そうしてまた、君に溺れる

戦国BASARA・政宗×光秀
お題配布元:瞑目様


 さらさらと絹糸のように細くなめらかで美しい銀色を梳くように撫でる。指に絡まるそれはまるで女性のように柔らかく触り心地が良い。
「ふふ、くすぐったいですよ」
「Ahー、悪ぃ」
 くすぐったいと僅かに身をよじる光秀に言葉だけの謝罪をして、政宗はゆっくりと髪を梳くのを続ける。対する光秀も本気で止めて欲しいとは思ってないようで、特に抵抗もせず猫のように擦り寄る形で政宗に身を預けた。
 そんな光秀を見て政宗は愛おしそうに目を細め、彼を腕の中に収める。
 月の光を浴びて美しさを増す目の前の銀に政宗はそっと唇を落とす。この美しい銀が戦場で血に染まり、揺らめく様はどんな言葉を以てしても表しきれない美しさであろう。そう政宗は常々感じていた。
「──何を考えているのです?」
「お前のことをな」
「そう……ですか」
 言うと光秀は更に身を寄せ、甘えるように自身の顎を政宗の肩に乗せた。その姿があまりに可愛らしく、尚且つ普段の彼からは想像もできないような仕草だったため、思わず政宗は口元に笑みを浮かべる。
 常人では理解しがたい思考故に『死神』などと呼ばれ他者から恐れられる光秀だが、人間(ひと)であることに変わりはない。時には誰かを頼り、甘え、身を預けたりもする。その誰かが自分であるということに、政宗はこの上ない幸せと胸をも焦がす想いを感じた。
 愛しい、愛おしい。この想いが尽きる事はなく。髪に触れ、唇を重ね、抱き合うほどにこれ以上なく溺れ、更なる深みへとはまっていく。
 だからこそ何度でも欲しくなる。貪欲と言われようが、その全てを欲しいと願ってしまう。
「足りねぇな」
「……?」
「もっとお前が欲しい」
 そう耳元で囁き、白い首筋に赤い印を一つ付けてやれば、ぴくりと小さく体が揺れる。そのままゆっくりと体を布団に押し倒して唇を塞ぎ、先程と同じ言葉を口にする。
 まだ足りない。もっとお前を、お前の全てが欲しいと。
 まるで子供が駄々をこねるかのように。しかし確実に子供のそれよりも質の悪いわがまま。
「……しょうがないですね、あなたは」
 くすりと光秀は肩をすくめて笑い、自身の腕を政宗の背中へと回し、触れるだけの口付けをする。
 興醒めする程の言葉など要らない。言葉を交わさずとも、互いの想いは分かりきっている。
 あとはただ、共に夜の闇に溺れ、墜ちていけばいい。

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