6-3 零番迷宮 前編
【途中報告】
From:最上一善
なるほど、偽物は排除すべきか。ひとつの側面しか持たぬ真実しか認めないというそれは、まるでこの迷宮の歪みそのものだな。神にでもなったつもりかい?
僕たちはこの迷宮を終わらせに来たポーンである。指図めクイーンポーンとビショップポーン、女王と賢者のイミテーションだ。僕の渡した棋譜通りにチェスの駒を進め、次なる一手で勝利を収めた僕が生徒会長となることで、この迷宮は崩壊する。それが順当な目論見であったはずだ。互いの自我はどこにも含まれてなどいない。
だが君がやらんとしているそれは、下手をすればこの迷宮における君の存在証明そのものを揺るがす行為だ。既にその輪郭は消失の片鱗を見せている。一手間違えればこのまま迷宮の坩堝に囚われて沈むだろう。
君の信念は今、何処にある?
たとえばどれほどの夢想家であろうと、腹の底から本気で不老不死を信じたりはしないだろう。ところがどうして、その対象が凡人とは違う優れた先導者となった途端、人は永遠にして不滅であれと願い始める。盲目とはそういうものだ。君の目にその陰りが見え始めているのは僕の見間違いかい?
何も虚勢を張ることが愚を犯すことに繋がるとは言わないさ。始めは着丈の合わない大きな服とて、成長すれば身体に釣り合って馴染むようになるだろう。然りとて君がどれだけ高尚な真実を得ようと藻掻いたところで、恒久的な平和などこの迷宮には存在しない。
ルークをキングルークの3へ。これでチェックだ。
降参したまえ。それでこの迷宮における謎は投了だよ。
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