天鬼成り代わり

名前変換







軍師後



・天鬼だった少年
「土井半助」が戻った弾みにぽんと体を追い出され元に戻った。戻ったものの割と衰弱状態なのでいつ死んでもおかしくない。が、その場に留まっても殺されるしか未来がないのでとりあえず家を飛び出した。土井半助スペックの肉体に慣れているから想像の何倍も貧弱な己の肉体に嫌気がさしている。忍術学園に侵入して様子を見ようと思っている。が、そこまでたどり着くのに一苦労どころの騒ぎじゃない。場所の情報も天鬼だった頃に調べているから覚えているのだが如何せん体力がない。本当にない。伊達に10年座敷牢で監禁されてない。



・土井半助
戻った際に彼の行っていたことを知る。かつての自分の、あったかもしれない未来。
今件においては全て自分の不徳の致すところだと思っているから天鬼を責めるつもりはない。かわいい教え子たちに刀を向け傷つけたことに関しても行き場のない感情を抱いている。元に戻った時も、生徒達の身を一番に考えたし他の先生方や関係各所へかけた迷惑を考えて胃を痛めていた。が、その一方であの少年がどこへ行ったのかを色んな意味で気にしていた。自分の情報を握った上に天鬼としてああも動ける子供がどこか遠くに存在しているかもしれないという事。あの地獄のような場所に少年が戻されてしまったかもしれないという事。色んな事が気がかりで仕方ない。一件が片付いてからは少年を探している。が、行方不明だった期間の授業や業務がたまっているので思っているように探しに行けない。人に探しに行ってもらう訳にもいかないし、そもそもあの場所を記憶を頼りに探さなければならないのだから難易度が高すぎる。少年の名前もわからないし、知っていたとてあの家の人間は認知していないのであってないようなもの。なので天鬼だった彼がこちらになにかアクションを起こしてくれないと動けない。




✧︎side少年

ぽん、と弾き出されるように意識が堕ちた。落ちた。かと思えばすぐに全身がバラバラになるような痛みが体を襲う。随分と久しぶりのような気がする。たしか季節が巡ること20と少しだったろうか。本来の人生を忘れそうになるくらい長い長い夢から醒めた私は遠い記憶と違わず光の射さない暗闇で両手を繋がれていた。右腕はあらぬ方向に曲がっていて、機能するのかどうかも怪しい。痛い。叫びだしたいのに、乾いた喉は悲鳴の一つも出やしない。なんて惨めな。

「お゛………ぇ゛…ぁ……」

私と同じようにあいつも元に戻れただろうか、なんて。声を出そうとして失敗する。脆い肉体だ。私自身とても他人を心配している状態ではないというのに。だけど20年も共にしたのだ。どうも情が湧いてしまってしょうがない。





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