くっつきたいのっ♡

アイカツスターズ きらあこss。
花園きららちゃんお誕生日おめでとうのssを書きました。あこちゃんとずっとくっついていてください。


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 お誕生日といえばサプライズ! というのも、もちろんとっても素敵で、幾度もサプライズなプレゼントを贈り合ったことがある。でも、一緒に住むようになり、長く時間を共にするようになれば、相手の考えていることが何となく分ってくるものだし、去年とは違うものをと焦ったり、だんだん同じようなパターンになってきてどうしようと悩んだり、贈る側の負担が大きくなってくる。
 それならば一番ほしいものを先にリクエストしておくことにしよう、というのがきららとあこが決めた、今年のそれぞれのお誕生日のやり方だった。
 と言っても、リクエストの受付自体も遊び心がある方が良いだろう。直接聞くとか、キラキラインで数秒もあれば出来てしまうやりとりでというのは何だか味気なく思うから。
 あこは、きららの誕生日の一週間前、ちょうど映画ロケで三日三晩家をあけることになったタイミングで、ロケ地である南の島からきらら宛に手紙を送った。
『花園きらら様
 ごきげんよう。元気に過ごしていらっしゃるかしら。
 あなたのことですから、一人でだらけているんじゃありませんこと?
 少しくらいいいですけれど、水曜日はごみの日ですから、ちゃんと出しておくんですのよ。
 って、いけませんわ。本題に入りますわ。
 もうすぐあなた、お誕生日ですわね。今年は先にほしいものリクエストを受け付けることにしようと話しましたけれど、そろそろリクエストを教えていただけると助かりますわ。この手紙に返信用の便箋と封筒が入っていますから、あなたのご希望をお聞かせくださいな。出来る限りでお答えいたしますわ。
 早乙女あこ』
 撮影の最終日、きららからの返事がホテルに届いた。封を開けると可愛らしい丸い字が躍っている。
『あこちゃんへ♡
 お手紙ありがとう♡ いきなり届いたからびっくりしちゃった! きららは元気だよ。
 あこちゃんは撮影もうすぐ終わるのかな?
 ごみはちゃんと出しました! えっへん! 早くあこちゃんにあいたいな~♡
 お誕生日のリクエストは、次のページに書きました。
 きららより♡』
 書かれている通り二枚目の便箋を見れば、罫線を無視して、大きい字で書きつけてある。
『リクエスト:お誕生日の日はあこちゃんとず――っとくっついていたいです♡』
 あこは目をぱちくりさせて、それから眉間に深く皺を寄せた。
「はぁ?」
 思いもよらない内容に頭を抱えてしまう。例えばお菓子とかコスメとか服とか、このレストランで食事がしたいとか、そういう具体的なことを言われるものだとばかり思っていた。しかしこうもシンプルというか抽象的な内容では、一体どうしたら良いというのか。贈る側がどんなものをあげればいいか悩んでしまわないためのリクエストのはずだ。なのにこれでは結局なにをすればいいのかよくわからない。
 本当にくっついているだけでいいのだろうか。それって、いつもと同じように過ごすだけになってしまうのではないか。
「もう、どうしたらいいんですのよ……」
 ため息をつきながら最後の撮影に向かった。南の島の日差しを浴びながら、砂浜を駆けたり海に潜ったり、全身を使って演じていたので、リクエストについて深く考える暇もないまま、いつの間にか撮影はオールアップとなっていた。
 その後、あこが家に帰ってきてからも、お誕生日までの数日はお互い仕事で忙しく、瞬く間に過ぎていった。
 とりあえずケーキは予約して、エルザに教えてもらった最高級黒毛和牛も手に入れて、お誕生日の準備は進めたが、リクエストのことが気がかりでで頭の中はぐるぐるしていた。
 3月30日。
 当日は二人ともオフにしていて、朝はのんびり起きた。ベッドから起き上がりまだ寝ぼけ眼のきららにおめでとうと言うと、一瞬で眠気が覚めたようで、ぱぁっと頬を紅潮させて喜んでくれたのが嬉しかった。
 並んで歯を磨いて、着替えて朝ごはんを食べて、ソファに二人でもたれかかったところで、きららがにこにこしながら言ってきた。
「それじゃあ、あこちゃん。きららのお誕生日のリクエスト、叶えてください♡」
「ええっと、それって……」
「もうっ、まさか覚えてないの!? ず――っとくっついていたい♡って」
「覚えていますわもちろん……!」
「じゃあ早速、ぎゅう♡」
「ふにゃ!?」
 いきなり抱きしめられて、心臓が跳ねた。きららの甘くて可愛い匂いでいっぱいになっていく。あこはその背中を優しく抱きしめ返した。
 ああ、本当に、きららはこうすることを一番欲しがってくれていたのだ、と急に腑に落ちた。だってこんな風に触れ合っているだけで、どんなに豪華ですごいプレゼントをもらうより、幸せだなってあこも感じるから。
 確かに、本当に、そう思った。最初の30分くらいは。
「……あの、きらら、そろそろ離れて下さいませんこと?」
 おずおずと言うと、きららは明らかに不満そうに頬を膨らませて抗議してきた。
「だめだめ、絶対メェ~~っ! 離れちゃメェだよっ! だって今日はず――っとくっついてるんだからっ!!」
 そう言って、先程より更にガシッとしがみついてくる。頬をスリスリして、絶対に離れまいとする姿は、恋人としてはとても可愛らしく思えるし、嬉しい気持ちがないわけではない。しかし、節度というものがある。
「その、わたくし、お手洗いに行きたいんですけれど」
「おっけ~! じゃあ一緒行こ」
「ちょっと全然おっけ~じゃありませんわ!? もうっ! は・な・し・て!!」
「やだやだやだ、あこちゃんのばか~~!! リクエスト何でも聞いてくれるってゆったじゃん!!」
「馬鹿はあなたですわ! わたくし真面目に言ってるんですのよ!?」
「きららはずっと大真面目だもん~~~!!」
 そんなきららをどうにか引き離して用を足すことは出来た。しかし、予約していたケーキの引き取りに出掛けようとすると、当然のようにきららはくっついたままついてこようとする。二人とも大人気アイドルなので変装もしていたのに、ベタベタくっついて離れないカップルは変に注目を集めてしまい、あまりにも視線を感じるのが気になって途中で引き返してきてしまった。ケーキは急遽配送をお願いしてて、昼食もピザを取った。
 その後も、あこのおすすめの映画や、最近きららが出演したファッションショーの配信アーカイブを一緒に見たが、その間も、きららはずっとぴったりくっついていた。腕に、胸に、腰に、肩に、体勢を少しずつ変えながら、やはりぎゅっとしがみついている。
 どうしたものかと思っていたあこも、だんだん気にならなくなってきた。
 昼下がりに届いたケーキは、きららがロウソクを吹き消してからお互い食べさせ合い、何度かキスを交わして、少しだけお昼寝もした。夕食は最高級黒毛和牛だ。くっつきながらも塩コショウをふったり、フライパンや油を用意したり、二人で協力しながら最高の焼き加減にすることができた。当然ながらスペシャルにおいしかった。
 お風呂も二人一緒だ。身体を洗いっこして、フワフワの泡に包まれる。お互い一糸纏わぬ姿でいつもよりも近い距離で触れ合っているうちに、次第にいつもより強い欲望が燃え上がっていった。今日は誕生日だからって熱っぽく誘われて、きららの欲しがるところにたくさん触れて、かと思えばきららも同じだけ触れてきて、いっぱいいっぱいくっつきすぎて、どこからがあこでどこからがきららだか分からないくらいで――……

「お風呂、湯加減も最高だったし、えっちも久しぶりで気持ちよかったね、あこちゃん♡」
「にゃ!? そういうこと、口に出して言わないでくださる!?」
「え~? だってほんとのことじゃん」
 寝室の明かりは消されていて、開いている窓からは春の始めの柔らかな夜風が入り込んできている。まだ少し冷たい気もするけれど、火照った身体にはちょうど良かった。
 そこであこはハッとした。夜風を身体に感じていられるということは、もう自分の身体に誰もくっついていないということなのだ。
「あなた、誕生日のリクエストはもういいんですの?」
「ん? あ~そだね。今はお風呂あがりで暑いし、くっつくのはちょっと」
 きららはカラッと笑った。入ってきた月の光で白い歯がキラリと輝いている。その様子にあこはシャーッ! と八重歯をむいた。
「あなた、わたくしがお手洗いに行こうとするのを何度も阻んできたくせに、自分が離れたい時はすぐに離れるんですのね!?」
「なぁにあこちゃん? きららともっとくっついていたいってこと~? ワガママだな~♡♡」
「どっちがですのどっちが!! いい加減にしなさいな! シャーッ!!」
「やだ~! 怒っちゃメェだよぉ。きららは今日は誕生日! 主役です~~!!」
「あと数分で終わるじゃありませんの!」
 結局、にゃんにゃんメェメェといつものような言い合いになってしまう。
 しかしもう分かっていた。お互いがお互いを、ずっと一緒にくっついていたい相手だと思っていること、一緒にいるだけで幸せになれること。
 やがて二人で一緒にベッドに横になる。時計を見れば3月30日はあと数秒しかなかった。その時間を惜しむように、あこは目の前の愛しい恋人に囁いた。
「きらら、本当にお誕生日おめでとうですわ。ずっと、ずうっと一緒にいましょうね」
 ふふっときららは嬉しそうに微笑んでいる。返事の代わりに優しいキスが返ってきた。

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