乾杯




飲んだ後の水一杯が旨い。
「なんでか知らんけど、飲み屋で飲むより家に戻ったときの方が美味く感じるような気がするな。」
「それ、ちゃんと洗剤で洗って布巾で拭った食器使ってるからと違いますか?」
そんな風に言われて、確かにそうかもな、て思う。
ぬるいし、浄水器の水ともちゃうのになあ。そんな風に思いながら、飲み干したコップを流しに置いた。
今洗って伏せといたらええんとちゃうか、と思ったけど、ちょっと面倒いし、眠い。
シャワー浴びて寝よか、と思ってパンツ引っ張り出してたら「そういえば、今日は膝枕してへんかったんですね?」と四草が言った。
「兄さん、一度膝に乗ったら剥がされへんから、今日は楽でした。」と面憎いすまし顔をしてる男を睨みつけた。
こいつ、ほんまにしらばっくれよって。
「あいつら、オレに膝貸したら、誰かさんにうどん百杯奢らされることになるで、て喜代美ちゃんに脅かされてたらしいで。」
「それ、誰のことでしょうね。」
「さあなあ。……まあええわ、オレもお前の膝やないと最近塩梅が悪いねん。」
「塩梅て何ですか?」
「塩梅は塩梅や。」
頭乗っけたときにあるなあて分かるアレとか、て言えへんわなあ。
シャワー浴びて寝るからお前も寝え、て言うたら、そっちは付き合いますよ、とか抜かしおった。
「オレ、今眠いて言うたとこやぞ。」
「寝てていいですよ、勝手にしますから。」
「……ドアホ、オレがちゃんと起きてるときにせえ、て言うてんねん。」
「今したい。」
「したいんなら、ちょっと待っとれ、酒抜いて来るし。」
いい子にしてたらええことしたるから、と言うと、年上の男は瞬きをして、この間みたいに噛まんといてくださいよ、と言って小さく笑った。

ほんま、腹の立つやっちゃで。

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