寝息


え、これ何や……?
昼寝しよと思って布団の中に引っ込んでたら、気づいたらなんや背中がぬくいていうか。
羽交い締め……とはちゃうな……寝息みたいなもんが聞こえて来るし。
まあ寝てんのなら、オレやのうて、このぬくぬくの布団とよろしくやっててくれな、と腕外そうとしたら逆にぎゅっぎゅに腹のとこに巻き付いて来た。
あきません、という声が後ろから聞こえてきて……おい、なんや当たっとるぞ、コレ。
もしかして、さっきからすうすう聞こえて来てんのも、寝息とちゃうかったんか?
吸われてる……?

「おい、しぃ、」
今日はまだシャワー浴びてへんぞオレ……。
「久しぶりに帰って来たんやから、そんなはよ出て行かんかてええでしょう。」と年上の男の声がした。
久しぶりて、一昨日も四日前も、朝飯とかで、顔は見てるやんか。
そらまあ、お互い部屋戻って来ても寝てるし、チューとかはしばらくしてへんけど……。
「もう夕飯の時間やぞ、」
「あと五分こないしててください。」
そやから、その後五分が待てんのやて。
朝から曇ってて暗かったから分からんやろうけど、もう暗いし、オレも便所とか行きたいし、歯ァも磨きたいし、たまにはチューしたいし……。
「あと五分でええです。」と言って首の裏に冷たい鼻先がくっついて来た。
こいつも大概しつっこいなあ……。
まあ、そのくらいなら別に、待ったってもええけど。
ええで、と口を開こうとしたら、すうすうと音が聞こえて来て、腹のとこに回ってた腕の力が妙に緩んで来た。

……なんや?
振り返ったら、ほんまのほんまの寝息やった。

ここで寝んのかい!!!
お前は!!!
ほんまに!!!
倉沢忍のアホ。ドアホ、こっちのこと期待させといて、なんやねん、もう!!!

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