友だち
カッコええな〜、て思われるにはあんましゃぺらんとけばええんかな、と子どもに言われてズッコケそうになった。
なんやここんとこ、いっちょ前に悩んでるみたいやな、と四草と一緒になって気にしてたけど、この一週間な~んも言わへんさかい、この草若ちゃんに話してみい、と思い切って聞いてみたらこれや。いきなり重い相談が来たで〜。
なんでやねん!!
大阪に暮らしてんねやぞ!!!
しゃべられへんでどないすんねん!!!
とかあんまグイグイ行くのもあかんて喜代美ちゃんから事前に釘差されてるからな。
優しい顔して、話したい事あんなら好きに話したらええで、て恵比寿顔をしてたらええねんな、こういうときは。
「そら大阪からどっか東京に引っ越しするとかなら、訛りからこうてくるアホがおるて聞くから、分からんでもないけど、……ガッコで友達と話したないんか?」
そもそも友達おらへんとか、まあそういう話とはちゃうやろな。四草と違て、頑固なとこないし、そこそこ社交的やし。
「そういう話とちゃうねん。」
そうかあ……したらなんや?
「もしかして、モテたいんか?」
それやったらオレの苦手分野やな、て思うけど、……まさかこの顔でモテへんてことあるんか?
「なんや、来年はチョコ一個くらい貰われへんかな~て思ったから。去年はほら、お父ちゃんにあげて、て言うのばっかやったん。ほんまは僕宛ての一個もなかったし。」
「……えっ、あれそうやったんか?」
「ちょっと見栄張ってみたんや。僕、なんや外やととっつきにくいて言われてまうねん。」
「ほんまかいな。」
「草若ちゃんには嘘は言わへんて。」
「にしても、長期計画やな〜。」
今はまだ秋やで。そもそも、チョコあんま好きとちゃうとか言うてたやん。
「『今から考えとかんとあっという間に来てしまうやん、来年。』て、昨日草若ちゃん言うてたやん。」
「そら、大人は仕事の計画とかあるからな……。」
四草がいつもの独演会やら何やらで、仕事で来年の予定埋まってんの見たら焦って来たからや、とか中々言われへんで。
しっかし、こっちに住んでんのに、なんで黙っといた方がええんや、とかオレの口から言うてもなあ~。草々のヤツも、あいつ、落語してへんときは、ホンマ知らん人には人見知りして、アッはい、とかしか言われへんくせにえらいモテてたし。
四草は四草で、女が勝手に貢いでくるとか言うけと、女相手の時はオレにやいやい言うてくるいつもの小姑モードにはなってへんやろな。
せやから、なんでそう思うんや、と聞くのは愚の骨頂ていうか。
まあかりんと食べや、と言って皿にザラザラと入れた貰いもんのかりんとをポリポリ齧ってたら、かりんと美味いなあ、とうちの可愛いおチビさんが呟いた。
「僕ほんまはチョコよりかりんととかどら焼きみたいなもんがええねん。チョコ入ったおもちとか…。」
知ってるしってる。
「それ別にバレンタイン、頑張らへんでもええんとちゃうか?」
「それはそれでスカして言われてまうねん。」
ああ〜……。モテる男への嫉妬てヤツか……。
「かと言って、煎餅のが好きやて言うのも、わざとらしいとか言うてくるかもしれへんし。そんなら黙っといたらええんと違うかな、て。」
「いや、そういうのも、逆にスカしてるて言われてまうからな。挨拶出来へん子は、嫌われるで。」
「あっ、そうかもしれへん!」
今気付いたんか〜い!!
「もしかして、今のて全部、男友達に好かれたいて話か?」
「それそれ! 僕な、お父ちゃんみたいになるより、オチコのおばちゃんみたいに長く付き合うていける友達が欲しいねん。」
……それはあれか、オレが四草の友達とはちゃうてことは分かっとる、てことなんか?
いや、まあオレも元々は兄弟子やし、友達とはちゃうけどな。
「そら、ええわ。気張りや。」
うん、と笑うてる子どもの顔見てたら、なんや四草にさっぱり似てへんなあ、と思うて、笑えて来た。
まあかりんと食べ、と言うと、僕、また別の手を考えてみるわ、と言って子どもはまだ可愛らしい短い指で、ちゃぶ台の真ん中にある菓子器に手を伸ばした。
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