硝子のコップ
魔法は心で使うものって何度も言われていて、心がダメになったら魔法を使えなくなる。
心はきっと硝子のコップみたいなもので、入れるもので色も変わるし、硬いもの尖ったものを入れると中は傷付く。
そのままにしておくと、いつか突然割れる。
傷つけるものはできるだけ早く取り出して、それから硝子のコップに付いた傷を直して、次からは気を付けて使う。
壊れるギリギリまで傷ついた硝子のコップは、きっと一度ドロドロに溶かしてからもう一度作り直さなくちゃいけない。
それは他の誰でもない自分しか出来ないことで、誰も手を出せない。(出来ることは見守るくらい)
うまく作れなかったら、そのままドロドロになるか、壊れるか。
ファウストがどうしても1人になりたかったってのは、きっとボロボロの硝子のコップをもう一度作り直さないといけなかったからで。
レノの方はファウストの硝子のコップが壊れるギリギリなのが分かっているから、とにかく側で壊れないように見ていないと怖かった。
でも、壊れるギリギリのコップはどれだけ丁寧に扱っていてもちょっとした衝撃で簡単に壊れる。
そうなる前に、ファウストは1人で硝子のコップを作り直すことに決めた。
硝子のコップはきっと一人一人色が違うし、厚さも細工も違う。熱に強かったり頑丈だったり。きれいだけど壊れやすかったり。落としても割れなかったり、少しくらいの傷なら何ともなかったり。
いくつかのカップが重なりあって違う色を作り出したり。
長く使うために、少しずつ長持ちするような工夫をそれぞれしていく。緩衝材で包んだり、傷つかないようなコーティングをしたり、落とさないようにしたり。
きっと長く生きている魔法使いは、その方法をいくつも知っている。
多分作り直したファウストの硝子のコップは前より頑丈になってるし、中に入れるものにも慎重になってる。
レノは多分、自分の硝子のコップの傷に気づいていない気がする。
頑丈な硝子のコップだったから幸いなことに今まで問題なくこれた。それが今は少し危うくなってる。
そこに傷がある。平気だからと蓄積されまくった傷がある。このままだと壊れるぞ、ってファウストは教えてあげて欲しい。君の側にいるから、作り直すように言って欲しい。
ピカピカの作り直した硝子のコップが出来たら、お互いにオススメのお酒でも用意して、2人のコップをカツーンと合わせて仲良く飲んで欲しい。
重なった色も前と変わるかもしれないけど、相手の硝子のコップを大事に抱えて欲しい。
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