よく似た双子の話
シエルレーニェ(FF14のすがた)と暁の皆さんの話。
モードゥナ(石の家)到着時点。
視点はアルフィノ。
……冷静に考えると、この時アリゼーまだ合流してなかったなと気付いたのであった。
まあ、バハムートは終えてしっかり面識はあるという事でひとつ。
そもそもオープニングで出会ってるし。
・シエルレーニェ(FF14のすがた)
ヴィナ・ヴィエラ。原産国ダルマスカ(確か)
長命種の為年齢不詳。見た目は20代くらい。種族的に年齢は外見にほぼ出ない。
殆ど女性のみの種族だがシエルが男と判明した為に里を出る予定だったが、引き離されるのを嫌がった双子が手に手を取って家出した。以来、流れの冒険者として生きている。出奔したのは帝国侵略前。つまり年齢って(以下省略
■
『暁の血盟』の本部を、ウルダハの砂の家から、モードゥナのレブナンツトールへと移転した。
長く根を張った場所ではあったが、多くの蛮神の討滅を成し遂げ、帝国の侵略をも退けた英雄を有する暁を、放っておかない権力者たちが多かったが故だ。
あくまでも暁の血盟は、エオルゼアの救済を使命とする組織。決して、どこか特定の国に肩入れするものではなく、無論政治的な利用をされるなど御免被る。
それは勿論、活動費の名目で寄付を受け入れる事はあるが、それを理由に名を便利に使われてはたまったものではない。
それが暁と言う組織や、祖父の遺志を守る事になる。
無論、この度の件で多大な貢献をしてくれた、二人の英雄を守る事にも。
レブナンツトールの冒険者組織と、そこの拠点とする冒険者達や開拓団の人々は、暁の血盟を快く迎え入れてくれた。
近くに帝国の拠点へ潜入、人質の奪還などで協力しあった縁もあっての事だ。その際に、冒険者として優秀な働きを見せた事も信頼に繋がったのだろう。
高い統率力を持った指導者を失ったことで、近くの帝国拠点は今は静かだという事もあって、ささやかながら歓迎の宴まで催された。
目と鼻の先の帝国軍に睨みを聞かせ続けてくれたこの場所は、長く緊張していたのだろう。
一時でも、人々が笑い合い楽しみを分かち合う時間を過ごせる。皆の努力で手にしたこの瞬間は、尊いものだ。
私は、祖父の願いを受け継げているだろうか。
楽し気な喧騒に耳を傾けながら、ふと大好きだった笑顔が思い浮かんだ。
「よっしゃ、いっぱい歓迎してくれたお礼に、こっちからも芸の一つもお披露目しよっか! シエルー!」
「お、久々に演るか? いいぜ」
宴もたけなわとなった頃、あちこちから声を掛けられ楽しそうに話をしていた双子は立ち上がり、準備してくると酒場へ……いやおそらく、既に荷物を運びこんである奥の石の家へと入って行った。
エオルゼアではあまり見ないヴィエラ族の二人がエオルゼアの英雄と呼ばれる事に、訳を知らない人は首をかしげる事がある。最近では随分顔も売れ、それを目印に探されることもあるようだが。
元は海を渡って流れてきた冒険者だ。きっと、生まれはダルマスカの方ではないだろうか?
若く見えるが、そこは軽く200年は生きると聞くヴィエラ族。老いがあまり表面化しないと聞くし、帝国への嫌悪はあれど憎悪を感じないあたり、帝国の支配が及ぶ前に出奔したのかもしれない。ということは……
「おっ待たせー!」
「おおおおおおぉ!!」
ばぁん、と勢いよく開け放たれた扉から現れたのは、妹であるレーニェの方だった。いや、そのすぐ後ろに兄であるシエルも居る。
その声に皆が一斉に目を向け、その姿に集まる人の多くを占める男性からの歓声が上がった。
普段から軽装を好む人だが、だとしてもあまりにもな薄着。煽情的と言っても良い。身体の線がハッキリと分かる、どころか水着かと見まごうばかりの露出。
背が高く均整の整った、女性らしいプロポーションを曝け出した姿に、男性が沸き立ったのは当然なのだろう。……正直、私には目の毒で、そっと視線をそらしてしまう。
「レーニェ、貴女に慎みというものは無いのかしら」
「え、むしろ飾り多めの布多めで慎み深いと思ってるんだけど」
「……そうだったわね。貴女、出会った時はもっと過激だったわ」
「あれ、フツーに俺らの故郷の衣装なんだけどなあ」
ヤ・シュトラからの苦言は、あっさりと流された。
二人は遠い場所の出身なのだ。当然、常識も異なる。聞いたところによれば、ヴィエラ族は肌を露出した民族衣装を着ることが多いという。それこそ、エオルゼアでは水着にしか見えないような。
故に、ああいう格好をすることに抵抗がないのだろう。
あと、どうしても女性の姿に目が行ってしまっているが、シエルの方も普段はきっちり着込んだローブを着ているが、今は胸部や腹部を大きく露出するような衣装になっている。
鮮やかな色の薄い布、動く度にしゃらりと鳴る飾り。その様相は、明らかに。
「二人は、踊り子だったの?」
「踊り子でもある、って感じね」
「こっち来てからは荒事の仕事が多かったし、そっちのが実入りが良いから久々だけどな」
ミンフィリアが尋ねると、二人は頷いてそう答える。
確かに、二人が踊り子としての興行を行っているというのは聞いたことが無い。命の危険がある仕事の見返りが大きいのも当たり前の事で、良くも悪くも仕事が豊富だったために、そうして日銭を稼ぐ必要がなかったのだろう。
エーテライトの周囲を大きく開け、シエルは取り出した何かの装置に魔力を通す。
それは音楽を流すための装置だったようで、音が鳴り始めたのを確認すると、目についたのだろうサンクレッドに投げ渡した。
危なげなく受け取ったのを見届けると、二人は少しの距離を置いて、向かい合う。
その手にあるのは、大きな輪の形の道具。チャクラム、というのが近いか?
流れ出す音楽に合わせて、空色の髪をした二人が踊り出す。
長い手足を流れるように動かし、手にしたチャクラムを時に美しく音を奏でるように振り、時に相手に向かって隆線を描いて投げ。エーテライトの光を受けて輝くそれは、間違いなく相方の手に収まる。
双子である事を生かすような、一糸乱れぬ動き。まるで大きな鏡を対しているようだが、それはありえない。よく似た二人ではあれど、大人の二人は確実に男女の差があるのだから。
そうであったとしても、ぴたりと揃う二人の舞は単なる技術では説明出来ないほどで、まるで同一人物がそこに居るような錯覚さえ起こす。
「見た事のない踊りだけど、すごい綺麗だね!」
「ああ。投擲具を駆使した舞……確か、サベネア発祥の踊りだったと思うぞ」
「私も、ラミンから聞いたことがあるわ。あの二人、色んな所を旅してきたと言っていたから……行ったことがあるのかもしれないわね」
素直なイダは音楽に合わせて手拍子をしながら楽しんでいて、情報に詳しいサンクレッドはその踊りの正体を教えてくれる。元歌姫に育てられたミンフィリアも、聞けば知っていると頷いた。
海を渡ってきた二人の来歴は、サンクレッドやタタルの情報網を持ってしても、すべては明らかになっていない。別に隠してはいないようで、聞けば気まぐれに話してはくれるそうだが。
我々よりも長い時を生きる二人の旅路からすれば、このエオルゼアで英雄と呼ばれる今も、まだほんの一時の時間なのだろうか。
「ねえ、アルフィノ様とアリゼー様も、あんな風にぴったり揃って踊れるのかな?!」
「え?! いや、私達は……どうだろうね」
「イダ、確かに似た姿の双子同士ではあるけど、種族も年齢も違うし、ああいうのは先ずたゆまぬ鍛錬ってのが必要なんだ。それを双子だからって誰でも出来るなんて思うもんじゃないぞ!」
「えー。やってみなきゃわかんないじゃん! 双子二組で踊ったら絶対綺麗だと思うんだけどなあ」
唐突に思いついたらしいイダの発言をいつものようにパパリモが咎めたが、私は改めて二人の舞に目をやる。
先ほどは衣装の過激さについ目をそらしてしまったが、こうして見るとそんな事は些末だと思うほど、その姿は美しい。きっと、彼女の姿を性的な観点で見ている男性は、もう居ない。
あれは、ウルダハの多くの踊り子がしているような、男性の目を引き、その欲を煽るようなものではないからなのだろう。己の肉体を洗練し、技術を磨き上げた末の芸術品。そういうものだ。
同じ双子だからと言って、私とアリゼーに出来るかと言われれば、きっとどんなに鍛錬をしても無理じゃないだろうか、と思う。
確かに、私達と彼らは、似たところがある。
よく似た髪と瞳、容姿をした、兄と妹の双子。
……と言っても、共通項はそこだけ。
未だ成長途上の身体の私達は似た服装をしていると間違われる事があるが、既に大人であるシエル達は性別を間違われる事はなく、故にどちらかと間違われる事もない。
性格も、私とアリゼーは似たところもあるとは思うが、基本的に正反対だと言われる。対してシエル達は、これも男女の感覚差はあるが、基本的に同じように思う。明るく能天気で楽観的、しかし人を見る観察眼は確かで、人懐こい笑顔の下では案外、狡猾と言える程に思考を巡らせている。
私達よりも、シエルとレーニェの方が、互いの存在が近い。
だからこその、あの舞ではないか。
「それじゃあ、次はオオトリ! 俺かレーニェが目隠しをして踊るぜ!」
「どっちが目隠しするか選んでー! どっちがいいー? ……ん、シエルが多いかな?」
「おっけー。じゃあそこのアンタ、この布確認してくれ。なんのタネも仕掛けもない、ただの布だよな?」
きっと、それも二人だけの興行でよくある出し物なのだろう。
観客にどちらかを選んでもらい、手近な人に目隠しになんの仕掛けもされていない事を確認して貰う。まるで、手品の導入のようだ。
そうして改めて二人が適切な距離をとって向かい合い、今度はシエルだけが白く厚い布でしっかりと目隠しをする。
ただの踊りであっても、目隠しをして平衡感覚を取りづらくなる、というのは難しい事だ。
それに加え、サベネア発祥だという二人の踊りは、投擲具を扱う。その中で、互いの身体をスレスレに通す事も、交換するように投げ合う事だってある。
熟練の技術があってこそ、そして息の合った双子だからこそ出来る技、という事だ。
「ええー、あんな事出来るんだあ! あの投擲具、刃があるよね?!」
「ホントでっす! これは……いずれ、本格的に巡業を計画させて貰いたいでっす!」
イダはますます興奮した様子で、タタルも目をきらきらさせて二人を見つめている。
先ほどまでと、踊りの精度が変わらない。それだけでも、すごい事だった。
イダの言う通り、武器にもなるだろう投擲具には、持ち手部分と内側には保護があるが、それ以外の部分には刃がついているだろう煌めきが見て取れる。
ほんのわずかに足さばきが、腕の振りが、テンポが、立ち位置が、ズレただけでも成立しない。大怪我に繋がる恐れがある。
無論、視界に問題のないレーニェからの多少のフォローがあるのだろうが、それを全く感じさせない。二人の踊りに淀みも迷いも、気遣いすら無い。
ほんの僅かに捻りを入れた隙間に、投擲された鋭い刃が通っていく。かと思えば、すっと伸ばされた腕には寸分の狂いもなく投擲具の持ち手が来る。
居合わせた誰も、勿論私達も、一時も目を離せないとばかりに釘付けにされた。
……だから、誰も気づかなかった。
宴の最中に、深酒をして眠り込んだ男性が居た事。その腕から零れ落ちた酒瓶が、ころころと……レーニェの足元に転がって行った事すらも。
「おわっ?!」
「えっ?! レーニェ?!」
「! シエル、危ない!!」
踏み込んだ足の下に、丸い酒瓶など踏めば、当然体勢を崩す。驚いたイダの声と、サンクレッドからの警告の声は同時だった。
レーニェは大丈夫だ。右足を取られたが、くるりと回転するように飛び、すとんと着地をした。踊り子らしい身の軽さだ。
だが、悪い事にそれは、シエルに向かって投擲具を投げた瞬間で。
シエルの方はと言えば、それを知らずに背を向けるタイミングだった。視界が塞がれていなかったとしても、分からなかっただろう。
丁度、肩口辺りに鋭い刃のついた投擲具が投げられている。不意の転倒の影響は間違いなくある。寸分もたがわず動いていたからこそ成立していたのであれば、それは致命的だ。
誰もが、数秒先の流血沙汰を思い描いた。
けれど。
目隠しをしたままのシエルは、軽い足取りで一歩、横にステップを踏む。
それだけで投擲具は彼の身体は直撃のコースから外れ。当然のように伸ばされた手が、すぐ横を通り過ぎようとした投擲具の、持ち手部分をしっかりと掴んだ。
「レーニェ、どうした?!」
もしや、やはり目隠しには仕掛けがあって、視界は通常通りだったのでは?
そんな疑問を抱く中、シエルは慌てた様子で目隠しをぐいっと上にあげる。きつく縛っていた様子だったから、ほどくのが手間だったのだろう。
時にシスコンなどと揶揄されるほど妹第一の彼だ。足元に酒瓶が転がってきていると、見えていたなら気付いて声を出しただろうし、転ぶのだって看過しなかったに違いない。
慌てて駆け寄る様子からも、本当に周囲を把握できていなかったのだとわかる。
「いや、障害物あったの気が付かなくて転びかけた。ごめんごめん」
「そっか。なんか襲撃でもされたのかと思ってビビった」
「悪い、ここで寝こけてるバカが原因だ! 後でぶん殴っとく!」
「いやいや、説教くらいにしてあげて?」
「いーっていーって、意図的じゃないなら怒ってないから」
へらり、とよく似た様子で二人は笑う。あわや大惨事の事故につながる所だったというのに。
せっかくの宴会なのだから、楽しいままで終わった方が良いと思ってるのだろう。
何にせよ、すごいものを見たと周囲は大歓声と拍手で埋まる。二人は揃って得意げな顔で、綺麗に周囲の人達へとお辞儀をした。
ついでにいくらかチップを渡されたようで、歓迎のお礼なんだけどなーと言いつつも、渡されたものはきっちり懐に入れていたあたり、なんというかちゃっかりしているものだ。
「———結局さ。あれって、シエルがすごいの? レーニェがすごいの?」
翌日。
石の家で紅茶を飲んでいたイダが、ふと同じテーブルでコーヒーを飲んでいた二人に話しかけた。
思いつきで話すイダの言葉は、時折主語が消える。
ただ、昨日の今日だ。何の事なのかは居合わせた皆が分かっていて……、けれど、当の本人達は、きょとんとした顔で髪と長い耳を揺らして首を傾げた。
「なんについての話だ?」
「ほら、昨晩の! シエルってば見えてない筈なのに、転びかけのレーニェから投げられた輪っかを避けたどころか、キャッチしたじゃない! あれどうなってたの? 見えてなかったよね?」
もしかしたらとは皆思っていたようだが、その後の様子からして、本当にシエルの視界は塞がれていた。
であれば、レーニェがギリギリで回避が予定されていた場所に投げたのか?
もしくは、周囲の気配や投擲具の風を切る音などをキャッチして、シエルが自主的に避けたのか?
つまり、そういう事を聞きたいのだと、二人は察したのか、『あー』と思い当たったように同時に声を上げた。
「いや、レーニェに何かあったみたいだから、切り上げてキャッチしただけなんだが」
「え、だって見えてなかったんでしょ? 音で分かったの? ヴィエラって、そんなに耳が良いんだ?」
「そういう訳じゃないが……、ここに来るからいつも通り受け止めただけで」
「普段ならいざ知らず、トチったものを見えない状態でどうここに来る、なんてわかるんだ?」
「あたしトチってないもん。あたしがトチったんじゃないもん」
「ああ、悪い」
サンクレッドも参加して、なんだったのだと問うが、二人の回答が的を射ない。
二人の方も、いまいち何を聞かれているのかがピンと来ないようで。結果話している全員が首をかしげてしまう。
「いやだからさ、こう、なんだ。……普通に歩いてるとするじゃんか」
「うん」
「で、右足が何かに躓いて、転びかけたとして。反射的に、左足が前に出て、踏ん張るだろ?」
「そうだな」
「そういう事」
「どういうコト??」
「……! つまり、君たちはお互いの身体を、自分の身体の延長として認識しているのかい?」
「あ、あーあーそうそう、そういう事」
私の言葉に、二人はそれそれと何度も頷いたけれど、私もイダもサンクレッドも、近くで聞いていたヤ・シュトラやパパリモや他の人々も、ものすごく怪訝そうな顔のままだった。
確かに、シエルとレーニェはよく似た双子だ。顔も似ているし、性格や考え方も似ている。
だが、当たり前の話として、二人は別の人間だ。思考を共有している訳でもなければ、同じ脳で二つの身体を動かしている訳でもない。
だというのに、二人にとってみれば、お互いを別人と認識しながらも、感覚をどこか共有しているとでも言っているようなものだ。
「俺には見えてなくても、レーニェは見てたからなあ」
「うん、こっちに避けなきゃなって思った」
「右手で取り落としたものを、左手で受け止めるみたいな感覚だよな」
「たぶんそれ」
「正直、あの芸ってウケるからやってるけど、俺ら的には何がすごいのか分からないんだよな」
「ね。どっちかが見えてればなんとでもなるのにねえ」
「普通はならないからな?」
「何かしら……ちょっと二人のエーテルを解析させて貰いたいわね……」
「確かに。間違いなく、なんらかの繋がりがありそうだ」
「双子の共感能力って聞いたことあるでっすけど、こういうものだったのでっすか?」
「アルフィノ様も出来る?!」
「出来ないね」
無理を言わないで欲しい。
そんな共感が出来るなら、私達兄妹は、一時とは言え反目しあっていたりはしないし、アリゼーが今どこに居るのかも正確には知らない。おおよそは知っているが、それは情報として得ているからであって、感覚でなんて分からない。
更に話を聞けば、流石に離れると手に取るようには分からなくはなるが、おおよそお互いにどこに居るかくらいはなんとなく分かるのだそうだ。
本当に、……不思議な人達だ。もしや、超える力による共感能力の一種なのだろうか?
■
精神は共有してないけど、たぶん魂を共有してる。
というか、魂が本来は一人で、身体だけ二人になってる。
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