ほかほか♡じゃNight ~きらあこちゃん 初めてのスーパー銭湯~

アイカツスターズ きらあこss
11/26はいい風呂の日だそうで、きらあこちゃんにスーパー銭湯に行ってほしくて書きました。
公衆の場で騒ぐな叫ぶないちゃこらするな。スーパー銭湯ではマナーを守りましょう……


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「あこちゃん、ハダカの付き合いしよ♡」
 きららがそう言ってきたから、その時は思わず殴ってしまったのですけれど、違うよあこちゃん、これだよこれ~! なんて必死に言ってきましたから、何かと思って見て見ましたら、チケットが2枚きららの手元にありましたわ。スタジオから少し行ったところにあるスーパー銭湯の割引券でしたの。年末に向けて、ラジオ、音楽番組用のスペシャルステージ、バラエティ特番と、色んな収録をこなさなければならない日でしたから、収録後にサッパリと汗を流したくないかと言われれば嘘というもの。せっかく割引券もあることですし、きららに付き合ってあげることにしましたの。
 でもわたくし、実はスーパー銭湯なんて初めてでしたから、結構ドキドキしていましたのよ。まぁそのへんは、きららに任せようと思っていましたのに、実はあのこも初めてだって言うんですの。割引券はNVAのクラスメイトか誰かからもらったそうですわ。
「あこちゃんも初めてなんだ?」なんて言われて言葉に詰まっていましたら、「そしたらふたりで初体験だね♡」なんて言ってきたので、殴ってやりましたけれど(往来でそんなワードチョイスするんじゃありませんわ!)。
 早速噂のスーパー銭湯にやってきたわけですけれど、入ると靴箱があって、靴を入れて付属の鍵を閉めてたっら、その鍵をフロントに預けるようですわ。それとは別にロッカーの鍵をもらって脱衣所へ。ロッカーの鍵はリストバンド状になっていて、バーコードも付いていますの。これで館内の自動販売機やオプションサービスの利用すると記録が残って最後に一括で清算する仕組みですのね。なるほどなと思いましたわ。何かわたくし達のライブやイベントの時なんかに応用できないかしら。ファンの方たちにお待ちいただく時間を減らせるようなシステムを……。
 ぼんやり考えながら服を脱いでいましたら、隣から視線を感じましたわ。
「きらら、なんですの?」
 ぎろりと睨みつけてやりましたけれど、きららはもう慣れっこだという風で、まったくムカつきますわね。
「なにって、あこちゃんの背中、やっぱりきれいだなって思って♡」
 当たり前のことのようにそんなことを言ってきましたから、もちろん殴ってやりましたわ。いいからあなたも早く入浴の準備をしなさいな! と言いましたら、あのこ、もう早々に服は脱いでしまっていて、お風呂セットもばっちり手に持っていましたの。
「あこちゃん早くぅ」
「うるさいですわよ、もう、すぐ準備いたしますからおとなしくしてなさいな!」
 準備が整ったので、ふたりで大浴場の方に向かいましたけれど、いくら女性用の脱衣所で、向かう場所も女湯だからって、きらら、あなた恥じらいがなさすぎませんこと? すっぽんぽんでスタスタ歩いていくあのこの後ろを、わたくしはタオルで身体の前を隠しながら慌てて着いていきましたわ。
「わ~! すっごいおおきなお風呂~♡プールみたいだね、あこちゃん!」
 きららが一直線に湯舟に向かおうとしましたから慌てて止めましたわ。わたくしもスーパー銭湯は初めてですけれど、お風呂のマナーくらいは当然分かりますもの。大浴場の入口すぐのところにあった掛け湯コーナーで掛け湯について教えましたの。それから身体を洗ってから入ること、プールではないから泳がないこと、そういった基本のマナーも合わせて教えましたわ。まったく、わたくしがいなかったらどうなっていたことか。
 平日といえど、夕方ですから少し混み合っていましたわ。ちょうど一番奥の洗い場がふたつ空きましたから、そちらを使うことにしたんですの。
 蛇口は捻るタイプではなくて、押すと一定量のお湯が出てくるタイプ。 
「ほら、これを押すと下の蛇口からお湯が出てきますから、ここに洗面器を置きますでしょう?」
「おお~! さっきから思ってたけど、あこちゃん初めてなのによく知ってるね?」
「スーパー銭湯は初めてですけれど、お風呂ならあなたよりは詳しいですわよ? NVAのバスルームは西洋式なんですの?」
「基本はそうだよ。シャワーで済ませちゃうんだ。でも世界各国の色んなアイドルがいるから、実は色んな国のお風呂もあるみたい。日本式のもあるし北欧のサウナとかも。あんまり時間もないし入り方がよく分かんなかったから、これまではずっとシャワーで済ませてきたけど、これからは日本式のお風呂にも入ろうかな~」
 きららが本当に嬉しそうに言うのでわたくしも何だか嬉しくなってきましたわ。教えた甲斐がありますわね。これから寒くなりますから、日本のお風呂は本当にいいですわよ、なんて言ってやりながら二人で並んで座って身体を洗おうとしたら、きららがこれ、なに?と首を傾げましたの。
「丸いやつ、ふたつあるけど、こっちは下の蛇口から出るんでしょ?そしたら上にあるこっちの丸は」
「そんなの、上にあるんですからお湯も上から出てくるに決まって――……」
 わたくしが言い終わるよりも先にきららは、そっかぁ~、なんて言って上の方の丸い蛇口をえいっとプッシュしてしまったんですの。なにが問題ってちょうど運悪くシャワーヘッドが思いっきりこちら側に向けられて置かれていたことですわ!おかげでシャワーのお湯がブシャァと吠えたと思えば、わたくしの顔にそれが直撃しましたの!!!!
 ちょっときらら!! あなたなに爆笑してるんですの!?!? 一応温度設定はお湯のメモリに合わせてありましたけど、出始めですから水でしたわ!?!? それがいきなりかかって、わたくし心臓が縮み上がりましたわよ!! おまけに水が目にも鼻にも入ってめちゃくちゃ痛いですわ!!!! っていうか蛇口押した瞬間、あなた一瞬こっち見ましたわよね!? こうなることちょっとわかってたでしょう!? 許しませんわよ!?!? シャーッ!!!!!
 はぁ。まったく酷い目に遭いましたわ……。
 顔を押さえながら溜息をついていると、あこちゃんほんとにごめんねなんて急に真剣な顔をしてタオルで顔を拭いてくれるきらら。すぐにちゃんと謝るところはまぁきららのいいところですわね。
 そういえばこのタオル、知ってますわ。この施設内でも有料でタオルは購入できますけれど、これはきららが自分で持ってきたお気に入りですわね。なんだかきららの匂いがいっぱいで、安心して気持ちが落ち着いて……。
 まったく、呆れたり恥ずかしくなったり怒ったり、かと思えば安心させられたり。きららといるとわたくし振り回されっぱなしですわね。
 ボディーソープをふわふわに泡立てて、ふわもこだって言ったり、背中を流し合いっこしたり、何だかんだ身体を洗うのもそれなりに楽しかったですけれど、お風呂にきたからにはやっぱり湯舟に浸かってナンボ!ってやつですわ。
 こちらのスーパー銭湯はとてもたくさんの種類のお風呂がありますの。まずは一番手前のオーソドックスな内風呂に入って身体を温めて。好奇心旺盛なきららはすぐにジェットバスや電気風呂に興味を示して色々試しに行きましたわ。わたくしは断然美肌効果の高いアルカリ泉やシルク風呂なんかでリラックス。やっぱりお風呂はいいですわね。
 だんだん熱くなってきたので、露天風呂の方にも行ってみましたわ。露天湯の方は、内湯と違って熱がこもらない分、長く浸かっていられるのがいいところ。外に出て正面にある大きめの湯舟は、浸かりながらテレビも見られるんですのね!ツバサ先輩が出演しているドラマがやっていて、みんな釘付けですわ。かなり熱い温度のお風呂や、寝そべって入れるぬるめのお風呂なんかもあって、色々入ってみたくなりますわ。
 あら、なんですの? 大きな壺のような形。これもお風呂なんですのね!?面白いですわ!ちょうど一人入るくらいのサイズ。なんていうのかしら、時代劇なんかで出てくる五右衛門風呂みたいなものですわね。もちろん薪をたくようなものではありませんけれど。せっかくですから入ってやりますわ。
 ……これ、いい感じですわね。お風呂をひとりじめしている感じと言うのがいいのか……。広いお風呂で思いっきり手足を伸ばすのとは違って、小さくて狭いのに、なんだか居心地がいいですわね。実家にも一つ欲しいですわ。
「あこちゃんここにいたんだ~♡」
「にゃあ!? きらら!?!?」
 ほっと息をついていたら、いきなりきららがこちらに入ってきましたの!
「ちょ、ちょっとあなた!! 入ってこないでくださる!?」
「え~? あこちゃんもきららもちゃんとアイカツしてスリムなんだし、全然へーきだって!」
「そそそういう問題ではなくて!」
「じゃあどういう問題?」
 どういうもこういうも、なんでそんなに密着してきますのよ!? 脇腹を撫でるのをおやめなさい! 手つきが! 手つきが破廉恥ですわ!!!!
「あこちゃんのお肌すべすべだねぇ♡」
「にゃっにゃにゃにゃあああああ!?!? ど、どこを触って……!!!!!」
「あこちゃん、あんまり騒いじゃ迷惑だよ?」
「あ、あなたのせいじゃありませんの! こ、こんなところでにゃにを……!!」
「ちょっとー、ちゃんと温まってから出ないとだめだよあこちゃん!」
 壺みたいなお風呂を抜け出そうとすると、きららにぎゅっと肩を掴まれてしまいましたの。まともなことを言っているようですけれど、あなた、どさくさに紛れてわたくしの背中に、その、キキキ、キス、しましたわね!? まったく、本当に何を考えているんですの! 信じられませんわ……。
 しかもさっきからやけに腕に柔らかい感触が、と思っていましたけれど、ちょっときらら!! あなたわざと胸を当ててるんじゃありませんの!? おおおやめなさいなっ!!
 向こうのテレビ画面では刑事役のツバサ先輩が、事件現場の校舎裏に戻ってきた犯人を見つけるところでしたけれど、タイミングよく『そこで何をしている!』だなんてセリフが聞こえて、ビクッとしてしまいましたわ。
 わ、わたくしだってこんなところでこんなことになるつもりじゃありませんでしたのに……。
 そうですわよ、こういうのはほら、例えば山奥の老舗の温泉旅館、露天風呂付きの部屋風呂で二人だけの時間をしっぽりと……ってわたくしなに考えてるんですの!? ちちちちがいますわよ!? そんなの、そんなこと、わたくしは――……
「……こちゃん!?あこちゃん大丈夫!?ねえあこちゃん!?」
 どこかできららが呼ぶような声がして、そこで記憶が途切れて……。

 どうなったかと言えば、すっかりのぼせてしまって、スタッフの方にお世話になってしまうという最低最悪な事態でしたわ。幸い、素早く対応してくださったおかげで、少し休んだらだいぶ良くなりましたけれど。水分補給など色々な処置をしてくださって、随分回復して、先程スタッフの方もこの休憩室を出ていかれたので、今ここにいるのはわたくしときららだけ。
 それにしたって恥ずかしいったらありませんわ。だってお風呂でのぼせて倒れるだなんて、たくさんのひとにハダカを見られてしまったということですし。すぐにバスタオルをかけて下さったりしては頂いたようですけれど、それでも、ねえ?
 まったく、きららのせいでほんとうに、最悪ですわと言ってやりたいところですけれど。
 ぎゅっと離してくれない手の方に視線をやると、もう大丈夫だって言っていますのに、丸っこい目はまだ泣きそうに揺れていて。
「あこちゃん、ごめんねぇ。きらら、調子にのってた。あこちゃんといっぱいくっつけるのが嬉しくて、肌と肌でぴったりくっつけて、すごくしあわせになっちゃって、あこちゃんのこと考えれてなかったの……ぐすっ」
 握ってくる指先にぎゅっと力がこめられてきて、なぜだか胸の奥がきゅうっとなってきましたの。
「だからもういいって言ってるでしょう? まったく仕方ないですわね」
 そう言って、起き上がってきららに向き合って、優しく頭を撫でてやりましたわ。入浴前にほどかれた髪はじっとりと生暖かくて半乾き。浴室からわたくしが運ばれるときから、ずっとわたくしに付き添っていてくれて、ちゃんと乾かしもしていないんですのね。風邪をひいたらどうするんですの。
「まったく、あなたのおかげでとんだスーパー銭湯体験になってしまいましたけれど、まぁまた一緒に来てあげないこともないですわ」
「あこちゃん~~~~!!」
「ちょっと! 急に抱き着かないでくださる!? まったく、しかたありませんわね!」
 そのあと、館内の大きな自動販売機で売っていた瓶のコーヒー牛乳を一緒に飲んでから、ゆっくり歩きながら帰りましたの。
 そのときもずっと手を繋いでいてくれたのが嬉しかっただなんて、絶対言ってやりませんけれど。
 それがわたくしの、わたくし達の初めてのスーパー銭湯体験でしたわ。

 みなさまも、いくらスーパー銭湯が楽しくて、あったかくていい気持ちでも、のぼせないようにしっかり水分補給して、加減をしながら入るんですのよ?分かりましたわね?

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