02. ケニルワース 光りの島にて(山の中)
突然だが、この世界のお茶は不味い。いや、美味しいものもあるが、バカ高いうえ、日本のお手頃価格のティーバックと同じ程度の味です。丁寧に淹れればそれでも十分美味しいだろうという意見はひとまず置いておいて、適当に淹れたものを想像してほしい。
日本の紅茶のレベルが高いというよりは、ぶっちゃけ流通事情によるところが大きい。何しろ時間をかければかけた分だけお高く、つまりいいものであるみたいな風潮がですね。おかげでカヌムで手に入る茶葉は高いうえに泥みたいな匂いがするわけだ。
そもそも、胃腸薬や痛風の薬扱いだったそうだから、味は二の次だったんだろうな。加えてカヌムの人々はカフェインに弱い体質の人が多いので余計に改善がされなかったと思われる。
俺は食糧庫に茶葉もお願いしたので自分が飲む分には問題ないんだが、それだけというのも味気ない。文化を広めるという意味もあって、何とかしたいんだが……。島は茶葉を育てるにはちょっと環境が合わないんだよなぁ。
そう思いつつ、茶葉の産地を求めて移動中です。現在は山岳地帯を人のいるところを探している。地球での茶葉の産地というと、静岡と紅茶はインドか? という感じなんだが、とりあえず暑い場所の高地。というイメージだ。
あと、ナルアディードで扱われる品の中で一番遠くからというソレイユからの情報もある。ついでにレッツェから情報を教えてもらっているので近いはずなんだが……。
そんなこんなで紅茶の産地を見つけ、こちらの苗を手に入れ、食糧庫のものと配合したり、なんやかんや品種改良したものがこちらになります。
「アッシュ、新しい茶葉なんだが、少し味見してもらえないか?」
公爵家出身でそれなりに美味しい紅茶を嗜んできたらしいアッシュは味見役に最適だろう。ソレイユでもいいかもしれないが、卒倒されても困るし。
執事に紅茶の茶葉が入った缶を渡す。缶を開けた執事が少し驚いた顔をした。掴みは十分な模様です。
お茶請けはメレンゲクッキー。イチゴとレモンとノーマルの三種類。策とした歯触りとしゅわっとした口当たりにこだわりました。淡いパステルカラーがこんもりと皿に乗せられている様子にアッシュの目が輝いた。眉間の皺もだいぶ薄くなった模様。
「どうぞ」
執事が二人分のティーカップを差し出した。パスツールのエディで購入した磁器のティーカップ。鮮やかな花が絵付けされている。
「とても、フルーティーな香りだな」
「うん。よかった」
アッシュの瞳がきらめいた。それにしてもさすが本職。自分で淹れた時よりも香りが華やかだ。
一口飲んでみると、癖がなく飲みやすい。うん、想定通りの味です。
「これはどこで?」
アッシュの問いに最近品種改良したばかりで、流通に乗せるのはまだこれからだと説明。気に入ったのならアッシュが飲む分は融通すると言えば、嬉しそうに頬を緩めたのがわかった。
うん、精霊に頼まれたっていうのもあるけど、こうして身近な人が喜んでくれるっていうのも大事なモチベーションのもとだと思います。
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ちなみにこの後ソレイユのところに茶葉持っていってまた卒倒される。
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