2023/10/17 お肉三種

 こんにちは! 僕の名前は勝生勇利。どこにでもいる普通の冒険者だよ!
 現在、すっかりおなじみになった紫紺さんと浅葱さんと一緒に、某所にあるダンジョンに来ております! と言うのも、例によって例の宰相さんからの依頼だよ!

「とある貴族の領地にあるダンジョンが、ここの所全く攻略されていないせいでスタンピードの危険があると報告があった。すまねぇが、ちょっと行って殲滅してくれねぇか?」

 ざっつぅ! と、思わず突っ込んだけど、これくらいシンプルな方がわかりやすいし楽だよね。と言うことで、ついでにヴィクトルが二人にも声をかけたってわけ。

「しかしなんでまた私たちも?」

 殲滅クエストなら、二人で十分でしょ。と、言うのは浅葱さん。うん、まぁ、お二人に声をかけるときは大体調査任務とかで、はい。ゴメイワクヲオカケシマス。いや、お二人の作るマップとか魔物の分布とかめっちゃ詳しくて僕たちも助かってます!

「そこの魔物、シープ系なんだけど、肉が」
「お誘いありがとうございます!」

 ヴィクトルの説明に、にっこりとほほ笑むのは紫紺さん。浅葱さんは首を振った。

「で、どういうダンジョンなの?」
「いわゆるフィールドマップタイプのダンジョンみたいだね。現在判明している階層は五層。最下層である五層目はボスだけ」

 以前、僕とオタベックと攻略したコッコダンジョンみたいなものみたいだ。周辺の食肉産業を支えていたようだけど、例の騒動で領主が死亡。現在後継者が不在でバタバタしていて手を付けていないところ、周辺の住民からやばい気配がするということで冒険者に依頼を出したがすし詰め状態らしくて慌てて撤退。僕たちが派遣されるというわけだ。

「今まで定期的に潜っていた冒険者がいなかったの?」
「いなかったみたいだね。領主の命令で近くの住人が狩りに行っていたらしい。そもそも、湧きも少ないダンジョンで、ダンジョンとしてはハズレに近いそうだ」

 ボスはともかく、一層、二層は一度に数匹レベルしか出現しないそうで、普通の村人でもなんとかなるレベルらしい。確かに帝国なら真っ先に潰されるタイプのダンジョンだけど、それでも安定して肉が手に入るということで周辺では重宝していたらしい。

「それがすし詰めか、どれだけ放置してたんだ」
「だね」

 ちょっとあきれたような二人の意見を聞きつつダンジョンに向かい。さくっと殲滅しました。いやぁ、ダンジョンはドロップだけが残るから、解体の手間がなくていいよね。

「ボスは巨大な牙のある肉食の羊か」
「生態系としてどうなんだろうね」

 羊って草食動物で、むしろ食われる方だと思うけど。まぁ魔獣にそれを言っても始まらないよね。ドロップは肉と、牙と、角と、もこもこの羊毛。以前狩ったエリアルシープと違ってみっしりしているタイプだった。

「羊毛、ちょっと数が欲しいかもしれない」
「それじゃ少し狩ろうか、レアドロップか、レア個体がいるかもしれないし」

 紫紺さんがドロップした羊毛をモフモフしながらそう言うので、しばらくリポップしては首を刈り取る作業をしました。ちなみにレア個体は背中に羽が生えていて、ドロップは手羽先だった。

「手羽先」
「羊のくせに鳥なの?」

 うーん、ダンジョンにあれこれ文句を言っても仕方がないけど。うん。

「とりあえず、何か作ろうか」
「よろしく」
「楽しみだね!」

 ドロップしたばかりの羊のお肉と手羽先で紫紺さんが作ってくれたのは骨付きラムのソテーと、手羽先のスペアリブだった。

「フクースナァ!」
「ニンニクと、スパイスの香りでラムの臭みも気にならないね」
「クミンだな。ん、スペアリブもうまくいった。しかし、普通ににわ、いやコッコの肉と変わらん味だな」
「魔獣って謎だよね~」
「うん」

 骨を握ってぐぃぃぃッと、お肉をワイルドに噛み千切るヴィクトルもかっこいいなぁ。なんて思いながら僕も手羽先スペアリブを。甘辛い味付けでいくつも食べれそう。まぁ、今回レア個体だったから数は少ないけど。今度普通にコッコ肉で作ってもらおう。いや、その、数年前のお肉がまだ、ね。うん。黙っとけばわからない。わからない。ありがとう時間停止。

「それじゃ、そろそろ帰るか」
「だね」

 食事が終わり、ついでにポップした巨大羊の首を跳ね飛ばした後、僕たちは岐路についたのだった。ちなみに王都で羊肉の価格が暴落したけど、僕たちのせいじゃない。はず。

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