きらあこ♡オンパレード③~ずっと、ずうっと、だれよりも~

アイカツスターズ きらあこss。
アニメ、オンパレード23話でおこなわれた「アイカツオンパレード」2日目、四ツ星学園のステージで、どうやら早乙女あこちゃんがソロで「おねがいメリー」を歌ったそうなので、そのあれこれを書きました。


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 楽屋のドアを弾むように叩く音。それを聞いて、あこはくすっと笑った。どうぞと扉の向こうに声をかけると、勢いよく開いてピンクと水色のツートンカラーが飛び込んでくる。 
「あこちゃん~~!!」 
「思った通りですわ……」 
 きっとここに来るだろうと思っていた人物。そして予感が的中したことに〝嬉しくなっている〟ことに気付いて、あこは急に恥ずかしくなってしまった。一方、目の前の少女はキョトンとして首を傾げている。
「え?なぁにあこちゃん?思った通りって?」 「なっなんでもありませんわなんでも!ええっと、その、あなた見に来てくれていましたのね!!」
  誤魔化すように言うと、目の前の少女、花園きららはそのあこの言葉にぱぁっと顔を輝かせた。
「あったり前じゃん!アイカツオンパレードの2日目!四ツ星学園のみんなが大集合するめっちゃすごいイベントだよ!来ないわけないじゃん。ほんと~~にすっごく楽しかったぁ」
「ええ、ええ。楽しかったのは当たり前ですわ。あれだけたくさんの企画盛りだくさんの豪華ステージ、なかなかお目にかかれませんもの」 
「うん!特に白鳥ひめちゃんと神崎美月ちゃんのステージはすっごかったね」
「ええ、本当に……」 
 きららの言葉に、一瞬強く頷きかけたあこだったが、ものすごい記憶が甦ってきて、ふっと視線を反らした。
 確かにあのステージはものすごかったけれど、舞台裏では本当にどうなるのか分からず、寿命が縮まうような気持ちを味わったからだ。なにも知らない観客として見たいステーイだったな、と思った。
「それよりきらら、わたくしのステージはちゃんと見てくれていまして?相手役にツバサ先輩をお迎えした劇や、わたくしとゆめと小春と真昼とローラでのステージ、あれだってかなり力を入れていましたのよ」
「もっちろんだよ!あこちゃんはやっぱりとっても可愛いなって思ったよ♡」 
 可愛い、というところだけ急にワントーン甘い声で言われて胸がトクンと高鳴ってしまう。あこはうっすらと頬を赤らめたが、プルプルと首を振って気を取り直した。
「にゃ、にゃにを当たり前のことを言ってますの……わたくしが可愛いのは当然のことですわよ?というかそういうことではなくて、わたくしは劇での演技や5人ステージのダンスの一体感といった内容の話を」
  顔の前で人差し指を立てて、ビシッと言いかけたが、きららはまるで話を聞いていないように、にへらと笑った。
「ちょっとあなた、わたくしの話、聞いてますの!?」 
「えへへ。だってきらら、うれしくって」
「なんのことですの」
  へらへら顔で要領を得ない彼女の態度にムッとしながらも、きゅんと体温が上昇するのを自覚する。
「あこちゃんさ、さっき〝見に来てくれていましたのね〟って聞いたけど、実は知ってたよね?きららが見に来てたこと、それより前にちゃんと知ってたよね?」
「そそそそんなことありませんわよ、ししし知りませんでしたわ」
「ほんとう~~?」 
 くるんとした睫毛を疑わしげにピクピク動かしながら詰め寄られて、あこはタジタジになりながらもきららの身体を押し返す。 
「……な、なにが言いたいんですの」
「ふーん、そっかぁ。じゃあ、あこちゃんのおねがいメリーの時、大サビ前の歌詞のとこできららのこと見つめながら歌ってくれてるって思ったのは気のせいだったかぁ~」 
「にゃああああああああ!?!?ばっばかですのあなた!そんなこと……!自意識過剰ですわ!!!!」 
 顔を真っ赤にしながら否定するあこにきららはあくまでも冷静に、これ見よがしに唇を尖らせて言った。
 「そっかー。でもなー、すっごい心がこもってたと思ったのになー。あこちゃんの〝ずっとだいすきだから誰よりもそばにいてね〟は、きららじゃない人に向かって言ったってことかぁ。あーあ、ショックだなぁ」
「べ、べつにそういうわけでは……」
「じゃあやっぱりきららに歌ってくれてたんだ♡」 
 ハッと気が付いた時には、もう完全にきららのペースだった。かぁっと一気に顔が熱くなってくる。
「ていうかやっぱりきららが来てたこと知ってたんじゃん~」
「うるさいですわよ。まったくすぐ調子にのるんですから」
  フンと腕を組んでそっぽを向くと、華奢で柔らかい腕がぎゅっとあこの背中を抱きしめてくる。あったかくてあまくて、マシュマロの入ったホットミルクみたいなおんなのこ。ついつい意地を張ってしまう自分の心を溶かしていく。
  あのとき、いつもはふたりで歌っていたあの曲をひとりで歌ったあのとき、考えていたのはもちろん来てくれた大勢のファンのみんなのこと。
  それでもその中に、熱っぽく自分を見つめている瞳があれば、思わず魅入ってしまうのは必然で、彼女をいとおしく思う気持ちが溢れてくるのも自然なことで。
  特別に意識をしなくてもすんなりその気持ちはそのまま歌にのせることが出来た。

 〝ずっとだいすきだから誰よりもそばにいてね〟

 きららの腕が、ぎゅっときつく絡まってくる。
「ほんとはね、きらら、ちょっとヤキモチやいちゃった。あこちゃん歌ってる間、すっごくすっごく可愛くなってたの。誰にも見せてほしくなかった。でも、こんなにあこちゃんは可愛いんだぞって気持ちもあってね」
「……まったく、仕方ありませんわね」 
 あこの方も同じだけぎゅっとその背中を抱きしめる。

 できることなら、この先も、ずっと、ずうっと、誰よりもそばに。

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