ギリシャ
白いテーブルクロスの上に影が差す。
遅い昼食を終えたばかりの真田の前に、養い子は現れた。
ギリシャの夏の陽射しを背にした養い子は、目の前の男の顔に浮かんだ表情の意味を的確に読み取って、ひとこと、「あなたに会いたくて」と言った。
アメリカにいるはずの養い子。顔を見るのは約1年ぶりだった。
真田はなぜか舌打ちしたくなる。
「西海岸からか?」と見上げて問えば、「はい」と短い答えが返ってくる。
「ここはもう閉まる」
真田がこの店に入ったのは、昼の営業が終わるほんの数十分前だった。
「ええ。知っています。……会えれば、会って顔を見られればよかったので」
衒いのない声音で養い子は言う。
真田はテーブルに昼食の代金とチップを置くと立ち上がった。
「歩くか?アクロポリスまで。その様子じゃ観光もしちゃいないだろ」
「アクロポリスって、パルテノンン神殿がある…」
「そうだ」
養い子の答えを待たず、真田は路地に入っていった。
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