愚者は問う

「心底軽蔑します。顔も見たくありません」

 話の前後は忘れた。ピシャリと言い放たれたこのひと言に、俺っちの優秀な脳味噌は数秒間機能を停止した。
 バタン! と荒々しくドアが閉まる音を残し、メルメルはダンスルームから出て行った。
「……どっち?」
「……一応聞いたる。何がや」
 床に膝をついた俺っちのうしろに仁王立ちしているこはくちゃんとニキ。スマホを確認する。四月一日。ほら、やっぱり。
「嘘? ホント?」
「燐音くんあのねぇ」
 いやいやなんでそんな怖ェ顔してンの、あいつが嘘つきなのは周知の事実っしょ。だから今日はさ。
「メルメルの本心が“天城大好き♡ 毎秒傍にいたいのです♡”な確率、何パーだと思う?」
「ゼロっす!!」
「ゼロじゃクソボケ!! はよ追いかけんかい!」
 ふたり同時にどやされて俺っちは慌てて部屋を飛び出した。チックショウ、今日こそは素直じゃねェあいつから、天の邪鬼な「好き」を聞き出せると思ったのによォ。





(2023年エイプリルフール)

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