泡沫の旅路


⬛︎ シンクの過去について

 ヴェリナード城下町で生まれ育った衛兵の息子。
 魔法戦士団になる為の訓練をしていたが、上位の魔法戦士が獲得できる「魔力を視る眼」を早過ぎる段階で習得してしまった為、訓練中に体調を崩す事が多くなり次第に引き篭るようになる。
 夢を諦め目標のない人生に嫌気がさし、一人旅を始めた。

=== story =================

「諸君らが噂に聞いている通り、例の事件の影響で魔法戦士団の人員が大幅に不足している」

 幼い頃から、自分達の暮らしを守る仕事をしていた父の背中に憧れていた。俺はいつか父のような衛士になり、生まれ育った故郷で生涯を全うとする。そう思っていた。
 澄み渡る青い空、絶えず流れる水の音、陽の光を反射し輝く白い城壁。城門から少し離れた場所にある小さな広場には俺と同じような歳の衛士見習いが集められ、城直属の指導者のもと特訓を行う……そんな日々の中、指導者は俺達に新たな道を示した。

「したがって衛士志望の諸君らにも時別に、魔法戦士になる為の訓練を受ける権利が与えられた」

 周りの衛士見習い達がざわつく。
 魔法戦士団は城の衛士よりも地位も名誉も高く、その働きは一国に留まらずアストルティアの各国に影響する。本来であれば衛士見習いにとって遠い存在であるが、国が魔法戦士団の動きを拡大させる為多くの子供達にチャンスが与えられたのだ。

「衛士か魔法戦士……どちらの道を目指すのかは各々の判断に任せる。魔法戦士となる事を希望する場合は私に連絡してくれ」

 父に相談したら、衛士も魔法戦士も民を守る為の大切な存在であると教えてくれた。興味があるのなら、お前好きなようにやってみるといい……その言葉を受け、俺は魔法戦士を目指すと心に決めた。

 結果は、上手くいかなかった。

 前に進もうとする度に、夢から遠ざかっていく……そんな現実に耐えきれず、次第に俺は夢を諦めるようになった。
 生きる意味を見失った俺は、自分自身の弱さから目を逸らすように故郷を離れた。

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