【重要機密】特務司書・アルケミスト:都竹和仁についての記録
作成年:20XX年4月XX日
インタビュー記録:アルケミストとして見出された経緯について
日時:20XX年3月XX日
対象:|都竹和仁《つづきなぎと》
担当:●●庁職員■■■■
■■(事務的な声で)「都竹和仁君。あなたはアルケミストとして、帝國図書館の特務司書に任じられます。このことは一部の者しか知りませんが、政府中枢の職員たちは知識を持っていることに留意してください。あなたには、文豪の魂を転生させる力があります。この力を悪しきものから守り、文学と人々の未来を守るために使ってください。文豪は侵蝕者との戦いにおける最重要戦力であり、その魂を転生させる能力を持つあなた自身もまた、極めて重要な存在です。この点を理解していますか?」
都竹「はい」
■■「特務司書の任にあたり、何か質問はありますか?」
都竹(少し逡巡して)「いいえ、今は特にありません」
■■「わかりました。それでは次に、あなた自身について伺います。あなたは────氏によって推薦を受けましたが、──氏とはどのような関係ですか?」
都竹「僕が入っていた施設と縁のある教会の神父様でした。物心ついた頃からお世話になっていて、困った時や迷った時、いろいろなことを相談していました」
■■「なるほど。──氏から何か特別な技術を教わったことはありますか?」
都竹「……いいえ、ありません」
■■「では、何故──氏はあなたをアルケミストとして見出したのだと思いますか?」
都竹(しばらく考え込んで)「……ある日、夢を見ました。なんだか不気味な夢で……たくさんの本が空中に浮いていて、それがどんどん真っ黒に染まっていくんです。そして、暗闇の中で禍々しいものが不快な笑い声をあげている……そんな夢です」
■■「ずいぶん物騒な夢ですね。それで?」
都竹「驚いた僕は、すぐに──神父様に相談しました。もしかしたら、あれは悪魔で、僕は悪魔に取り憑かれでもしたんじゃないかと思って……話を聞いた神父様は、どこかへ連絡をとっていらっしゃったと思います。しばらく経って、政府から来たという人にお会いして、僕は自分が『アルケミスト』という存在なんだと知りました」
■■「そういった経緯で、あなたはアルケミストとして見出されたのですね。今までも、そういった夢を見ることはありましたか?」
都竹「あんなに不気味な夢を見たのは、あの時が初めてでした。でも、時々『これは夢だ』という意識を持って、自分の意思で歩き回ったりできるような夢を見ることはよくあります」
■■「あなたは視覚障害者ですが、夢の中では視覚を得るのですか?」
都竹「その時によります。現実世界とまったく同じなこともありますし、視覚がなくても『見える』とわかって自由に行動できることもあります」
■■「よくわかりました、ありがとうございます。あなたの特務司書としての活躍に、大いに期待しています」
都竹「ありがとうございます。精一杯頑張ります」
以上
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