6-3 零番迷宮 前編
【途中報告】
From:最上一善
承知した。僭越ながら対抗馬として受け立とう。
これから行うのは一ノ瀬濫觴という女王の華麗なる失脚だ。君と僕だけが識っている、この世界の何人足りとも踏み込める余地のない、清く正しい志ある不正だ。その王の不正を問える者など、少なくともこの世界にはいない。であるからこそ、僕たちの歩みに不正などないのだよ。
忠誠と盲従は似て非なるものだ。王の価値を正しく選定し受け取れる者だけに、信頼とは捧げることが出来る。虚無なる玉座に忠誠を誓おうとするなど、知恵も心も泥沼に捨ててしまうようなもの。それはこの学園にとって、大いなる損失に他ならない。
よく見ておくといい、蒙昧にして用心深い迷宮の亡者たち。臆病風に吹かれず、この迷宮に王の一手を打つ者が誰かを。そして知るといい、真の覚悟を持って道を切り拓く者の心は、捻れた方程式では到底解けないということを。
さあ、テーブルに着きたまえ会長候補。
この迷宮の王を決めようじゃあないか。
僕は至って冷静だよ。何も問題は無い。
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