2024/03/24 ワンドロ 楽器演奏

「私 音楽家 山の仔栗鼠~上手にッバイオリンッ、弾いてみッまッしょう」

 ――ぎゅぎゅぎゅぎゅ~~ キィィィ~~~

「やめろやめろ!!」
「耳、耳が!!!」
「いかがです、じゃねぇんだわ、でし!」

 はい。というわけで本日は音楽イベントに参加しております。その名も「山の動物たちの音楽会」です。山に住む動物タイプの精霊、いや幻獣かな? に音楽会に招待され、そこで一曲披露し、うまくできたらアイテムをもらえたり好感度が上がったりするわけなんだが……うん。
 菊姫がキャラを投げ捨てて怒鳴っているあたりで察してほしい。

「なんでバイオリンなんて選んだの」
「いやぁ、一度弾いてみたくてよぉ」
「まさかの未経験」

 お茶漬の言葉にシンが頭を掻きながら答え、その答えにペテロが白い眼差しを向ける。通常営業です。

「もう、全員で童謡を歌う? 伴奏なしで」
「えっ!?」
「ホムラが無理でし」
「無理だな」

 お茶漬の言葉に思わず声を上げてしまう。視線が突き刺さるのに、菊姫とレオが答えた。えぇ、まぁ、高校の合唱祭でさんざん足を引っ張ったのを知られていますからね。ただでさえ歌は苦手なのに、伴奏なしとか難易度ナイトメアですよ。

「てかホムラ、【神聖魔法】 あったよね?」

 たしか『聖歌』って実際歌わないとダメなんじゃなかったっけ? と、お茶漬に言われるが、無理なものは無理。一生使わない覚悟を決めた魔法の一つですよ? なお、同率一位が同じく【神聖魔法】 Lv25の『回復』です。なんだ、【神聖魔法】 は地雷原か?

「ちなみに音感ではなくリズム音痴なので、楽器演奏もちょっと」

 イベントは私抜きでいってきてくれ。私はあとで一人で恥をかいてくる。と言って送り出した。なお、五人はまじで「もりのおんがくか」を歌って、拍手喝さいを貰ったとのこと。よかったですね~。




「で、結局どうやってクリアしたの?」

 ペテロの庭にある庵で聞かれました。その手には本日の夕食の新タマネギと厚揚げの生姜焼き。厚揚げはペテロ提供。美味しい豆腐屋を見つけたらしい。
 最後に副菜のニンジンと青じその味噌胡麻マヨサラダの小鉢を渡しため息をつく。

「差し入れという形で料理を持っていきました」

 それでも歌えと言われたので、「おべんとうばこのうた」をうたって場をごまかしましたよ。
 困った時の【料理】スキル。それでもどうにもならんかったんで、リズムあまり関係ない身振り手振りで何とかなるものをチョイスしました。そう言った私にペテロが首をかしげる。

「おべんとうばこのうた……」
「今どきの子供って、フキって食べるのか?」
「あーーー、あれか! これっくらいの!」

 そうそれです。両手を対称に動かして四角を作ったペテロが噴出した。そのままひーひーと床にひっくり返ったペテロに天井を見上げる私。虚ろな目をしているのは自分でもわかる。もちろん、歌の終わりとともに出来上がった歌の内容と同じお弁当を配ったので盛り上がりましたとも! 多少の歌のリズムの悪さは誤魔化されたと思いたい!

「結構地味だよね、お弁当の内容」
「まぁな。20世紀の歌だし」

 ニンジンを花の飾り切りにしたり、椎茸にも包丁を入れた。サクランボはゼリー寄せにしたり、おにぎりを刻み生姜を|とさか《・・・》にしたニワトリやゴマ塩を針に見立てたハリネズミにしたりしたんだが、いかんせん地味です! まぁ肉を使わないのは精霊ウケがよかった。おかげで最高評価を盛られましたよ!

「あぁ、肉ダメなんだっけ、もしかしてこれ」
「厚揚げ以外は余った食材です」
「ぶほっ!」

 なんかツボに入ったらしくまたひっくり返るペテロ。もう思う存分笑ってくれ。

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ワンドロお題:楽器を演奏する。
演奏してないな。歌ってるなw

やまのおんがくか(Ich bin ein Musikante) 作詞:水田詩仙 作曲:ドイツ民謡
おべんとうばこのうた 作詞:香山美子、作曲:小森昭宏

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