2023/11/16 11.キャラメレ アイル

 たまには人の作ったものを食おう。と、アイルまで来ました。しかしかといっていつもルールズと言うのも芸がない。たまには新規開拓でもしようとふらふらと路地を歩く。
 そこで見つけたのは自家製のケーキを売っているところだ。それもいわゆる生菓子系ではなくて、焼き菓子系。イートインもやっており、紅茶のいい香りがしてくる。ならばといそいそと中に入ってメニューを開く。マフィンやマドレーヌなどのほか、種類が多いのはパウンドケーキの模様。
 定番のチョコレート系やナッツ系のほか、果物が入っているものもあるが、目についたのは総菜系と言えばいいのか、甘くないタイプーーケークサレも結構種類が多い。
 せっかくだし、自分じゃ作らないだろうものを食べるか。と、胡桃とゴルゴンゾーラ、それと絶対美味しいとわかるど定番のサーモンとほうれん草、クリームチーズを頼んだ。紅茶はアーモンドの香りがするという本日おすすめの紅茶にした。ついでにベリー系のハーブティも頼む。
 ゴルゴンゾーラは青カビタイプのチーズで、多分同種のものだと一番有名だろうな。最初見た時は何だこれだと思ったが。同じ青カビチーズでもフランスのロックフォールに比べるとやや刺激は少ない印象。ロックフォールはロックフォールで、蜂蜜をかけて食べるとあのしょっぱさが癖になるんだが。
 ところでゴルゴンゾーラはいわゆる特定地域で作られたチーズにしかその名前が冠されないタイプなんだが、この世界だとどうなってるんだろうな?

「あとからお持ちしますか?」
「いや、二杯は精霊用だ」
「かしこまりました」

 精霊だからと言えば納得してもらえるのはありがたいな。数分後、温かな紅茶といい匂いのするケークサレが届いたところで白を呼び出し、ついでに黒をふところからずぼっと。

『な、なんだ?!』
『なんじゃ、また戦闘ではないではないか』

 むぎゅ、べしっと、白いのと黒いのに文句を言われつつ二匹をテーブルの上に。せっかくだし、と言えば、呆れたような眼をちらっとこちらに投げたもののすぐにあきらめたようにそれぞれカップに向かう。うむ、散々つき合わせた成果が出ておりますね!
 
『む、なんか変な臭いがするのじゃ』
『それ、カビてないか?』

 さすがと言うかなんというか。えぇ、まぁ、カビておりますね。胡桃の香ばしさと芳醇な甘みがちょうどいい。火が通っているせいか、思ったよりも青カビチーズ独自の刺激は少ない気がする。

「黒は、食べてみるか?」
『正気か?』

 小さく切り分けて差し出すと、黒の尻尾がぼわっとした。信じられないような視線を向けられてしまった。ダメか。白には正気を疑われる始末です。
 ならこっちを、と、サーモンとほうれん草を差し出す。こちらは遠慮なく食いついた。私も食べよう。……うん、間違いがない味だ。赤と緑と白で断面も綺麗だしな。
 紅茶も美味い。いい店を見つけたな。と、ぼわぼわになったままの黒の尻尾を撫でながらそう思うなりしました。

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喫茶店の話は、コミック1巻の書下ろし小説です(探した)

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