2-3

初めての時とは逆に、俺が雨上リラの手を引いて近場のホテルに駆け込む。無人会計と看板が出ているところを選べば良いと、ここ1ヶ月ほどで学んだ。
足早に部屋に駆け込んで扉を閉めると、ずっと手を引かれていた彼女は少しばつが悪いような表情でこちらを窺っていた。

「あのさ……一応言っとくけど。アタシさっきまで他の人としてたんだよ。だから……」
「分かってる」
「じゃあシャワー一回浴びるから……」
「いい。そのままで」
「……、……汚いよ」
「汚くない」

雨上リラは、いよいよ困り果てたように立ち尽くす。その手を引いてベッドへ促せば、おずおずとそれに従った。
俺は彼女をベッドに腰掛けさせてから、ゆっくりと押し倒す。ぼふ、と柔らかい寝具に彼女の身体が埋まった。
いつもと違い白い素肌を晒している脚を手でなぞり上げ、スカートの中に手を入れ、下着に手をかける。
ふい、と彼女の視線が逸れる。叱られるのを恐れているかのように。
脱がせた下着には、明らかに男のものである白濁がべったりとついて糸を引いていた。

「お前、これ履いて帰るつもりだったのか」
「……そういうのが、好きな人も居るから……」

だから最初にしたときあんなことを訊いてきたのか。こうして下着まで欲望で汚す奴がいるから。
同じく白濁に塗れた秘所に触れると、他の場所より火照っているのが感じられた。ああ、本当に、他の男とした後なんだな。嫉妬に近い欲望に駆られて、その場所に指を挿し込む。

「っ……」

息を詰めたのを無視して、奥へと指を動かして、掻き出すように関節を曲げる。そのまま引き抜けば、俺の指にも誰かの精液が纏わり付いた。まだ中に残っている。何度も指を入れ、指の本数も増やして、奥まで入れては中のものを掻き出す。量が多いのかよほど奥で出されたのか、何度やっても尽きる気がしない。

「っあ、ぅ……ッ、ねぇ、もう、いいでしょ……っ」

弱ったような声にはっとする。目的は違えど、中を執拗に攻めているのと大して変わらないのだとそれでようやく気づき、顔が赤くなる。少女の顔も同じく赤らんでおり、この行為で感じていたことがありありと分かった。その顔は扇情的で、興奮を誘うものだった。それを見られたことへの満足感ともいえる充足、同時にその顔を他の男にも晒していたのだろうということへの嫉妬心がぐらぐらと沸き立つ。

「ああそう……じゃあ、もう、挿れる」

先程までしていたのだから、大して解さなくてもいいのだろう。
自分のものを取り出し、適当に擦って勃たせる。
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>ゴムを着ける
サイドの引き出しから包みを取って破り、中のゴムを装着した。これが必要になるような女なのだと、今はありありと分かる。
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>ゴムを着けない
よく知らない他の男ともしてるのが、今はありありと分かる。それでも、安全より自分の欲を満たすのを優先して、何も着けなかった。
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鈴口を温かくぬるついたそこへぴとりとつけて、そこから一気に貫く。

「ッか、は……っ!」

無理やり肺の空気が押し出されて出たみたいな、少し苦しそうな声。でも、中はすんなりと俺のものを受け入れていた。この柔らかく熱い膣内が、先程まで他の男を同じように受け入れていたのだと思うと、やはり腹の底から沸騰するように妬みと怒りが湧く。
腰をギリギリまで引くと、奥に残っていた他人の精液が雁首に引っかかって溢れ出てきた。まだこんなに残ってるのか。じゃあ、もっと取り除かないと。
体重を乗せてもう一度奥まで突く。苦しげに甘い呻き声。ギリギリまで引いて中のものを掻き出す。あ、と名残惜しむような声を彼女が出した。掻き出されていく精液の方を惜しんでいるように聞こえて、それを罰するようにもう一度、奥まで、ずん、と。何度もそうして最奥を抉っては中に残った他の男の証を掻き捨てる。

「っや、きょ、ぅ、重……ッぃ、っう、」

途切れ途切れだが、文句を言うような響きだった。

「しょうがないだろ、他の奴のは全部出さないといけないんだから」
「そっ、ぁ、……そんなの、無理、だよ……っ」
「うるさいな」

可能かどうかではなく、気持ちの問題だ。他のオスの子種なんて全部取っ払って自分の方が優等なオスなのだと見せつけたい。そういう男の本能だ。
そんな話をしているうちに、腰を引いて纏わりついてくる粘液もだいぶ透明に近くなってきた。精子が掻き出されて愛液の割合が多くなってきたのだろう。彼女が無理だと言うのはおそらく子宮の中に溜まった分のことを言っているのだろうが、それが無理なら──。
一度抜いて、雨上リラの体勢を仰向けからうつ伏せに変える。彼女はそれだけで何か察したようだったが、それに抵抗する気力もないみたいだった。話が早くて結構なことだ。
腰を持ち上げて、丸い尻の間から覗く色づいた割れ目へ、思い切り肉芯を突き立てた。

「ッひぁあ……ッ!」

悲鳴に近い嬌声は、枕にほとんど吸い込まれた。
獣の交尾と同じ体勢で、貪るように膣内を蹂躙する。肌と肌のぶつかり合う音が強く響いた。
射精感が込み上げてきたら、我慢することなく好き勝手に中を使って、そして欲望を放つ。
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(>ゴムを着けている)
その欲も薄膜に隔てられて届きはしない。けれど、気持ちだけでもこの女の中に種付けしたいという衝動を発散するように、出している最中も奥へ、奥へと腰を押し付けた。
もちろんそんなものは届きはしないし、むしろ届いていたら一大事なのだが。
こんなときにも自己保身を欠かせない俺にできるのは、ただ、抱き潰すくらいに快楽に溺れさせて上書きすることくらいだった。
一度抜いてゴムを外し、新しいものに付け替える。備品のものとフロントで引っ掴んできたものが尽きるまではするつもりだ。
まだまだ衝動の有り余る芯は、ゴムを着け直すのも楽だった。
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(>ゴムを着けていない)
自分の精子がちゃんと子宮の中に届くようにと、出している最中もぐ、ぐ、と腰を押し付ける。
子宮の中のものまで掻き出せないなら、自分のもので最大限薄めるしかない。相手がどれだけ出したんだか知らないが、育ち盛りの男子高校生の性欲を舐めるなよ。
さて、あと何回中に出したら俺のもので上書きできるだろうか?
射精が落ち着いたら、抜くことなくまた抽迭を始める。まだ収まらない。上書きしたいという欲望は、十分に火種になっていた。
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「あっ、ぅ、またっ、……ッぅあ」

再び熱が擦れ合って、雨上リラの喉からほろほろと声が零れ始める。シロップのように甘い声が、理性を溶かしていく。
テンポの速いピストンの合間で、時折ぐりぐりと奥を捏ねたり、浅いところだけを雁首で引っ掻いたり。リズムを変えていく度に彼女の声も跳ねる。それでも、一番声が上がるのはやはり最奥を突いたときだった。中もきゅう、と締まって、竿を抱きしめるのがたまらない。
重いストロークでどちゅ、と奥を突く。この一番奥、雌の器官を。俺のものでいっぱいにしたい。
二度目の射精は、そう間が空かなかった。一回目と同じように腰を奥へ奥へと押し付けて、種付けしたい、上書きしたいという気持ちを発散しようとする。

「うぁ、奥ッ、押すの、やぁ、あ……ッ!」

彼女は最奥に押し付けられるのを嫌がるように、腰を引いて逃げようとする。それを無理やり捕まえて、またピストン運動を始めた。

「ひぅ、ゃ、んん……ッ」

それからは何度も、同じことの繰り返し。
自分の欲望のために彼女の身体を使い尽くして、最奥に切先を押しつけて欲望を吐き捨てる。終わったらもう一度最初から。
彼女が泣いても、腰を動かすことを止めなかった。
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(>ゴムを着けている)
ゴムが最後の一個になる頃には、他の男のものはすっかり愛液で流されてしまったようだった。もう纏わりついているのも透明な粘液のみだ。
雨上リラは、息も絶え絶えで、汗だくのままベッドにくったりと横たわっている。
目尻に溜まった涙が、瞼の震えでまた一粒落ちていった。
自分自身、竿が痛みを訴えている。何度も射精すると痛くなるんだな。
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(>ゴムを着けていない)
数えるのも億劫になる程中出しをすれば、もう入り切らないのか、精液はほとんどが逆流して溢れ出てきていた。
最奥に押し付けていたものを抜けば、塞がり切らない穴からごぽりと白濁が零れ落ちた。これだけ出せば、子宮の中も上書きできただろうか?
雨上リラは、下半身を白く汚されたまま、ぐったりとベッドに横たわっている。
か細い呼吸で身体が震えて、涙がまた一粒落ちていった。
だいぶ欲は満たせたように思う。そろそろ自分自身も限界に近い。だってちんこ痛いもん。
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それでも最後の一押しと思って、勃たせたものを再び彼女の中に沈めた。

「ぁ、あ……っ、も、やだ、ぁ……ッ、」
「……ん、分かってる……だから、あと一回だけ」

俺とするより前に他の男としていた雨上リラは、とっくの昔に限界に達しているのだろう。膝を立たせることすらできなくて、途中からはお互い横になって、ぐったりと横たわる彼女の片足を持ち上げて無理矢理犯し続けていた。
今度は奥を執拗に突くようなことはせず、優しく、弱めの力で軽く腰を動かす。とちゅ、とちゅ、と柔らかい水音がした。
インナーと肌の隙間に手を差し込んで、胸元まで捲り上げる。全身が敏感になっているのか、ブラジャーを外すと触ってもいない乳首がささやかな双丘の上にぴんと立っていた。それを口に含み、甘露を舌の上で転がすように優しく舐める。

「ぁ、う……っ、ん、んぁ、っふ、ぅ……」

次第に、彼女の声もまた純粋な快楽に揺蕩うような、リラックスしたものになっていく。先程までの嬌声はもはや悲鳴じみたものだった。それすらも俺の耳には甘く響いてはいたのだが。
ゆるく柔らかな抽迭を行いながら、今度は口と口を合わせる。無理やり奪うような形ではなく、動物が傷ついた仲間を舐めるような、労りを込めて。

「ん、ふ……、んぅ、っはぁ、ぅ……」

疲れからか、もう駆け引きなどで繕う余裕もなく、彼女は素直に応じて舌を絡める。何回やっても、キスをすると唾液は甘いし、舌が絡み合うのは気持ちいい。ただ、今はそれを激しくではなくゆったりと余裕を持って感じていた。
緩やかなピストンを繰り返し、感じすぎない程度に好いところに当てる。彼女の身体は時折ぴくりと小さく震える。その度に細い腰や薄い腹をそっと撫でて、宥めるようにまた唇を合わせた。

「ん……、……は、……ぁ、んっ……」
「…….雨上さん」
「あ……、」
「.雨上さん、好きだ」
「……ぁ……、」

そう告げたときの彼女の濡れた瞳の奥に見えるものをなんと言い表すべきなのか、ずっと分からないでいる。
かすかに驚いたような、でも悲しいような、諦めたような、言われることを分かりきっていたような気すらする。そして全部が不正解なんだろうとすら思う。
それでもそのときの俺は、この欲望と衝動を表す言葉をこの陳腐な二文字しか知らなかったのだ。
好きだから、他の男に抱かれているのが許せないし、無理矢理にでも犯したいほど欲情するのだと。ロマンチックな錯覚に酔って、そう思い込んでいた。
言葉にするといっそう真実味が増したような気がして、本物かも区別がつかない愛おしさに押されて、次第に腰の動きも激しくなる。
彼女の中は柔らかく蕩けて、俺の欲望を優しく抱擁してくれている。それでまた、胸が切なくなるような衝動が湧いてくるのだった。

「好きだ、……っ、.雨上さん……」
「ッは、んぅ、んんっ、うぁ、や……ッ」

いつの間にか、肌のぶつかり合う音が響くくらいになっていた。もう結合部は溢れるほどの体液で塗れて、ぐちゅぐちゅと粘ついた音も目立つ。
雨上リラは泣きながら首を横に振っている。何を嫌がっているのか、それとも何かを制止したいのかも、曖昧なまま。なんとなく自分の好意が否定されたような気になって、俺は少しだけ悲しくなった。人が人を好きになることなんて、悪いことじゃないはずなのに。
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(>ゴムを着けている)
どれだけ否定したって、俺は先走りさえ中に出していないのだから今この交合の潤滑剤は彼女自身の愛液だけで、彼女だって気持ち良くなっているはずだった。そうじゃないとこんなに長時間繋がり合うなんてできないのだから、彼女だって悪しからず思ってるんじゃないのか。
そんな幻想を、そのときの俺は信じ込んでいた。
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(>ゴムを着けていない)
もう中に何度も出して、溢れ出る俺自身の精液を俺自身が掻き出しているような有様だった。こんなになるくらいまで繋がれるほど、お前のことが好きなんだ。もう性器が痛くなるくらいになったって、お前のことを抱きたいんだ、それくらい好きなんだ。
そんな幻想がきちんと伝わっているはずだと、そのときの俺は信じ込んでいた。
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「ッあ、ぃや、ぁ、や……ッ」
「.雨上さん、出す、出すから、好きだ、.雨上さん──……ッ」

自身を追い込むように彼女の中で肉芯を扱く。いや、いや、と彼女が首を振っているのも気づかないまま、俺は最後の熱を絞り出すように吐き出した。
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(>ゴムを着けている)
薄い下腹部が膨らみそうなほど突き入れても、俺のものは彼女の子宮に届きはしない。
それでも夢想することはやめられなかった。彼女の胎に吐精して、男としての本懐を果たすことを。
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(>ゴムを着けていない)
最奥に突き入れて、彼女の胎に自分の子種を注ぐ。もう、この薄い腹に収まるくらいの小さな子宮ではぱんぱんになってしまっているかもしれない。
そっと触れてみると、うっすら膨らんでいるような、そんな気がした。
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すっかり暗くなった窓の外で、いつの間にか雨が降り出していた。
鞄の中の携帯の親からの怒涛の着信履歴も、今日から梅雨入りしたことも、何もかもを知らないまま、今はただ溶け合ってひとつになっているかのように繋がり合っていた。
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