星々の子々(ほしぼしのこご)

 Tからの手紙を受け取る約二五〇年ほど前、アカシア天文館の最初のプラネタリウムが解体されようとしていた。アカシア天文館は、天体物理学が本格的に創始されて間もない頃に建設された天文台にその源流を持つ。アマチュア天文家であり、精糖工場で財をなしたF氏が北方の没落地主の土地を買い取って作ったもので、天文台のある小高い丘の周囲には、短い草の間に岩の転がる平原が広がっている以外に何もないが、その何もないのが天体観察には最適だった。アカシア天文館の前身となるF氏の天文台には、単なる好事家から爵位を持ったアカデミー会員まで、さまざまな階層の天文学徒が出入りして活発に議論を交わした(なお、この時に持ち込まれ生成された観測記録・蔵書や草稿、議論や論文のメモ類は地元の文書館に移管され、科学史を知る上で重要な資料となっている)。
 五十代に差し掛かったとある秋の夜、「宇宙の暗闇」を発見したのを最後にF氏は天文学からは手を引く。精糖工場の経営が軌道にのり、事業を拡大し、そして失敗した。F氏が事業の整理と立て直しに奔走する間も天文台には人が出入りし、着々と天体物理学の礎を築き上げていった。立て直し半ばでF氏が流行病で死んだ後、ここは何度かの売却を経て最終的にF氏の母方の遠縁にあたるぼんくらの所有となった。F氏は最後までここを手放さなかった。その遺志を汲み、F氏の死後三十年ほどして、天文台はアカシア天文館に生まれ変わる。この頃何もないと思われていた平原に希少金属の鉱床が見つかり、鉄道が通って町が出来た。町の明かりと鉄道の煙で天体観測は難しくなったのも、天文館への転身の理由だった。
 このように、ここは由緒正しい天文館だったが、できて真っ先に導入した、当時としては最新鋭の設備は今やまったく古びてしまい、天文館よりも博物館にあったほうが違和感がないくらいだった。実際いくつかの設備は博物館行きになった。その何倍もの設備が廃棄となり、プラネタリウムはその最大のものだった。
「こんなことやって意味があると思えません」
 アカシア天文館所属の研究員の一人、ニルスは断固たる口調で言った。プラネタリウムのドームには、溶接の音が響いている。火花が足元まで飛んできそうで、ニルスは口調とは逆に二、三歩後退る。
「意味はあります。結果につながるかどうかは分からないというだけです」
 館長が口をパカパカと開け閉めして言った。屁理屈じゃん。と思ったがニルスは黙った。代わりに、
「でももう流石に寿命ですよ。博物館行きか解体かが妥当だと思いますが。これがここにあったら改装工事だってできないんですよ」
 館長は「プラネタリウムに寿命はありません。耐用年数はあります。どちらも妥当ではありません。改装工事は後回しにしてもらいましょう」と言うと、自分の腕をプラネタリウムの支柱に溶接した。
「これでよし」
 よくない。
 館長、と呼ばれているが実際には館長代理である。というか、先代の館長が作成させたロボットで、書類上の扱いとしてはこのアカシア天文館の備品だ。天文学の知識はもちろんのこと、F氏時代の膨大なコレクションの所蔵場所からトイレットペーパー取り替えのタイミングまで知り尽くしている。ある程度は自分でメンテナンスもでき、部品をあちこち取り替えながら、アカシア天文館の歩みとともに今日まで存在してきた。要は天文館の運営と研究の補助ロボットだったが、誰よりも古株な上に古いモデルなだけあって、曇った合金でできた体は年を経たものだけがもつ独特の貫禄があり、誰からともなく「館長」と呼ばれている。
 本物の館長、つまりこれを作らせた女は例のぼんくらの孫娘で、手間と金をかけられて何不自由なくのびのびと育ち、長じて天文の博士号を取得した。宇宙のことを知りたいという素朴な動機から天文の道を目指したこの女は、天文館ごとぼんくらの莫大な遺産を相続した後は研究員かつ館長としてしばらくここの運営にあたっていたが、現在は行方不明である。いや、行方は分かっているが連絡が取れない。スリルを求めてここを飛び出したのだった。が、この話は後回しにしよう。重要なのはこの便利で頑固なロボットの機能を停止させたり廃棄したりする権限はこの孫娘が持っているということである。つまり、アカシア天文館の誰も、直接このロボットを止めることができないのだった。
 幸い館長はロボットなので、プラネタリウムに自分を溶接しても怪我をすることはない。くっついている腕は取り替えになるかもしれないが。
 問題はプラネタリウムだ。
 プラネタリウムはもう搬出のための各種の手続きが済んでいる。もうすぐ業者が来るはずだった。が、館長が自分をくっつけてしまった。館長には搬出の許可が出ていない。だから勝手に外に持ち出すことはできない。
 悪知恵の回るロボットだ。誰に似たんだか、とニルスは内心毒づいた。
「館長。これは定則に則った正規の作業です。妨害はしないでください」
 困ります、と言ってもロボットにはあまり説得的でないので、正式の手順に沿った作業であることを述べて翻意を試みる。
「このプラネタリウムはまだ役目を終えていません」
「ええ、わかっています。まだ使えます。けれどももう情報も機械も古いんです」
 大規模な宇宙ステーションが建設され、観測も人工の明かりや天気に影響を受けやすい地表ではなく宇宙望遠鏡からのものが主流になって久しい。有人宇宙飛行だって帰還可能距離が着々と伸び、観測情報も目で見たそれもどんどん更新されている時代だ。宇宙旅行だって全くの夢物語ではなくなっている。個人が自力で宇宙へと旅立った例だってあるのだから。
 もちろん、情報はプラネタリウムの中の恒星原板を取り替えれば新しくなる。現在主流のデジタルプロジェクション方式に比べ、光学式プラネタリウムは、星が鮮明に映るし、何より情緒があるという評判で、このアカシア天文館もデートスポットとして人気が高い。だが、この型に合う原板はもうない。それを作っている会社がもうないのだ。二年ほど前に技術者が退職し、それに合わせて原板事業自体が廃止となった。古いプラネタリウムは情緒はあるかもしれないが、天文館はそれだけではだめなのだ。最新の研究動向を市民に伝えなければ、役割を果たせない。
「いいえ」
 館長は言った。
「これはまだ役目を終えていません。情報は不十分なところもありますが、全てがそうではありません」
「そんなもん」
 当たり前だろ、と怒鳴りそうになったところで「こんにちは、クスノキ運送でーす」という声が聞こえた。いつも備品の搬出入を頼んでいる、この業界では有名な運送会社だ。慎重な扱いが求められ、また一つ一つオーダーメイドで梱包や運送ルートを決めなければならないような、美術品や工芸品の運搬に特化している。重いものも軽いものも何でもござれの信頼できる会社だ。
 が、ロボットのくっついたプラネタリウムは運んだことがなかった。
 新人からベテランまで、バランスよく取り揃えた運搬チームを率いる顔馴染みのチーフは、プラネタリウムを一目見てあちゃあという顔をした。
「こちら込み?」
「ではないです」
「だよねえ」
 後ろの運搬チームも、新人からベテランまで、全員が苦笑する。
「すみません。ここまで来ていただいたのですが」
「仕方がないですね」
 では、と運搬チームは帰っていった。その日一日館長はプラネタリウムにくっついたままで、問い合わせや仕事のためにいちいちそこまで行かなければならないのがわずらわしかった。
 この調子で、館長は手を替え品を替えてプラネタリウムの搬出を阻止した。予算執行の疑義照会を出してみたり、ドームに設置するミラーボールを請求したり、企画展のために文書館から借り受けた天文学史の貴重資料をドームの扉に「展示」してみたり。その日数、じつに五十日に登ったが、五十一日目、二月に一度の定期メンテナンスに出ている間にプラネタリウムは解体され天文館の外に持ち出された。
 プラネタリウムのなくなったドームには、速やかに改修用の足場が組まれた。メンテナンスから帰ってきた館長は、プラネタリウムのなくなっているのを見ても何も言わなかった。正規の手続きに沿って搬出されてしまえばそれはもう管理すべき備品ではない。だからロボットはないということに反応しない。
 ドームの改修が済み、最新型のプラネタリウムが入って十年ほど経った頃、宇宙に黒点が見つかった。
 それは北極星の方向にあった。最初は暗黒星雲だと思われていたその黒点はゆっくりとした速度で広がり、北極星を飲み込まんとしていた。そのように見えた。その発見はまず世界の天文家たちを恐怖に陥れると同時におおいに沸かせた。アカシア天文館の主任研究員であるニルスもその一人だった。あれは何だ? いったいつからあったんだ? アカシア天文館の記録をひっくり返すニルスに、その頃まだかろうじて動いていた館長は言った。
「もっとも古い記録はPF-000000001にあります」
「PF? いや、待て」
 こんなに早いナンバーのついている備品など一つしかない。
「あのプラネタリウム?」
 プラネタリウムは廃棄になっていたが、恒星原板は文書館に保管されていた。ニルスらアカシア天文館の研究員は、館長を伴って文書館に詰めかけた。研究機関の所属であれば、資料の閲覧は指定された貴重資料を除いて簡単な手続きで即日可能となるが、館長は「研究機関の所属」であるか否かで一悶着あった。いずれにせよ資料を傷つけるおそれのあるものは閲覧室に持ち込めず、最終的に館長を、扉を開放した閲覧室の前に立たせて問答することになった。
 数度の問答で明らかになった。たしかに恒星原板には「宇宙の暗闇」が記録されていた。一八七二年のある澄んだ秋の夜、F氏の発見をもとに、あの天文台に集った天文家連が観測を続け、作成した記録をもとにした星図であった。「宇宙の暗闇」は現在発見されたのと異なる位置にあり、また大きさもこちらの方が小さかった。これが示唆するのは、北極星のそばの黒点=「宇宙の暗闇」は自律的に移動しており、大きくなるか、あるいは近づいているということである。
 旧天文台の資料と現在の観測結果を照らし合わせ、あの黒点は、底に穴の空いた円錐形の何かで、開口部をこちらにむけながら、自律的に移動しかつ次第にその開口部を広げており、このままこの動きを維持するならば、数百年後にはこの惑星系を飲み込むという。
 数百年後、と人々はひとまず安心した。ニルスも家に帰って夫と子供に報告をした。差し当たっては安心だ。しかし、数百年後の人々にとってはそうはいかない。何といっても現実なのだし。
 「穴」の研究とその破壊、居住可能な宇宙ステーションの建設、そして大規模な惑星移住の可能性が検討された。一時的に増加した人口は、緩やかに減少傾向に転じた。宇宙開発のイニシアチブを取る裕福な国への移住が富裕層のトレンドとなり、同時にそうした国への密入国が問題となった。人口過密地と過疎地の差が極端に開き、住宅問題と空き家問題は慢性の病のように、それぞれの国につきまとった。
 最新鋭の技術を尽くした探査機が「穴」に吸収されたというニュースが届くや否や、その傾向は加速した。探査機は数十年をかけ、予定通りに「穴」の表面に到着したが、サンプル採取のために接触した途端、その表面の組織に吸収されてしまった。探査機は健気にも、完全に吸収される直前まで分析結果を送り続けた。それによれば、組織にはH2Oやアミノ酸、ミネラル、金属等が含まれていた。地表にあるものとそう変わらない。ならば破壊できるのではないか、とはいえ探査機が吸収されてしまったのを見ると、手段については検討の余地がある、そもそも破壊できるのか、あれが知的生命体だった場合、何か報復されるのでは、云々。
 議論は白熱したが、大半の人にとっては、まだ先の、その上未知のことよりも、まずは当座の生活を送ることの方が大事だった。しかし、日中は忘れていても、夜は毎日やってくる。そもそも外国どころか近くを旅する余裕もない人々にとって、夜空を見上げることは諦念を含む行為となり、いつしかそれにすら慣れていった。宇宙の「穴」は数世代をかけてじわじわと広がり、次第に星座を覆い隠すようになっていった。
 そんな折、Tの手紙は、探査機の観測機器に記録された見慣れないパターンの電磁波という形で託された。電磁波は一定のパターンを繰り返し、その後別のパターンへ移行するという形になっていた。この冒頭の一定パターンについて、暗号学者と記号学者の間で活発な議論が交わされたが、ほどなくしてその意味が明らかとなった。「親愛なる皆様へ」。それを手掛かりに、残りのパターンも明かされた。

 我々は極端に巨大なる宇宙のクラゲ。我々は恒星を飲み、エネルギーを消費しながら宇宙を漂います。浮き沈みします。どの語彙も正確ではありませんでした。皆様の時間からは、我々は突然現れたように見えますでしょう。しかしながら、我々と皆様は同じ宇宙の子ら。

 このような、ややくせのある調子で続くこの手紙は、その大半が「我々」すなわちあの穴の生態レポートとなっていた。それによれば、宇宙の「穴」は、宇宙空間に存在する巨大な生物であった。普段は高次空間に「畳み込まれて」いるが、捕食時には大きく体を広げ、恒星を飲み込む。ある種のクラゲは捕食時に口を広げ、近縁種のクラゲを丸呑みにするが、そうした生態を踏まえて自らをクラゲと名乗っているらしい。
 気になるのはなぜその知識と言語を得たのかということだが、それはこの手紙の末尾に簡潔に記されていた。クラゲの知識と言語の大元となったのは件の「館長」の制作依頼者、例のぼんくらの孫娘、行方不明になっていた今は無きアカシア天文館の本物の館長だった。この孫娘が莫大な遺産を相続したことは前に述べた通りだが、彼女はその大半を館長代理、すなわちアカシア天文館の運営補助ロボットと、航行可能な宇宙船を搭載したロケットに投じた。そして宇宙船に自ら乗り込み、旅立った。まだ帰って来ていないが、何か奇跡が起きない限り、とっくに燃料切れになっている。先に「行方は分かっているが連絡が取れない」と述べたのはそのためである。金と暇を持て余し、人生に退屈した「自由な中年女」の遠回しの自殺だと、当時はずいぶんと話題になった。しかしどうして、研究を続けながら天文館を運営する手腕と、必要な機能を搭載したロボット制作を依頼できる程度の工学知識と、天文博士の肩書を持った女が、人生に退屈などするだろうか? 彼女は「宇宙の暗闇」の調査に行ったのだ。
 この頃はとっくに博物館行きとなっていたが、調査のために慎重に慎重を期して起動された例のロボット、館長代理でありアカシア天文館の備品たるあのロボットは、なぜ彼女は旅立ったのかという学芸員の問いに答えて「必要なものが揃ったから」だと答えた。だから自分の制作者たるT館長は、宇宙へと飛び立った。
 手紙によれば、どうやらT館長は、宇宙船ごとこの極端に巨大なる宇宙のクラゲに吸収されたらしかった。あたかも生命の原初、とある単細胞生物が捕食の代わりに相手を吸収し、共生関係になり、一つの生物となったのと同様に、T館長と宇宙船は極端に巨大なる宇宙のクラゲに吸収され、その言語野となった。もはやT館長そのものは存在しないものの、それを元にしたネットワークの構築が急ピッチで進められ、今回のコンタクトとあいなった、ということだった。最初の探査機が分析して寄越した様々な成分は、おそらくここに由来するものだろう。
 やはり遠回しな自殺だという意見は根強くあった。燃料は最初から片道のつもりだったのだと。あるいは金持ち女の道楽も、たまには役に立つ、と。生前はどこかへ寄付するでもなく遺産を好きに浪費していたのを批判されもしたが、怪我の巧妙、人類と地球外生物とのコンタクトに奉仕したではないかというわけだ。しかしながら、本当に怪我の巧妙、単なる偶然ならば、これほどまでに都合よく進むだろうか? いかに極端に巨大なる宇宙のクラゲが未知の生態を有しており、可能性の塊であったとしても、たかだか数百年に満たない期間で言語野を獲得する、などということが?
 さて、Tからの手紙はもう一通あった。そしてそれが最後となった。この手紙によれば、「我々」極端に巨大なる宇宙のクラゲは、「皆様」惑星生物とは時間の位相が異なっており、そちらから見れば非常に緩慢に動くように見えているし、「皆様」で言うところの消化と代謝の機構が根本から異なるのであくせくとエネルギーを吸収しなくても生きていける。今後はもっと動きを遅らせる予定だが、心配いらない、手紙の表現によれば「我々は飢餓を自ら引き延ばす」ことができる。だから、

 待ちます。皆様が滅びるまで。

 それを見た人類は、なぜそんなことを言うんだ、と憤った。今更そんなことを言われても、極端に偏った人口密度や、宇宙開発を優先させるために幸福をあきらめてきた日々や、その他諸々の、無数の人々の抱いたやるせなさは帰ってこない。それに、人類の夜空はすでに八割近くが暗闇——「極端に巨大なる宇宙のクラゲ」の口腔に覆われていた。それは今や、見上げるたびにメメント・モリを突きつけてくる。このまま退いてもらうわけにはいかないか、同様の電磁波パターンを用いてコンタクトを試みたものの、返事は来なかった。
 しかし、とにもかくにも、止まるわけにはいかなかった。「穴」もとい極端に巨大なる宇宙のクラゲが発見されて以来、予算が組まれ、資源と資金が投じられ、開発が進んでいた惑星移住船の第一団が出発した。先発隊として、最も近い星系に派遣された開発団は、すでに惑星の開発に着手している頃だった。彼らが到着するまでには、惑星表面の五十分の一が居住可能になっている予定だった。このような見切り発車的な移住計画も、あのバカデカクラゲが口の中に我々の星々を突っ込んでいるせいだ。
 設計者の粋なはからいで、冷凍睡眠に入るのは、極端に巨大なる宇宙のクラゲの口から出た後、満点の星空をモニター越しにでも目にした後の計画になっていた。移住団は、各分野のエリートから構成されていたが、まるで子供のように、その日を指折り待っていた。
 地表では、今やプラネタリウムは、視界から失われつつある星図のアーカイブであると同時に、かつてあった夜空を忘れないための記念碑的存在になっていた。「穴」が発見された日——それは偶然にも、F氏が「宇宙の暗闇」を発見した秋の日に近い日付だった——人々は近くのドームに集まって、天井に映る夜空を見上げる。見慣れない「満点の星空」を子供たちは怖がり、落ちそうだと言って騒いだり、はしゃいだりした。我々は、かつてあった夜空を忘れてはならないのです、この人類に与えられた財産を心に刻みつけましょう。プラネタリウムによる夜空投影は、たいていこんなふうに締めくくられる。それ以前からすでに、F氏の天文台に限らず、人類は自ら作り出した光で夜空を失いつつあったのを忘れてしまったかのようだった。
 プラネタリウムから解放された子供たちは、友人たちと鬼ごっこをしたり、ドームの周りに並ぶ夜店の菓子類を親にねだったりしていた。夜空を見上げると、何もない真っ暗闇だ。子供が一人、上空に向かって手を振った。それを見て、他の子供たちも手を振った。生まれた時からそこにいる、極端に巨大なる宇宙のクラゲに向かって、大きく大きく手を振った。

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