エスデュハロウィン2026


※ハロタウン在住のモンスターパロ
※ハロタウンとクリスマスタウンが頑張れば往復できる設定
※服はたぶんクーリエ

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エスデュ ツイ腐テ

 ここはハロウィンタウン。モンスターが住む常夜の街。金色の月明かりの下、年に一度のハロウィンの祭りを心待ちにし、一体次はどんな脅かし方をしてやろうかと考えを巡らせる、ハロウィンを祝うための街。
 この街には二人の小鬼が住んでいました。名前はエースとデュース。顔も性格もまったく似ていませんでしたが、いたずらを仕掛けるのも下手を打って怒られるのもいつでも二人一緒だったので、街の住人はすっかり二人一組で扱っていました。二人の方も、口ではいつも「こいつと一緒にするな」と憤慨していましたが、そのわりに一緒にいたずらをするのをやめなかったので、周りはまったく本気にしていませんでした。
 今日も今日とて、エースはデュースをいたずらに誘います。いつだって二人のいたずらは、エースが思いつきをデュースに聞かせるところから始まるのです。
「なぁデュース、オレいいこと思いついちゃった」
 ニヤニヤ顔のエースを見て、デュースはイヤそうな顔をしました。エースがこういう顔をしているとき、大抵はロクな目に遭わなかったからです。だからデュースはいつも、最初は断ろうとします。
「僕はイヤだぞ。今日はサリーさんの手伝いで、大鍋にいっぱいのシチューを作る予定なんだ」
「えーっどーせ博士とサリーさんの分だけなんだから大鍋いっぱいなんて食いきれねーじゃん」
「だから『作りすぎた』って言ってジャックを誘うんだ。魔女たちがアドバイスしてくれたらしい」
 この街にはジャックが二人いて、デュースが言ったのは「ハロウィンの王」、この街の支配者たるジャック・スケリントンの方でした。サリーがかの「ハロウィンの王」に惚れ込んでいるのは知っている者にとっては当たり前の話で、住人たちがお節介を焼くのもそう珍しいことではありませんでした。最も、もう一人のジャック、エースとデュースの友人であるオオカミ人間のジャックがお呼ばれを受けていたとしても、大食漢の彼であれば大鍋いっぱいのシチューくらいぺろりと平らげてしまうでしょう。
 デュースは日頃から世話になっているサリーの助けになろうと張り切っていましたが、残念ながら、エースはデュースを言いくるめるのが街で一番得意な小鬼でした。
「ジャック宛てならなおさらダメじゃん。サリーさんの愛情をたっぷり込めて作らなきゃなのに、デュースが手伝ったりしたら愛情の純度が下がっちゃうでしょ」
「ハッ! ……た、確かに……!」
 そして残念ながら、デュースはエースが相手でなくとも簡単に言いくるめられてしまうほど単純なタチでした。
 ともあれエースとデュースは、二人連れ立って街の外へ歩き出しました。つい最近、ハロウィンタウンの外には別の街があり、その一つが「クリスマスタウン」と呼ばれているらしいことを、エースは知ったのです。そこではハロウィンタウンと同じように、年に一度の「クリスマス」という祭りのために、一年掛けて念入りに準備をする住人がいるということでした。
「その街の王は『サンディー・クローズ』っつって、空飛ぶソリに乗って下の街に箱をばらまいて回るらしい」
「箱ってどんなやつだ? 噛みつくのか? それともめちゃくちゃ固くて頭をぶつけたら陥没するのか?」
「いやーそれがね、箱は『開けさせるため』に落とすらしいんだわ。つまり大事なのは中身ってこと」
「中身……つまり僕たちで、中を血まみれの臓物とかトゲまみれのボールとか、半漁人のすみかでぬるぬるになった雑巾とかに入れ替えるんだな!」
「バーカ、クリスマスってのは十二月にやる祭りなの! 今から二ヶ月も待ってらんないじゃん。手っ取り早く箱に入れる前の中身盗んで、ついでに空飛ぶソリもいただいてこーよ。サンディ・クローズを見習って、空から中身をばらまいちまうの」
「エースお前……こういうことにかけては本っ当に天才的だな……」
「でしょー?」
 こうしていたずら小鬼たちは、森を抜け林を抜け、ちょっとした大冒険の後に無事、クリスマスタウンにやって来ました。
 クリスマスタウンでは、ハロウィンタウンとまるで違う真っ白でキラキラした街並みに目を奪われたり、初めて見る「雪」というものに驚いたり、埋まったり、動けなくなってもがく相手を指さして笑ったり、自分もブーツが雪にはまって抜けなくなったり、クリスマスタウンの住人とはまるで違う自分たちのことを怪しまれたり、忙しさにごまかされてなぁなぁで受け入れられたり、「プレゼント」を作る手伝いをさせられたり、ちょろまかしたお菓子のおいしさに目を見開いたりしながら、最終的に、エースとデュースは「プレゼント」を乗せたソリを盗み出すことに成功しました。
 遠ざかっていく地面で何か叫んでいる「サンディー・クローズ」を尻目に空へ舞い上がったエースとデュースは、あまりの高さと風の強さに震えながら、しかし相手にそれを悟らせまいと強がって、わざと元気よく周りの様子を大声で言い合っていました。
「す、すごいぞエース、月があんなに近い! 雲もだ!」
「クリスマス・タウンってあんなちっちゃい街だったんだ!」
「こんなに早いと山なんかほんとに一息だな!」
「これなら帰りはあっという間かも……あ、あれ、あの明るいとこ! 人間の街だ!」
 実際空の月は素晴らしく大きく、雲も掴めそうなほど近く、クリスマスタウンのイルミネーションは見事なものでした。二人の小鬼の拙い手綱さばきは頼りないものでしたが、空飛ぶソリはなんとか無事に人間の街まで二人を送り届け、二人は眼下の光景に息を吐きました。それは感嘆というより無事に辿り着けた安堵を多く含むものでしたが、二人はお互いにそれを聞かなかったことにしました。
「よーし……じゃデュース、袋の中身、ばらまいちゃって」
「えっ……ぼ、僕が落とすのか?」
「だってデュースだと手綱締めすぎてトナカイのけぞらせちゃうじゃん。オレが御者台でルート指示、デュースが座席で落とす係。ね?」
「ね? じゃないだろ、せめて交代にしろ!」
「ええーっもしかしてデュースくん、怖いのぉー!? まぁしょーがないかぁー、このソリ今雲と同じくらい高いもんねぇー!? ジャックの家より高いんじゃ、怖くっても仕方ないかなぁー!?」
「バッ……誰がビビってるって!?」
 こうして無事プレゼントを落とす係をデュースに押しつけたエースでしたが、街中にプレゼントを落とすために度々下を確認して方向を指示しなければならないことにはまだ気付いていませんでした。
 こうしてハロウィンの夜、人間の街には、空飛ぶソリの上でぎゃあぎゃあ騒ぐ小鬼たちによるプレゼントの雨が降りました。

 なお、エースは「ハロウィンの王」が「サンディー・クローズ」を心から尊敬していることを知らなかったため、クリスマスタウンから知らせを受けて駆けつけた「ハロウィンの王」に、二人揃ってこっぴどく叱られたそうです。

◆◆◆

 さて、まだすべての準備を終えてはいなかったとはいえ、用意していたプレゼントのほとんどを一足先に配られてしまったクリスマスタウン。
 残り二ヶ月足らずですべてのプレゼントを用意しなければなりません。当然、住民達は大忙しになりました。
 そこで「ハロウィンの王」は、いたずらの償いを兼ねて、二人の小鬼をクリスマスタウンに派遣することにしました。「サンディ・クローズ」は少々ためらいましたが、住民達のあまりの忙しさに二人を受け入れました。たった二人ではありましたが、人手が増えるに越したことはありません。もっと言えば、他のハロウィンタウンの住人を受け入れない口実として、二人に弁償代わりの労働をさせることにしました。クリスマスリースを勝手にモンスターに改造されては困ってしまうので。
 二人は最初、クリスマスタウンの住人達ともめたり、道に迷ったり、喧嘩をしてものを壊したりして、ただでさえ忙しいクリスマスタウンをますます騒がしくしました。その度に「サンディ・クローズ」や「ハロウィンの王」に叱られ、反省するふりをしていたずらを仕掛け、失敗してまた叱られました。
 そして次第に、クリスマスタウンの住人達も、ハロウィンに一年のすべてを費やす自分たちと同じ気持ちを持っていることを理解しました。クリスマスタウンで過ごすことも慣れ、二人の性質を理解していった住人達の協力もあって、十二月に入った頃の二人は立派な「戦力」として数えられるようになりました。実際、エースは装飾品ややんちゃ盛りの男の子が好きそうな「探偵ひみつ道具セット」なんかを作るのが得意でしたし、力持ちのデュースはクリスマスタウンの誰より重い荷物を運べました。
 そうしてやってきた、十二月二十四日。クリスマスイブ。
 空飛ぶソリには、準備したプレゼントが山のように積まれていました。
「やったー!」
 疲れ切っていても大喜びの住人たちは、ソリの周りをくるくる回ってはしゃぎました。エースとデュースはそれに乗っかることもできず、力無く片方の拳を突き上げるだけでした。ここが建物の外で、凍えてしまうとしても、このまま眠ってしまいたい気持ちでいっぱいでした。
 その二人に近寄ってくる、大きな影がありました。「サンディ・クローズ」です。
「ホー、ホー、ホー。二人とも、よく頑張ってくれたね」
 返事もできない二人を抱き上げて、「サンディ・クローズ」はそっと御者台に乗せました。
「さて、ハロウィンタウンまで送っていってあげよう。その前に、しばらく空の旅に付き合ってもらうとするか」
 御者台に乗せられたエースとデュースは、その言葉にぱちっと目を開けました。
 翼も箒もない二人の小鬼にとって、空飛ぶソリに乗った経験は、今にも転げ落ちそうだったとしても、忘れられない思い出だったからです。

 果たしてその夜は、素晴らしいものになりました。
「すげぇ、すげぇぞエース! 街がきらきらしてる……!」
「前来たときはこんなんじゃなかったじゃん! クリスマスずるくねぇ!?」
「ホー、ホー、ホー。はしゃぎすぎて落ちるなよ、小鬼たち」
 御者台から身を乗り出した二人を、「サンディ・クローズ」はそっと押し戻します。
 クリスマスの夜間飛行は格別でした。空はきんと冷え、月と星はなお輝き、眼下の街のイルミネーションは眩いばかり。そしてそこに「サンディ・クローズ」がプレゼントを投げ入れると、きらきらと金粉の尾を描くプレゼントが、煙突や窓から子供達の枕元に滑り込んでいくのです。エースとデュースは前後左右を食い入るように見つめました。何より、「サンディ・クローズ」が御者台に座っていると、空飛ぶソリの安定感が違うのです。自分たちで操っていたときの、今にも宙に投げ出されてしまいそうなおぼつかなさは皆無で、まるで別の乗り物のようでした。なので二人は安心して、上から下まできらきらと輝くクリスマスの夜を満喫しました。
「なぁエース」
「どしたのデュース」
「……またこれが見られるなら、来年もクリスマスタウンに行ってやってもいいよな」
「んー……いたずら付き、二週間なら?」
「へぇ、いたずらアリでもごめんだって言うかと思った」
「だってハロウィンタウンに空飛ぶソリねーじゃん。博士に頼むとさ、ホラ……余計なオプションがつきそうっていうか……」
「ああ……」

 言い合っていた二人は、とうとう力尽きて、御者台で眠ってしまいました。プレゼントを配り終えた「サンディ・クローズ」は微笑むと、最後に残していた小さなプレゼントの箱ふたつを握らせて、ハロウィンタウンに進路を向けました。
「ホー、ホー、ホー。メリークリスマス!」

 なお、「自分たちでも空飛ぶソリが扱えるように練習しようぜ」と言い出したエースがデュースと共にクリスマスタウンへ出かけ、やっぱり二人揃って「サンディ・クローズ」と「ハロウィンの王」にこっぴどく叱られたそうです。

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