12. ロゼ・ロワイヤル 乾杯(たたうら)
「「「かんぱーい!!!」」」
ガコン。と、木で出来たジョッキを合わせると、鈍い音が騒がしい店内に響いた。
本日は今日まで行われていた学園の学力考査の最終日。ってことで、結果はともかく解放感に身を軽くし、ともに戦った勉強仲間たちと打ち上げと相成ったわけだ。
俺のいる席には主に教える側に回っていたマゼルと、主に教えられる側だったドレクスラーがいる。別のテーブルでは同級生が思い思いに騒いでいる。
「いやー、おかげで今回もなんとかなりそうだぜ!」
バンバンと、一気にジョッキの中身を飲み干したドレクスラーが、お代わりを給仕に頼みながら俺の背中をたたく。いてぇよ。馬鹿力。
ドレクスラーも地頭は悪くないんだが、何分苦手意識が先立つのか、どうにもいくつかの科目は低空飛行をしている。
対するマゼルと言えば、苦手科目なしのオールラウンダー。全く持ってうらやましい限りだ。こっちは必死で暗記したり、理解してるっていうのに。
「でも本当にヴェルナーの教え方はわかりやすいよね」
ニコニコと笑顔でマゼルが言う。まぁ、前世からのアドバンテージなんてそれくらいしかないからな。あと、オタクとしてこの世界の歴史ってどちらかというと設定資料を読んでいるようで、結構楽しい。純文学が俺にとっては硬派ファンタジーみたいなもんだ。
「結果は三日後だったか」
「うげー、せっかくの場なんだから現実を思い出させるようなことするなよ」
「いや、赤点前提のお前が可笑しい」
嫌な顔をするドレクスラーに、こちらも苦笑い。赤点対策もしないといけないのかこれ? とりあえず記憶がはっきりしている明日にでも自己採点をさせよう。
そんなことを考えながら、目の前の肉料理を浚う。うん、ハーブの香りが肉臭さを消してて、歯ごたえもあって美味い。
「マゼル、これ美味いぞ」
「あ、うん。こっちも美味しいよ」
そう言ってマゼルがマッシュポテトの乗った皿をこちらに進める。大きなスプーンですくって自分の皿の上に。その横にドレクスラーがピラフっぽいものをよそってくれた。
ピラフっぽいって言っても米じゃなくて、なんていうんだろうな。これ。穀物っぽい何か。植物らしい。見た目はピラフだけど、味は甘じょっぱい。俺は脳と舌がバグる料理の一つ。まぁそこを気にしなければ結構うまい。
「ツェアフェルト~~。マジで助かったぜ!」
しばらくすると別のテーブルから移動してきた連中に絡まれる。すっかり出来上がっているのか、薄暗い店内でもわかるくらい顔が赤い。
「次もよろしく頼むぜ!」
「はぇよ!」
まず自分で頑張れ。といえば、酔っ払いはげらげら笑いながらドレクスラーに絡み、マゼルに絡み、また別のテーブルに。そうこうしているうちに他の連中も酔っぱらってきたので、お開きを宣言し、まとめて会計。代金は明日回収だ。
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