途中のことだったんだけどよ。バルトロメオの船に乗ってた時だ。あいつら、海賊やってるくせに航海士はいねェわ、なにかとばあちゃんの知恵で乗り切ろうとするわでめちゃくちゃだったんだよ。海に出たばっかのおれ達よりも酷かった。
乗船中に嵐でルフィが吹っ飛ばされることなんて珍しくなかった。海に落ちること計五回、それにトラ男が巻き込まれること三回。三回目にはさすがにぶちギレてたな。毎回ゾロとおれが助けに行くんだが、やっぱ体格の問題っつーか、トラ男のほうがでけェし重いし刀もあっから、ゾロがトラ男を引き上げてたんだよ。
一回目は、普通に礼言って何事もなく終わったんだ。二回目が降ってきた雹の処理しててちょっと助けに入るのが遅れちまって、二人とも少しの間動けなくてな。ルフィは甲板に転がってたんだが、トラ男はなぜかゾロの足を枕にしててよ。――そう、膝枕ってやつだな。膝枕くらいはおれらもやるだろ? ただ一味じゃないトラ男に、それもゾロがっていうのが珍しくてさ。しかも頭まで撫でてやってるんだぜ? ずいぶん仲良くなったんだなって、不思議には感じてたんだよ。
三回目はすぐに助けられたから、そこまでダメージはなかったはずだ。でもちょうど冬島が近くにあって冷えてたから、船の奴らが気ぃ利かせてシャワーの準備してくれたんだ。おれとルフィはすぐ寒ィ寒ィって言いながら入りに行った。てっきりトラ男とゾロも来るもんだと思ってたら一向に来なくて、しっかり温まって出てみたらトラ男はゾロに寄りかかったまんまでよ。どうしたんだってロビンとフランキーに訊いても、二人ともわからないって言うし、トラ男はトラ男でずっと黙ってて。もしかして海に落ちたせいでドレスローザで負った傷が開いたんじゃ、って。ロビン達も心配そうな顔してトラ男も見てた。
そんな空気の中だよ、我らが船長はバルトロメオに飯を貰ってご機嫌に戻ってきた。ゾロとトラ男も温まって来いよ!なんて言ってよ。その瞬間、おれには聞こえたね。ぶちって、トラ男の血管が切れる音が。
いやー、そっからはもう大説教の嵐よ。ルフィにはいっさい口挟ませなかったもんな。黙ってたのも怒り抑えるためだったみたいで、ゾロを傍に置くことでなんとかやり過ごしてたらしい。正直、なんで? って思った。なんでゾロを? って。ゾロも何も言わずにトラ男の傍にいるのも妙だった。
そのあと床にめり込むくらい凹んだルフィに落ち着いたのか、トラ男はゾロ連れてシャワー浴びに行った。出てきたのは三十分後くらい、だったよな? シャワーだとゾロは早ェから、トラ男に付き合ってたんだろうな。ほら、あいつの腕、完治してなかったし。ゾロに髪を拭いてもらってたのもそうだったんだろ。
戻ってきたトラ男の機嫌が、なぜかやけに良いように見えたのは、たぶん、おれの気のせいだ。……気のせいだよな?
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