ぱんつのにゃんこ

アイカツスターズ きらあこss。
8月2日のぱんつの日にきららちゃんからぱんつをプレゼントされたあこにゃんこの話です。
(※告白以上ほぼ両思いお付き合い未満な時空のきらあこ)
作中のぱんつは「猫 パンツ レディース」でググると出てくるやつです。かわいいです。


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 連日の暑さでもう溶けてしまうじゃないかという今日この頃。
 きららがやってきたのはそんな昼下がりだった。
「S4のお部屋、天国だね~!クーラーがよく効いてて快適~♪」
「突然やってきてなんですの?ヴィーナスアークも十分涼しいのではありませんの?というか今は避暑のために南半球に言っていると聞きましたけれど」
「うーん、まぁそうなんだけど……」
 きららの返答はどこか歯切れが悪い。
 何かを察知したあこは脳内データベースをカタカタして探ってみる。きららの不自然な来訪、どこかそわそわした様子。
 脳内がピンポンと弾けて答えを導き出した。
 ――これは、きららが何かを企んでいる時の態度だ。
「あなた、一体何をしでかしに来ましたの!?」
「しでかしにって、きらら別に悪いことしに来たんじゃないよ!あこちゃんに会いに来たんだもん♡」
「わたくしの目は誤魔化されませんわよっ!その後ろに隠したものはなんですの!?シャーッ!」
 あこは一瞬の隙を突いて、きららが後ろ手に持っていた包みを奪い取った。
「もうっ!人のもの勝手に取っちゃメェ~ッ!……でもまぁいいか♪だってそれ、あこちゃんへのプレゼントだもん♡」
 むぅとほっぺたを膨らませたと思ったら、にこにこ微笑むきらら。そのくるくる変わる表情があこを翻弄する。
 今あこの手にあるそれはきららの言う通り、いかにもプレゼントらしい、リボンのついた袋だった。
「何ですの急にこんな……別に誕生日や記念日というわけでもないでしょうに」
 一体中身は何なのか。恐る恐る包みをほどいて中を確かめる。
「にゃ!?こここれは……!」
 綺麗にビニールで包まれていたのは真新しい布製品。予想の斜め上すぎるそれにあこは目を疑った。
「えへ♡今日はね8月2日でしょ?ぱんつの日だからぱんつだよ♡」
 そう。ぱんつ。
 それはどこからどう見てもレディースサイズのショーツだった。
 しかも普通のぱんつではない。
 その真ん中に、つまりちょうど股間の辺りを中心に大きく猫の顔がプリントされている。
「とっても可愛いでしょ?すっごく可愛いねこちゃんだから、あこちゃんにぴったりだと思ったんだ!」
「にゃ、にゃにゃにゃ!?!?」
 これまで誰かから下着をプレゼントされるなどということはなかった。あっていいはずがない。
 何故ならあこが最近脳内データベースに追加した情報(お姉さん向けファッション誌より)によれば〝男が女に服、まして下着を贈るのはそれを脱がせたいからである〟ということなのだから。
 きららは女の子だ。けれど、先日あこは彼女に告白された。
 つまりきららにとってあこはそういう、性愛の対象であって、そんな彼女が下着を贈ってくるということは。
 あこが真っ赤になりながら湯気が出るくらいに頭をぐるぐるさせていると、きららが更に追い打ちをかけてきた。
「絶対あこちゃんに似合うと思うからさー、履いてみてよ」
「ぬぁぁあ!?ははは履くって、今ここでですの!?」
「そうに決まってるじゃん。ほら早く!」
 きららは早速あこの部屋着のホットパンツを脱がせにかかる。
「無理無理無理!ぜったいにだめですわ~~!!!!」
「え~?なんで?ぱんつ履いてみるだけじゃん」
「あっ、あなたはそうやって、言葉巧みに脱がせて、わたくしの純潔を奪おうとするんでしょう!?!?いくらなんでもそんなのまだ早すぎますわ!!!」
「じゅん、けつ?あこちゃんが何言ってるのかよく分かんないよ。まーとりあえず履かせちゃうね♡」
 言うが早いかきららはあこのホットパンツを脱がせ、あこの今履いているショーツの上から、プレゼントの猫ぱんつを器用に履かせてしまったのだった。特にそれ以上あこに触れてくる様子はない。
「うんうん。やっぱり可愛い~♡もうあこちゃんのためのぱんつって感じだね~」
 猫ぱんつ姿のあこを見てきららは無邪気に微笑んでいる。その表情は見れば見る程、全く下心のないきらきらした笑顔で、なんだか拍子抜けした。
「あなた、本当にただこれを履かせたかっただけですのね」
「うん?それ以外に何かあるの?」
「なっ、何にもありませんわよっ」
「そう?……ふふっ、でもやっぱりこのねこちゃん可愛いよね~!ぎゅうってしたくなっちゃう」
 言ったそばからきららはあこの腰にぎゅっと抱き着いて、ぱんつの猫にすりすりと頬ずりを始めた。
「にゃぁっ!?にゃにをしますのよ~っ!?」
「だぁって可愛いんだもん♡」
「あ……う……」
 ぱんつの猫にすりすりするということは、つまりあこの股間の周辺をすりすりするというわけで。
 確かにきららはまったく他意なくそれをしているけれど、あこは自身の下腹部の辺りに込み上げてきたほのかな熱に気付いてしまった。
「ん?どしたのあこちゃん、なんだかお尻、もぞもぞしてるみたいだけど」
「――!!にゃっにゃんでもありませんわっ!!」
 まさか、あこ自身ですらさっき気付いたばかりの薄っすらとした欲望にもう気付かれてしまったのだろうか。そう思ってきゅっと心臓が縮むような心地がしたが、きららは透き通った丸い瞳をぱちくりさせているだけだった。 
「そう?なんだか顔が赤いけど。あっそっか、もしかしてくすぐったかった?」
「えっ……ええ、そ、そうですわ!そうなんですの!!」
「もう、それくらい言ってよ~!きららとあこちゃんの仲なんだから!」
「ええ、そう、ですわね……」
「あこちゃん、なんか変だよ?……まぁいいけど!このぱんつ、たいせつにしてよね!」
 そう言ってきららは満足そうに笑って帰って行った。
 まるで嵐が去ったあとのように自室はしんと静まり返る。
 あこはその、先程まできららが頬を擦り付けていた猫の瞳の部分を撫でてみた。何となくまだきららの体温が残っているような気がして、また心臓がドクドクと大きく音を立て始める。
 もっとたくさんほしい、けれどこのまま欲望に流されるのはなんだか怖い。取り返しのつかないところまで行ってしまう気がして――……。
 すぐさまぱんつを脱いで、綺麗に折りたたんでタンスの奥へとしまった。

 きららからもらったかわいい猫のぱんつ。
 そのあと時々きららと会うときにだけ履いているのは、あこだけの秘密なのだ。

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