日柱様のかわいい嫉妬



リクエスト炭善+宇 現代鬼狩り鳴柱

リクエスト内容
現代鬼狩り柱な炭善で、仲良く戯れ合う宇髄さんと善逸に炭治郎が嫉妬するお話


Versatileと同じ世界線です。








「ずるい!」
 その一言に、善逸は鼻白み、ため息を吐いた。恋人が珍しく憤っていると思ったら、まさかの子供の癇癪みたいなものだったからだ。
「ずるいも何もないだろ」
 仕事だったのだから、そんな風に怒られる筋合いはない。善逸とてしたかった仕事というわけでもないのだから。相手だって、そんなことは分かっているはずだ。
 だが、それでも恋人、竈門炭治郎の憤慨はおさまらない。
「こんな写真、俺だって善逸と撮ってないのに!」
 バン、と彼が叩いて見せる紙面は、数週間前に善逸が「仕事で」撮ったポスターだ。
 我妻善逸は、鬼殺隊の鳴柱という最上位階級を頂く幹部であると同時に、組織の「顔」として広報役を仰せつかっている。
 この広報役というのは、いわゆる客寄せパンダに近い。広告やグッズ販売による収入と、イメージアップによる鬼殺隊志望者及び支援者の確保を目的とし、イベントに参加したり、鬼の危険性を訴えたり、時にはCMや配信に出たりと言った活動をして、間接的に鬼殺隊へと貢献する役目だ。
 そしてその役目につくからには、「常に健康であること」が求められる。もし広報役が鬼殺で大けがを負ったり殉職したりすれば、「絶対守護者」のイメージダウンにつながりかねないのだから。よって、絶対に殉職しないであろう強者である柱が、自然と歴代広報隊士についてきたのだった。
 その柱が全員、なぜか画面映えするほど見目麗しいのは、単なる偶然である。
 そして善逸と同じく、炭治郎もまた柱であり、広報隊士だ。よって彼の仕事がどういうものかも、よくよく理解しているはずである。
 だがそれでも、炭治郎にとってその紙面は、我慢がならなかったらしい。
「こんな、こんな……色気駄々洩れな!!」
 炭治郎が震える握りこぶしと共に漏らした言葉に、善逸はあきれ果てた。
 確かに、いつもとは少し違った撮影だったのは事実だ。
 今回の撮影テーマは「大人の魅力」。
 かつて騒がしく喧しく泣き虫な少年だった善逸が、いかに成長したかというのをテーマに撮りたいというのがカメラマンのたっての希望だった。
 そこで、大人の魅力の代名詞とも言うべき音柱の宇髄天元と二人セットで、鬼殺隊の上級制服であるスーツ姿にて写真撮影を行った。
 ポスターの紙面には、ひと際大きな三人掛け程度のソファに、尊大そうに足を組み座る宇髄天元が、此方を不敵な笑みで見据えている。そしてその横に寝転がった善逸が、金の長い髪を流れるに任せ、上半身をひねって気だるげにカメラの方を向いていた。善逸の頭は、組んだ宇髄の足の上に載せられているようにも、寄りかかっているようにも見える。そして宇髄の腕も、ソファの低めの背もたれを経由し、善逸の肩へを抱いているようにも見えるのだ。
 接触しているようにも、していないようにも見える絶妙な塩梅。
 それでいて確かにまごうことなき「大人の魅力あふれる男二人」の写真であった。
「宇髄さんとこんな近くで、しかもなんだかちょっと密接すぎるし! 何か普段の善逸と違ってすごく色っぽいし!」
「しょーがねえだろ、そう言うコンセプトなんだからさあ」
 善逸は両耳に指を突っ込みつつ、炭治郎を宥めようとする。
「じゃあこっちはどういうことだ!!」
 しかし炭治郎はポスターをくるりと裏返した。そこには、さき程と同じ場所でとった写真構図でありながら、楽しそうに笑う宇髄が、同じく笑っている善逸の頭をヘッドロックしているという写真だ。いかにもじゃれ合っているというさまは、一部の人をのぞいて微笑ましい一枚として目に映るだろう。
 その一部の人が、吠える。
「オフショットだと書いてあるが!? なんでこんなに接触しているんだ!」
「いや、普通にあの輩にヘッドロックかけられている超苦しい光景じゃん! カメラの前だったからなんとか笑顔にしてるけど、ほんと辛かったんだからな!? あの人マジ手加減しても力強いしさあ!」
 文句をわめきたてる善逸の言い分に、だが炭治郎は納得しない。
 ポスターを前に立ち、肩と握りこぶしを震わせ、しかもちょっと涙目になりながら叫ぶ。
「~~~~ずるい! 俺も、善逸と仕事がしたい! この前の任務だって、善逸は宇髄さんと一緒だったし! 俺たちはバラバラの任務ばかりだし! 前は広報の仕事だって俺と善逸は二人セットだったのに!」
 こうなってしまうと、もう駄目だ。善逸は言うに任せ、黙ったまま目を閉じる。頭に浮かぶのは、反論のアレコレだが、言ったところで今の炭治郎では納得できないだろう。
 宇髄と善逸の任務が同じになることが多いのは、二人の性質が似通っているからだ。耳が良く、足が速い。速攻でケリを付けなければならない時や、広範囲で索敵をしなければならない時、逃げ足が速い相手など、とにかく向いている任務が同じであり、だからこそ戦力が同時に投入される。
 加えて、善逸は宇髄から「裏の広報」の役回りも引継ぎを任されている。政府だったり、警察や防衛軍との交渉や折衝などを担っているのだ。
 切実な話、今の柱で指揮能力が高いものはそこそこいるが、「腹芸ができる」人員はとても少ない。脅しめいた話術で話を付けることがイコール交渉だと思っている人さえいる始末。そうではなく、飴と鞭、表向きと裏の本音を使い分けられるのは、今のところ音柱の宇髄と蟲柱の胡蝶、そして鳴柱の善逸くらいのものなのだ。
 そして交渉ごとに向いていない柱一位が、炭治郎である。表側のリーダーシップやムードメーカーとして百点満点である彼は、反面嘘が全くつけない上に、クソが着くほどの真面目なため、善逸が派遣されるような「交渉事」にはこれっぽっちも向いていないのだ。
 以前は、「下級の少年隊士」としての広報を求められていたので、炭治郎と善逸は二人セットで運用されていた。表への露出も多く、仲良くじゃれ合っている姿を見せるのが仕事だったのだ。
 それが一転、広報隊士としての露出を無一郎たちに引き継いだ今は、二人の仕事はバラバラばかりになってしまったのである。
 今まで一緒にいる時間が長かったからこそ、炭治郎は今の会う時間が少なくなった状況に耐えきれない。
 そして誰にも伝えていないことだが、炭治郎は宇髄に対して、若干のコンプレックスがあった。大人としての余裕、息抜きの上手さ、他者とのバランス能力。何より、善逸の甘やかし方において。
 宇髄は、正面突破しかない炭治郎では思いつかない方法で、善逸を言葉巧みに休ませることができるのだ。善逸が、炭治郎の言葉はきかずとも、宇髄の言葉はきいた、なんてこともあった。
 そこへ、宇髄と善逸のあのポスターである。炭治郎の「長男の我慢袋」といえど、もはや限界だったのだ。
「善逸は、宇髄さんの方がお似合いだとかSNSで言われてたし! 俺の善逸なのに!」
 いつもの朗らかで穏やかな日柱様は何処にいったのやら。随分と可愛らしく縄張りを主張する炭治郎に、ついに善逸は吹き出してしまう。
「もー、おまえはほんと、俺のことが大好きだなあ」
「大好きだ!」
「んっふふ、ありがと。俺もだよ」
 善逸は笑って、そして炭治郎の傍へと歩み寄る。
「なぁ炭治郎、確かに宇髄さんと俺は、まぁ仲悪くはないよ。仕事でもやっぱあの人頼れるし、これからもあの人と仕事が入ると思う。でもさ」
 言って、善逸は周囲を見渡す。大きめのキッチン、ぬいぐるみの並んだソファ、窓辺の観葉植物。転がったテレビゲームと、部屋の隅には一緒に漬けた梅酒の瓶。炭治郎と善逸、二人で作り上げ、長年住んでいる、愛しい空間を。
「こうやって一緒に住んで、一つのベッドで寝て、おはようもおやすみも言いたい相手は、お前だけなんだよ。俺のプライベートは、全部お前でできてる。愛しい伴侶は、お前だけ。それじゃあダメ?」
 とたん、炭治郎は怒れる肩を下ろし、珍しくも小さな声で答えた。
「……ダメじゃない」
「ありがと。それで、炭治郎。仕事を終えて家に帰ってきた、せっかく明日の休みもいっしょにすごせる恋人に、しなきゃいけないことは何?」
 言いながら、善逸は炭治郎へ向けて両手を広げる。
 炭治郎は深く息を吸って、吐いて。呼吸を落ち着けた後、真っすぐ前を向いた。そうして善逸の両手の中に入り込みぎゅうと抱きしめ、肩口に顔をうずめる。
「おかえり、善逸。お仕事お疲れ様。愛してるよ」
「ただいま、炭治郎。俺も愛してる」
 善逸は愛しい恋人の頭を撫でまわしながら、自分の上役に当たる宇髄へ「そろそろ炭治郎&善逸推しの方々にも飴をあげませんか?」と訴えようと心に誓った。
 なにせ善逸だって、この前水柱とセットで撮影していた炭治郎の楽しそうな姿に、ジェラシーを抱かなかったと言えば、嘘になるので。




 

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