高杉社長とトレジャーハント!
白い砂浜、青い海。そして空は雲一つない快晴。少々暑いが、礼装のおかげで不快には感じない。
「季節は夏か? だとするとセミの声がしないし、少なくとも日本じゃないな」
マスターの隣に立つ高杉が辺りを見回してつぶやく。
二人は微小特異点の調査及び解決のため、レイシフトで小さな無人島に来ていた。
レイシフト前のシバの観測によると、時代は2000年代、詳しい地域は不明。数日で勝手に消滅するレベルの小さな特異点らしい。
そしてレイシフト可能な同行サーヴァントは高杉晋作のみ。そのことについて高杉本人は「僕の力が必要ということだろう? 任せたまえ」とあまり気にしていない様子だった。そして妙に上機嫌だった。
ほかに気になる点があるとすれば、ホームズがそんな高杉の様子をじっと見ていたことだろうか。だがレイシフト前にマスターにこっそり話しかけることもなかった。これは彼お決まりの「今はまだ語るべきときではない」というやつだろう。
もはやお馴染みとなった通信の不調を高杉に伝えれば呆れ顔で「その礼装壊れてるんじゃないか?」と、通信用の礼装をマスターからひったくってあれこれいじりだす。が、やがて観念したように返した。
「別に壊れてはないな。つまらん。大方この特異点の原因のせいだろ」
「多分ね。まずはこの島をぐるって回ってみる?」
通信が繋がらない以上、現地調査員でなんとかするしかない。小さな無人島という話だし、カルデアからのスキャンがなくても徒歩で回れるだろう。
「いや、その必要はないぞ、マスター君。この時代は2000年代。つまり」
高杉がパチンと指を鳴らすと、地面が光り、やがてプロペラのついた機械が現れた。
「軍用ドローンでの偵察が可能だ!」
「おおー!」
目を輝かせるマスター。そんな彼女に、高杉は画面付きのコントローラを持って得意げに笑いかけた。
ドローンで島を周った結果、砂浜と森以外は何もない無人島だと分かった。また、現在地から少し進んだ所に座礁船を発見したのでまずはそこに移動する。
横倒しになった座礁船は古く木製で、見るからにボロボロだ。船底に大穴まで空いている。先行してその大穴を覗いていた高杉だが、すぐに離れると戦闘態勢に入った。
「ゴーストだ!」
大穴からゴーストが湧いて出てくるが、高杉が刀で一閃するだけですぐに消えるほどの弱さだ。マスターが援護するまでもなくあっという間に二、三体倒すとゴーストはいなくなった。
「なんだもう終わりか? 船をぶち破って巨大ゴーストとか出てきたりしないのか?」
納刀しながら物足りなさそうに言う高杉。決して戦闘狂というわけではないが、特異点に来て最初の戦闘が呆気なさ過ぎて肩透かしもいいところなのだろう。
「ここは体力を温存できたってことでいいんじゃない?」
「それもそうか。……ん? こいつは……」
マスターに答えつつ再び大穴を覗いた高杉は、何かを見つけたのか船内に入っていく。今度は何だろうとマスターが思っていると、高杉はすぐ外に出てきた。彼は満面の笑みで拾ったものをマスターに見せる。
「マスター君! 宝の地図を見つけたぞ!」
「宝の地図?」
古ぼけた紙に描かれてるのはこの島の地図のようだ。その中心にバツ印がある。まさに絵に描いたような宝の地図だ。
「こいつは面白くなってきたぞ! さぁ、トレジャーハントと行こうじゃないか!」
高杉は眩しい笑みを浮かべて言う。夏の日差しでキラキラと輝く海に負けないくらいだ。そんな様子を見てマスターも自然と顔がほころぶ。
いつだかの夏に、ダ・ヴィンチちゃん達と共にトレジャーハントをしたことをマスターは思い出す。今度はどんな冒険が待ってるんだろう、そう思うと期待で胸がいっぱいになるのだった。
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