2023/11/15 10.アップルティ 白と黒
冬はチョコレートが美味しい季節だ。
そんなわけで、迷宮の食材ルートもチョコレート系を作れとばかりにカカオだのココアの粉だのがドロップするようになります。あとわざわざ製菓用、って【鑑定】結果に出るのもある。二月じゃないあたりが運営のこだわりがうかがえるな。
「今日はここまでにしようか」
「うむ」
少しばかり肌寒い風が吹いている迷宮のフロアにて、そう結論付けて剣を下す。周辺に敵mobがいないのを確認し、その場で座る。呼び出した白と黒がするりと肩から降りた。白は久しぶりの戦闘中の呼び出しだったせいか、どこか満足そうだ。
白のためにリンゴの皮を入れたアップルティを入れ、私も同じものを。ついでに採取したばかりの金柑を二匹にだす。
「ちょっと酸っぱいかも」
「うむ、平気じゃ」
「問題ない」
小さくて黄色い皮に食いつく小動物が可愛い。シロップ漬け、蜂蜜、白ワインと砂糖で煮てもいいな。一つ食べて満足したのか、程よく冷えた紅茶をテチテチ舐める白を見ながら空を眺める。迷宮の中とは信じられないな……。
甘酸っぱい香りのいいアップルティを飲みながら、白の素晴らしい毛並みを堪能する。黒もだいぶ滑らかになりました。実に幸せですね。
さて、白の召喚時間が終わったのをきっかけに迷宮を出て、雑貨屋に戻ってきました。
それから雑貨屋のキッチンでチョコレートを溶かす。チョコレートって本当にチョコレートって香りだよな。いや何を言ってるのかわからんのだが。他にない香りと言いますか。
「む、すごい匂いだ」
「離れてるか?」
「そうする」
懐でもぞもぞし始めた黒に声をかけると、逃げるように飛び出していった。チョコレートって動物に害があるんだっけか? 黒は精霊獣だが今は物質界に馴染んでいるから苦手な匂いだったのかも。いや、人間もこの匂いがダメと言う場合もあるな。
おそらくレーノのところか私の部屋に向かったのだろう黒を見送り、再び作業に戻る。
溶かしたチョコレートとは別に、細かく刻んだチョコレートも入れたチョコチョコしいパウンドケーキを一つ。それから金柑を白ワインと蜂蜜で煮たコンフィを作り、これも刻んだチョコレートと一緒に焼き上げた。
その二つを雑貨屋の棚に入れて、島に転移する。迷宮で手に入れた『金色金柑』は種を採ったので庭で育ててみよう。チョコレートもいいが、柑橘類も多く出回る季節になったなぁ。
柚子の皮でピールやオランジェットを作るのもいい。
「マスター、甘い匂いがします」
「あぁ、チョコレートだな」
「チョコレート……」
「甘くて、ちょっと苦かったりする菓子だな」
庭に来るとリデルが寄ってきてゆらゆらと揺れながら首を傾げた。リデルは味覚はないが、嗅覚はある。なるほど、と、うなずくリデルの頭を撫でて庭の様子を聞きつつ金柑の種を植えて【植物成長】と【緑の大地】をかける。若木と言えるところまで成長させたら後は問題ないだろう。
さて、これから――。
お茶漬:ホムラヘルプ~~
菊 姫:もう死に戻りは嫌でし!
シ ン:勝てねぇ!!
おっと、予定が決まった。レオはまだログインしてないから、単純に手が足りないって感じだろうな。場所を聞いて移動。さて、何をしているんだろうか?
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