第54回 #新ゲワンドロ
白、赤、黄色。色とりどりの梅の花がかわいらしく咲いている。
桜の華やかさにはかなわないが、つつましやかともいえる佇まいはそれはそれで日本人の心に響きます。
「まぁ、黄梅は梅じゃないんですが」
「え、そうなのか?」
「たしか?」
「梅はバラ科、黄梅はモクセイ科だったかな?」
「へー」
「知らんかった」
シンとレオが感心したように声を上げた。私も知った時はびっくりしました。
「これ全部、梅が生るのか?」
「いや、実が付くのはまた別の種類だけど……あー、ここでも同じですね」
シンの質問に【鑑定】して答える。どうやらここ一帯の梅は観賞用のものだけらしい。
ちなみに梅の実はもちろんだが、黄梅の花も生薬になるので【採取】でちょいちょい集めております。
「それで、ここに謎の魔物が出るんでし?」
菊姫が軌道修正するように尋ねる。そうでした。ここに来たのはシーズナルミニクエストを受注したからでした。
空飛ぶ謎の魔物。触手っぽいものが生えているらしいが、いったいどんな魔物だろうか。
「空飛ぶ触手……スパゲッティ?」
「ここの運営ならやりかねないでし」
|FSM《空飛ぶスパゲッティ・モンスター教》のことはひとまず置いておきつつ、梅の枝の間から空を見上げる。
「あれ、あれじゃねぇ?!」
最初に見つけたのはレオだった。指さす方に視線を向ける。そこにいたのは、空に浮かぶ梅の木だった。
「空飛ぶ、梅?」
「飛梅ってこういうことじゃないでし!!!」
そういえば梅にはそういう逸話がありましたね!
ちなみに小梅の青梅を散弾銃の様に飛ばしてきて、当たると微妙な毒を受けるという実に小賢しい攻撃をしてきました。
「そう言えば、青梅って毒あるんだっけ?」
「胃の中で青酸カリができるらしいよ。ちなみに死ぬには100個以上食べないとダメらしいけど」
「トマトよりは強いのか」
なんとか倒し終える。ドロップは『飛び小梅』とレアドロップは『飛び小梅の苗』だった。こちらはどうやら実が付くタイプのようなので、後で庭に植えよう。ドロップしたのが私の他はレオとシンだったので、それぞれわたしとペテロがシルで交換する。
「庭に植えるのか」
「まぁ、薬のもとにもなるしね」
ちなみに帰る前に飛梅からの連想で梅が枝もちを食べつつ花見をしてから帰りました。この後で扶桑に行って紅梅にでも会いに行こうかな。
powered by 小説執筆ツール「arei」
97 回読まれています