ケントの密やかな楽しみ

2025年5月10日、6,000文字。
Stardew Valley、R18、腐向けBL、おっさん、モブ×ケント、ケント受、フェラ、挿入中イキ、ノーマルエンド。

〜あらすじ〜
ケントは谷の静かな日常に馴染めず、気晴らしに山の上のスパを訪れる。誰もいないのを幸い、全裸で湯に浸かっていたが、突然の来訪者に動揺しつつも男の誘いに抗えず、湯気の奥へと導かれていく。
モブの人物像は曖昧に表現してあるので好みのキャラ?に当てはめて読んでもokな内容。
———————————


 ケントは山の上にあるスパへと向かった。

 スターデューバレーに戻ってきてから既に数週間が過ぎていた。愛する妻と子供達と暮らせる喜びは大きいものの、未だに家庭内での自分の居場所や仕事の在り方を見つけられずにいる。幸い従軍していた頃の年金の蓄えがかなりあるので当面の生活費には困らない。


 兵士として勤めた後に都会の清掃工場で働いていたが、戦時中のフラッシュバックに苦しみ辞めてしまったのだ。あの時過ごしていた日々とは違う谷での静かな日常。それに馴染めない自分を誤魔化すように、ケントは山の空気を深く吸い込んだ。

 今は休養期間だと自分に言い聞かせスパの入り口をくぐった。スパに足を踏み入れた瞬間、湿った熱気がむっと押し寄せてくる。天井の一部はガラス張りになっており、柔らかな日差しが差し込んでいた。
 谷の住人にはフリーパスがあるため料金を気にすることもない。平日の昼間とあってか館内はひっそりとしていた。山の中腹という立地の悪さも影響してか利用者が少ないのにもかかわらずトレーニングジムが併設されている。田舎にこれほど立派な施設はもったいない…と思いつつ施設を独り占めできる優越感がケントを満足させた。

 若い頃とは違いかなり肉付きがよくなってしまっているので(それでも同年代と比べれば引き締まっているほうだが)このような施設はありがたい。近所に住む青年がジムで汗を流している姿をよく見かけたりした。若く艶やかで鍛え上げられた肢体が瞼に浮かび…ケントはじんわり熱くなっている事に気付き慌てて意識を戻した。更衣室へ向かい身支度を整えプールに向かう。

 手前には泳げるほど大きな温泉プールがあり、奥に仕切られた小さめのスペースにやや熱めに設定された採暖を兼ねた入浴用の浴槽がある。本来この施設では浴槽内でも水着の着用がルールとされている。
 誰もいないことを確認したケントは履いていたビキニパンツを脱ぎ、洗い場で身を清めてから浴槽へと向かった。
足先から湯に沈めていくたび熱が肌をなぞり上げ、なんとも言えない快感が全身を包み込んだ。
 
湯気が揺れる中何も纏わない自分を意識し、奇妙な高揚感が胸をくすぐった。日々の緊張が解けていく。はぁっ…と思わずため息が漏れた。
無防備に湯の中で緩やかに揺れる肢体、肌に触れる温かさが誰かの手に愛撫されているようでケントは身じろいだ。
「っん…むう……いい湯だ」
 
ケントの男らしい低い声が浴場に響き湯気の中へと消えていった。
ここだけは何もかもから解放される場所。ケントは湯に身を沈め静かに目を閉じた。そして自然と股間に手が伸び半勃ちした己をゆっくり扱く。湯を汚すわけにはいかないので、あくまでも緩やかに穏やかに愛撫する事に没頭していた。

「やあ、湯加減はどうですか?」
 濃い湯気の向こうから唐突に話しかけられ、ケントはぴくりと肩を震わせた。ここは公共の施設なのだから誰が来てもおかしくはない。行為に没頭しすぎて周囲の気配に気づかなかったのはケントの落ち度だった。下半身には何も身に着けていない。そのことに焦りを覚えながらも、さりげなくタオルで股間を隠し平静を装った。
「この谷は静かですね。まさかこんな良い温泉があるとは思いませんでした」
 なんとかこっそりビキニを着用できないか、あるいは浴槽から出る方法はないかと考えを巡らせる。しかし来たばかりの男がすでに浴槽へと入ってしまったため、今のところそれは難しそうだった。

 話しかけてきたのはこの谷で何度か挨拶を交わしたことのある顔見知りの男だった。特に親しいわけではないが温泉というリラックスした場では饒舌になるのだろう。気さくな笑顔を浮かべながら他愛のない話を続けてくる。
 タオル一枚で誤魔化してはいるものの、無防備な下半身を完全に隠すことなどできない。ケントは相手に合わせて相槌を打ちながらも内心では焦りを募らせていた。男はそんな事情を知る由もなく、ゆったり肩まで湯に浸かりながら話を弾ませている。

「ところで…ここには他にも良い場所があるのをご存知ですか?」
「よ、良い場所とは…?」
 ケントはぎこちなくしながらも男の言葉に興味を惹かれた。
「なあに、良い場所で良いコトをするだけですよ。あなたも興味があるでしょう?」
 男は湯船の中のケントの下半身に視線を落とし
「ああ、その格好で大丈夫です。むしろそのほうがいいくらいです」
 そう言われケントはギクリとした。やはり全裸でいることはとうにバレていたのだ。羞恥に頬が熱くなるがそれと同時にもうどうにでもなれ!というヤケクソな気持ちも湧き上がってくる。

「ほら、あそこの洗い場の奥…ちょうど死角になっていて誰にも気づかれません。今日みたいな日は自分たち以外誰も来なさそうですし…」
 男はにこりと微笑みながら視線を奥の方へと向ける。どこか含みのある言い方にケントの心臓が跳ねた。視線を向けられた先——洗い場の奥は確かに死角になっており、湯気が立ち込める中では様子を窺うことも難しい。
「……そんな場所があるんですね」
 平静を装いながら言葉を返すが声がわずかに震えているのが自分でもわかった。男はそれに気づいたのかクスリと笑いながら肩をすくめる。
「ええ、なかなか落ち着ける場所ですよ。試してみませんか?」

 もはやこの場の状況すべてを見透かして誘っているようにしか思えない言い方だがケントは迷った。断ってしまうべきなのかそれとも…?湯の中でぎゅっとタオルを握りしめながらケントは無意識に男の表情を窺った。悪意はないように見える。それどころか更に誘惑するような視線を向けられごくりと喉が鳴る。
「………では、ちょっとだけ」
 気づけばそんな言葉が口をついていた。男はニヤリと笑いゆっくりと浴槽から立ち上がる。そして無言のまま「ついてこい」と言わんばかりに手招きをした。湯気の向こうにぼんやりと浮かぶその姿を追った。男は振り向きもせずまっすぐ洗い場の奥へと進んでいく。

ケントはふと自分の無防備な状態を意識した。タオルは手に握りしめたままだが、ずり落ちそうな心許なさがある。
 やがて男が足を止めた。そこは湯気が立ち込める洗い場の奥——確かに死角になっていて外からはほとんど見えない場所だった。
「ほら、ここなら誰にも見られませんよ」
 男がゆっくりと振り返る。ケントの鼓動がわずかに速くなった。男は置いてあったバスチェアにケントを座らせ、水着を脱ぎ隆々と屹立した肉棒をケントの目の前に見せつけた。

……男同士のこうしたやりとりは軍隊時代に嫌というほど見てきたし、己も幾度となく体験してきた。
この男のように優しく?誘われる事もあれば逃げ場もなく強引に求められる事もあった。ざらついた肌と汗がぶつかり合う熱、荒ぶる息遣いと、交わされる視線と粘膜の奥に潜む抑えきれぬ渇望——それはあの場だからこそ許される甘美な逃避。それがいつしか快楽へと変わり——俺の体は男の熱だけを求めるようになってしまった。

 この疼きをどこにぶつければいい?それは目の前にあるのだ。

powered by 小説執筆ツール「arei」