2024/04/01 08.SAKURAMBO

 どこかみずみずしさを感じる香りに、甘酸っぱさが混じる。春の味だなぁ。
 とまぁ、ログインしてすぐに一杯の紅茶を楽しんだ後、私がでかけたのはとある山里。ここに薬士ギルドから出ていた収集クエストの植物があるはずなのだ。

「何を探しておるのじゃ」

 途中、山の中で人影も見えないということで白を召喚。あちこち春の山菜や木の実を取りながらの寄り道をしながら目的のものを探す。

「|金雀枝《エニシダ》という植物だ。この季節だと黄色い花が咲いているはず」
「ほう、ほうき草か」

 白が感心したように言う。白の言葉通り、昔のヨーロッパでは実際にその枝でホウキを作っていたし、魔女のホウキと言えばこれだとか。
 この世界でもホウキの材料としても使われるが、【錬金調合】、【調合】の素材にもなる。リアルでは専門知識が必要な強い薬とのことなんで観賞用にしておくのがいいだろうな。

「む、甘い匂いがするのじゃ」
「そっちに行ってみるか」

 くんっと、鼻を鳴らした白の言葉にそちらへと足を向ける。エニシダの花は甘い香りがするそうだしな。もちろん途中で遭遇する敵MOBも倒していく。白が飛び出し、私がトドメ。相変わらず好戦的なもふもふだ。
 そういえば、場所は違えどレーノとあったのもこんな森の中だったなぁ。……少し積極的に私からも攻撃を加える。決して囮にしているわけではありませんよ。

「むっ」
「いや、また誤解されても困るので」
「…………あぁ」

 先に攻撃されてなんじゃ? と振り返った白にごにょりと言い訳にもならない言葉を返す。あっさりと納得されるのも微妙なんですよ。
 そんなわけで歩くほど数分。さほど離れていない場所に黄色い花が現れた。金雀枝という名前通りに、鳥の尾羽のような黄色い花が枝にたくさん咲いていた。

「これかの?」
「あぁ、間違いない」

 枝を【採取】でいいのか? 【伐採】は持っておらんのですよ。ホウキの払う部分に使われるだけあって、絵だと言っても細いから行けるか? いやこれは普通の木みたいだから、普通に鉈で切るか。【木々の守り】のおかげでいい枝が手に入るかもしれん。ついでに『庭』にも植えよう。
 スコップを取り出して根っこごと採取。任務完了と町に戻る。

「エニシダ?」
「あぁ。ペテロは何かに使うか?」
「たしか強心剤の材料になるから、うまくやると心臓を止める毒になるかな」

 うむ、毒と薬は紙一重と言いますが。効いといてなんだが積極的に毒を融通するのもなんだな? いやどっちにしろリデルとA.L.I.C.E.の間で取引されそうなんだが。とりあえず私の庭にあることだけを伝えておきました。

powered by 小説執筆ツール「notes」