一番欲しいものは

アイカツスターズ きらあこss。花園きららちゃんお誕生日記念で書きました。
あこちゃんからのサプライズプレゼントは一体何でしょうか?
とにかくおめでとう!という気持ちをいっぱいいっぱい詰めました!


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あこはきららの手を取って駆けていく。
「ねえあこちゃん?どこ行くの?」
「今からある場所に行って、あなたに渡しますのよ」
「渡すって、なにを?」
「あなた先週言ったでしょう?『誕生日には一番きららが欲しいものちょうだい。あこちゃんならきららがいっちばん欲しいものが分かるでしょ』って」
「そういえば、そう言ったけど……」
「だから、誕生日の今日、それをあなたに渡しますの。急ぎますわよ!まさか音楽番組がこんなにおすなんて思っていませんでしたわ」
「うん。でもそれって今急いで行かなくちゃだめで、そこに行かないともらえないものなんだ?」
「ええ。そうですわね」
あこはいつになく不敵に笑う。
一体それは何なんだろう。
確かにきららは自分で言った。一番欲しいものをちょうだいと。
しかしその『一番欲しいもの』について、きらら自身これという正解を設定していたわけではない。
あこから、つまり一番大好きな人から誕生日に何かもらう、という行為自体が素敵なことだと思うから。
だから自分の誕生日に素敵な体験がしてみたいな、なんてただそれだけで、何気なくそう口にしたのだった。
正直あこからもらったものであれば、何をもらってもなんだって嬉しいに決まっている。
だから、これからあこがきららに渡そうとしてくれているそれについては、今も全く想像がつかない。
夕暮れの街を、ただただあこに手を引かれるままに駆けていく。
走っているから自然と息は上がってきているけれど、それだけではなくて。
一体自分のために何を準備してくれたのか、それを考えると、わくわくが込み上げてきて心拍数が上がっていった。

辿り着いたのは、どこか大きな建物の裏口だった。その扉の前であこは立ち止まってきららに向き直る。
「あなたが一番欲しいもの、実はものすごく悩んだんですの」
「そうなんだ?」
「だっていつもあれが欲しいこれが欲しいってよく言っていますけれど、一番だと言われたらどれなのか分からなくなってしまいますもの。でも」
「でも?」
「わかりましたの、あなたが嬉しいことは、わたくしも嬉しくなることなのではないかって。あなたが、花園きららが一番欲しいのは、わたくし……」
「えっ」
そこまで聞いて、思わずドキッとしてしまう。それを誤魔化すように、いつものように茶化してみた。
「やだぁあこちゃんのえっち~。確かにきららはあこちゃんのことが欲しいけど~。こんなお外で急に」
「なっ、何を勘違いしていますの!?違いますわよっ!シャーッ!」
「え~?照れなくてもいいのにぃ」
「だから!違いますわっ!わたくしまだ最後まで言ってませんのよ。もう一度言いますわ。あなたが一番欲しいのは」
「きららが、一番欲しいものは……?」
「わたくしとのステージ、ではなくて?」

あこは目の前の扉を開けた。
それは小さな音楽ホールの裏口の扉だった。そこから続く薄暗い通路を、手を繋いで進んでいくと、アイカツシステムのフィッテイングルームがあった。
きららはあこから手渡されたスイートドリームスコーデを、そしてあこもそれと色違いの、先日彼女自身も星のツバサを手に入れたばかりのお揃いのドレスをそれぞれ身に纏い、アイカツシステムの中に身を投じる。
ステージに降り立つと、クラッカーの音が弾けた。
「せーのっ、きららちゃん、お誕生日おめでとう~!!!」
客席にいたファン全員がきららに向かって声を揃えた。見ればステージの上の方には『花園きららお誕生日スペシャルライブ』というプレートが掛かっている。
そしてピンクと水色の2色のペンライトが一斉に点灯し会場が照らされたかと思うと、どこからか聞き覚えのあるメロディーが聞こえてきた。ハッピーバースデーの歌だ。会場全員がそれを合唱する。
「うわぁ、すごいすごい……!」
きららは思わずそう言葉を漏らす。まさか、こんなものが準備されているなんて思わなかった。
「ねえあこちゃん、これ、あこちゃんが全部準備してくれたの?」
「ええ、そうですわ。急遽会場をおさえたり、セットを準備したり、あなたにバレないようにフワフワドリームファンクラブ会員専用メールでこっそりライブ告知をしたり、本当に骨が折れましたもの」
「あこちゃん、最近四ツ星の学園内のお仕事とか、映画のこととかものすごく忙しいって言ってたのに…」
「そうですわよ!まったく忙しくて死にそうでしたわ。それで?あなたの欲しいもの、これでちゃんと合っていましたの?」
「うん、うん!大正解っ!あこちゃん、大好き~っ!」
嬉しくて嬉しくて、思わずあこにぎゅっと抱き着いた。
「ちょっときらら!やめてくださいなこんなところで!ほら、みんな待ってますわよ。ステージ、始めますわよ!」
「うん!」

もちろん好きなお菓子や可愛いお洋服といった、『物』をもらうことだって嬉しいだろう。
あこと一日中一緒に遊びにいくというような、『プライベートな時間』をもらうことだってすごく嬉しいに違いない。
でも、やはり自分は、花園きららは、アイドルなのだ。
こうしてステージに立って、ファンのために最高のパフォーマンスを届けること、あこと一緒に歌うこと。
それはこの一瞬しか出来ないことで、だからこそこの世界中の何よりもキラキラした宝物だ。
傍らのあこと目が合う。
客席のみんなのキラキラした笑顔が見える。
そんなかけがえのないバースデープレゼントに、ありったけの感謝をこめて。
きららは歌う。
『ずっとだいすきだから』と。

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