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次の日は職員会議で、授業は昼までだった。
あの動画について他の奴らにそれとなく訊こうと動画サイトの話題を出してみたが、なんだお前観たのかよヘンタイ、エロ魔人、と今度は俺が揶揄われて終わった。逆に言えば、他の奴らはあれを知らないということだろう。だってクラスメイトだぞ。見ていたら話題にしないわけがない。
仄かな安堵のようなものを覚えつつ、アングラであんま趣味じゃなかったなどと嘯いて話題の元凶の性嗜好をイジってカウンターとする。元々このサイトを見つけたあいつもアホだから見てたら話題に出すだろう、出さないということはあいつも知らない。きっと。
馬鹿なやり取りをいなしながら、教室の隅に座る女子生徒をちらと見る。
雨上リラ。記憶の中の髪型、体型、口元なんかもそっくり。やはり、あの動画で見たのは彼女だろうという確信が強まった。
本人は何も知らない顔で下校の準備をし、今日も一人でいる。きっと帰りも一人だろう。
俺はいつものメンツに「本屋に寄りたいから」と言って先に別れ、案の定一人で教室を出ていく雨上リラをそれとなく尾行する。
学校最寄りのバス停……は人が多いから、雨上リラについていって一緒にバスに乗る。しばらく揺られて、5つバス停を過ぎたところで彼女は降車ボタンを押した。
バスの乗り換えによく使われるそこは、まだ早い時間なのもあって降りる人も少ない。よし、ここだ。
一緒に降り、雨上リラに近寄って声を掛ける。

「あ、あのさ。雨上さん」

振り向いた顔は、驚いてはいないが怪訝には思っている、くらいの表情。もしかするとつけていたのもばれているかもしれない。

「……何?」
「いや……」

慌ててスマートフォンを取り出す。昨日の動画は、秘かにブックマークしていた。
表示した動画を、彼女に見せる。これを確かめるために、こうしてついてきて話しかける機会を狙っていた。

「これ、雨上さんだよね?」

雨上リラは、僅かに目を見開いた。
そして俺が二の句を継ぐ前に、す、と目を細めて笑った。
途端に、答え合わせをされたような気がした。
教室で見ていた彼女は目立たない大人しい女子生徒でしかなかった。でも、目の前のこの顔は、娼婦の笑みだ。
人を誘い込む淫らで妖艶な、娼婦の笑み。

「うん、これアタシだよ」

あっさりと認める姿に唖然とする。こんなの、もっと動揺するかと思ったのに。

「……で? どうしたいの? 同じことしてほしいって?」
「え……」

言葉に詰まる。俺が声を掛けた理由は……。
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>そうだ → https://notes.underxheaven.com/preview/e358dfeb7c209c455c3c650c9d706b88
>ちがう → https://notes.underxheaven.com/preview/111d1f412a4d3655b996502acaf19d24

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