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 どうしたのですか、お兄ちゃん? なんだか元気がないのです。何かあったならぼくに話してください。仲のいい兄弟はきっと、悩みを打ち明け合うものでしょう? こっそり愚痴を言い合うのも楽しそうですね。苦手な先輩の話、聞いてほしいです。
 ……ふふ、なんてね。そういう親愛みたいなもの、ぼくは知らないから。これからきみとふたりきりの家族として、たくさん体験していきたいです。
 ああ、やっと笑ってくれましたね。ぼくはお兄ちゃんとこうして話せて、とても嬉しいのですよ。

 ……でもね、同じくらい困ったこともあるのです。お兄ちゃんのことをひとつ知ると、ぼくは別の面も見たくなる。ひとつ知る毎にまたひとつ。きみのことを、もっともっと知りたい。受け入れて愛したい。不思議な気持ちなのです。
 ねえ、ぼくはこんなにも欲張りだったのですね。アイドルになって、愛されることを知ったからでしょうか。……ああ、だからぼくは、アイドルになれて本当に幸せです。

 お兄ちゃん。もっとぼくに、お兄ちゃんのことを教えてください。好きな歌、お気に入りの場所、されたら嫌なこと、宝物のこと。……きみを愛しているひとに、きみのことをたくさん教えてあげてください。そうして時々でいいから、“愛してる”って伝えるのです。そのひとは今以上にもっと、きみを好きになりますよ。きっとね。
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