ギリシャ
夏のギリシャは強い光に晒される。だから特に午後は日差しを避けて皆、屋内で過ごす。路地をうろつく野良犬や野良猫もいまは日陰でじっとしているだろう。そういう時間だった。
息をひそめる街の中を真田は何を言うともなく歩いていく。譲介は静かにその歩みに従った。
午後の強い光に影さえ白く光り出しそうだった。白く眩しい光がすべてを脱色していくようで、先を歩く男の背を見つめながら目を細めた。
生気さえを吸い取っていきそうな日射しの中では、すべてが白昼夢のようだ。彼が先を歩いているのも、自分がそのあとを歩いているのも。この瞬間のすべてが。
眩しい日差しを見ていられず、目を伏せた。男の影が、今は道しるべだった。
「ついたぞ」
男の声に顔を上げると、そこはアクロポリスの入り口だった。
再会したつい数十分前のように、向かい合う。逆光で、真田の背後から日が差している。
譲介は真田の影の中に立っていた。
汗が首筋を伝う。
「ちょっとそこで待ってろ」
「え、」
「俺は入場料を払ってくる。お前は水でも買って飲んどけ。ああ、それから、スリに気をつけろよ」
そう言って真田はきびすを返してゲートの方へ歩いていった。
眩しい光がふたたび視界に降り注ぐ。
譲介の視界の中で、男は、白い光の中を歩いていた。
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