鴉鶴と狂招が初めて明確に会話した時の話

刃というものは、一律、斬れるものであるわけで、ものの良し悪しは包丁やハサミなら分かりやすかろう。だが、斬れなければ話が始まらないもの、つまり “武器” となると、斬れ味でそんなにも戦闘力に差が出るものだろうか。そう思っていた。

(あ、……行ける!)

しかし、いざ、狩人という立場になってから、少し良いものを買えるようになってみると、考えはすぐに改まった。己の体力やスピードや筋力が物を言うのは前提としても、持てる力を使えるかどうかが異なってくるのだ。斬れ味の良し悪しが直接の火力に響いているのではなく、斬れるのなら力で押す必要が少なくなり、結果として速さを活かすことができる――よい武器は、身のこなしを変えるのだ。

「斬れ味の良さ、分かりましたか?」

仕留めた獲物からいただいた素材を持って行くと、鍛冶屋は笑って問うてきた。いたずらに下から見上げてくる、爽やかなしたり顔のような笑顔が眩しいと思った。彼は最初から結果を知っていたのだ。自分の腕と作品に誇りを持っているのだ。

「もちろん、自信を持ってお届けしております。ですが、それ以上に、あなたなら分かるだろうと確信していました。きっと、よい狩人だと」

真っ向から、なんの疑いもない眼差しで向けられる真っ直ぐな称賛は、おべんちゃらなどではないことは分かってしまう。元よりこの鍛冶屋の男は――狂招《きょうしょう》といったか――不必要な世辞や嘘を厭うほうであるように思う。しかし、その視線と尊重と讃美とを浴びては、なんともいたたまれなくなって、顔を背けてしまう。

「照れなくてもよいのに」

バレている。見透かされている。この男には敵わないのかもしれない――それを初めて思った瞬間だった。

「……また、頼む」

報酬を受け取ると、それだけやっと絞り出し、踵を返した。

「鴉鶴《あかく》どの」

呼ばれて足を止めるが、何となく振り向くことが出来ない。

「……鴉鶴《あかく》、で、いい」

またしても必死で絞り出して伝えると、振り向かなくても笑顔だと分かる、明るいが静かな落ち着きのある声が返ってきた。

「わかりました。鴉鶴《あかく》、また、ぜひ」

それからの、その日のことは、あまり覚えていない。ただ、家に帰る途中ですれ違った、同じ狩人のモミジには「釜茹で!おフロ?」と言われたが……立ち止まることも答えることも出来なかったし、同じく狩人のゲンジに捕まらなくて良かった、とは思った。

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