6-3 零番迷宮 前編



【途中報告】
From:最上一善
その通り。偉大なる神は選択を与えたもうたさ。正解を選ばなければ暴虐の限りを尽くすという、一択しか答えのない選択肢を常に与えている。この迷宮と同じ、正解しか選ばせまいというそれが、果たして公正な選択だと言えるだろうか?

だからその横っ腹の隙を突いてやろうという、僕たちのような盗賊めいた輩もまた、こうして存在し得るわけだ。とても単純な話さ。人間はいつでも黙って運命に殴られるのを待っているわけではない。
だが、単純であるからといって容易でもあるとは限らない。

思うに真実とは、常に複数形なのだよ。たとえばこの迷宮が求める真実と、生徒たちが願い乞う真実、そして僕たちが追うべき真実。その一つ一つはどれも単純な答えだが、それぞれは違う正解を描こうとしている。
それら複数の真実をひとつの正解へと結ぶために重要なのは、Xという変数であり、それを僕たちが担おうとしている。もう奪わせないと言うのなら、気を緩めないことだ。

さあ、僕はこのポーンをクイーンポーンへと昇格させよう。
君はキングを護るクイーンこそが一ノ瀬会長だと言ったね。では次の問いだ。この昇格したクイーンポーンは何とする。クイーンが一ノ瀬濫觴なのだと言うのなら、この女王に成りすまそうとする不届きな歩兵とは一体誰だ?

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