powered by 「notes」

傷跡

掴みたる手首は熱し払い除くことも容易くできる強さの
かさついた指先は撫づ吾が首に残れる汝のつけし傷跡
幾らでも人を殺むるこの指は存外優しく吾に触れたり
「好きものめ」とのたまう汝の双眸に蠱惑の光はぬらりと宿る
パイプを吸うような素振りに唇を求むるのなら、求むるままに。
朝ぼらけ 暖を求めて伸ばしたる手に触るるのはぬくもりばかり
卓の上(え)のグラスは朝日に光りたり誘われし時と同じ水位で
伏せがちの顔に覗きたるオルゴール 琥珀にはつかな憂いは滲む
幾度の朝を憂いて過ごしきかガンベルトにて銃身黙す
オルゴールを見つむる汝の忘れえぬ傷跡に吾もなりたしと思(も)う