どちらにしても罰ゲーム

本日のラハ光(マル子)

黄金7.0のどこか、とりあえずまだ前半部分。
付き合ってる。
イチャイチャしてるのを書きたかっただけ。

気のせいか、大元やどらてんやビルダーズや覚醒の時より、マル子の精神年齢と知能指数が下がっている気がする……(バトルジャンキー度はマシマシ)



■



 ウクラマト王女の協力者としてマルエラと、アルフィノとアリゼー、そしてクルルがトラル大陸へと同行することが決定して。
 皆それぞれに準備を整えるべく解散していく中、マルエラがオレの方にちょこちょこと寄ってきた。

「どうした?」
「ざっくりでいいんだけどさ」
「うん?」
「ラハって、何時頃に仕事を切り上げて、何時頃に寝る?」

 こてん、と妙に子供っぽい仕草で首を傾げて問われ、思わずオレも首を傾げる。
 いや別に隠すような事じゃないんだが、なんで唐突にそんな事を聞くのかと。
 疑問に思っているのが顔に出たようで、マルエラは頭の位置を正して、何やら難しそうなというか、心配そうな顔になる。

「ほら、クルるんが今回私達に同行するじゃん。ラハの過重労働を唯一窘めてブレーキかけてくれそうなクルるんが」
「過重労働」
「他の委員会の人達もいるけどさあ、なんか小言を言う人が居ない事を幸いと、夜更かし読書やオーバーワークをしそうで」
「いやそんなことは」
「しないって断言出来る?」
「ここぞとばかりみたいな感じではしないぞ」
「ええー、ホントにござるかぁー?」
「そんなに信用無いか……?」
「信用されるような経緯が無いんだよ」

 そんな、……そんなか? まるで保護者が外出した後の子供みたいな行動をするように思われているのか?
 確かに、本や書類の整理に夢中になって、気が付いたら朝になってる事は、たまに、たまーーーに無い事はないけども。
 クルルにその辺にしておきなさい、って無理やり切り上げさせられることはあるけども。
 いやまあ、昔はライナを筆頭にしょっちゅう働き過ぎですと怒られはしたが、あの時はそれが特に問題無かったし、今はちゃんと疲労も眠気も感じるから、きちんとしてる筈、なんだが。

「なので、勤務終了時刻と就寝時刻を申告して下さい。もし事情があって大きな変動や夜勤の時は早めに申請してください」
「いや、なんでそれをアンタにするんだ」
「ちゃんと人間として健康的な生活してるか、私が定期的に連絡してチェックします」

 えへん、とマルエラが胸を張る。
 何を言っているのか、きちんと理解するのに、うっかり数秒かけたと思う。
 ……それは、なんだ。
 つまり、トラルに行っても、頻繁にオレに連絡を入れてくれる……って事か?

「それは、その、アンタの負担になるんじゃ」
「ん-、のっぴきならない状況中だったら、そりゃあスキップするけど。というか、流石に毎晩だとウザすぎるだろうから、そこは……」
「ウザくない! アンタが大丈夫なら毎日でも話したい!」

 思わず、がしっと両手を取って力説してしまった。
 それにマルエラがぴゃっと驚いたように小さく跳ねたが、振りほどいたりはせずに大人しかった。それどころか、照れたようにほんのり頬を染めている。可愛い。

「そ、そんなコトしてたら、私うっかりラハにネタバレ食らわしちゃうぞ」
「ネタバレ……?」
「トラル大陸のネタバレ。そのうちラハもトラルに冒険行くってなった時、先に知ってたら勿体ないじゃん。現地で解説とかしようと思ってるのに」
「一緒に行ってくれる気なのか?」
「……行きたくない?」
「行きたい!」

 正直言えば、オレも同行したい。アンタの隣で、未知の地を踏み締め冒険したい。
 ……だが、まだバルデシオン委員会は再立ち上げしたばかり。責任者であるクルルがそちらへ行く以上、留守を預かる人間が必要だ。
 きっとこの旅は、クルルにとって、とても重要で大切な物になる。だから、オレはこちらに残る。
 そう決めたけど。マルエラも特に否は言わなかったけど。
 本当は一緒に行きたかったのは同じなのだと表明されて、喜びを感じないわけがない。

「ネタバレは気にしなくていい。むしろ、アンタがトラルで見たものや感じたこと、いっぱい聞かせてくれ」
「えー、でも」
「話に聞くのと、実際見るのじゃ違うしさ。後からあの時どうこうって聞くのもいいけど、まだ新しい感情を聞くのも楽しそうだろ? それに、実際に行ってアンタの思い出の場所だと思うだけで、きっとオレは感動出来る」
「……しそう。ホント、ラハは英雄大好きだなあ」

 書物や口伝で知ったことを、実際に見た時の感動は、決して初見の感動に劣るものじゃないと思う。
 勿論、この目でアンタの活躍を見られたら、それが一番だけれども。
 相変わらずの英雄オタクめ、とにひにひ笑われる。……その面は確かにあるかもだけど、それだけじゃないんだが。

「英雄は好きだけど、オレが好きなのは」
「あーーーー恥ずかしいセリフ言わない言わない! そもそも! もしもしミンフィリアならぬもしもしマルエラするのは、ラハのぐだぐだ生活リズムを監視するためだから!」
「っはは、そうだったな。監視連絡待ってるよ」
「ちゃんとしてなかったら、罰ゲームだかんね!」
「それって、どんな?」
「んー……、……次会った時に接近禁止。ぎゅーもちゅーもだめ」
「それは厳しい……」

 きっと長くなるだろう冒険期間に対して、罰ゲームが厳しすぎないか……?
 それだけ、オレの心配をしてくれてるってことか。心配もだが、信用がないってことかもしれないが。
 なんにせよ、頻繁に連絡をしてくれるって言うなら、きっと会えない寂しさも少しは紛らわせてくれる。
 照れ隠しにぷくぷく頬を膨らます可愛い恋人を見ながら、そんな風にオレは思った。



■



 皆が出発した後、流石に航海中の連絡は無かったが、トラル大陸に着いたらしいその晩には、本当にリンクパールが鳴った。
 最早その移動期間すらもちょっとした冒険になっていたが。『リヴァイアサンやビスマルクと戦った経験が生きた』と自慢げだった。まあ普通の冒険者は防壁発生装置の発動タイミングを知ることなんてないだろうな。
 その後も頻繁に夜、連絡をしてきてくれた。
 トライヨラで食べた美味しいものから、天に届くような山を見上げたこと。初めて見る可愛い生き物や、逆に思いがけないエオルゼアとの共通点なんかも。

『それでさ、黄金のアルパカとか連れてきてさぁ! どこにいたんよそんなの! マジ有能だよねあのお兄さん! 腕っぷし強いらしいしどっかで直接対決のターン無いかなあ! 戦ってみたいな、あのあれあのなんだっけ名前わかんない、なんとかジャ王子さん』
「マムージャ族はみんな最後にジャがついてるだろ」
『それな、おかげで覚えらんない! マムージャ族のお名前わかりづらい! あっでも王様の名前はわかるよ、グルジャジャ様だよ!』
「正確にはグルージャジャ王だな? 大丈夫か? 自分の雇い主の名前は覚えてるか?」
『それは大丈夫だよ、ウクラマト王女さんだよ!』
「マムージャ族じゃない方のお兄さんは?」
『忘れた! メガネ兄さん!』
「正解はコーナ王子だな。で、マムージャ族の方がゾラージャ王子だ」
『ええーー、私より覚えてるぅ!』

 馴染みがなくて覚えられない、とマルエラは言うが。
 実際のところ、彼女の記憶はかなり友好度に左右されるようだ。
 本人は無自覚らしいが、懐に入れた相手のことはきちんと覚えているし、そうでない相手の名前はあっという間にあやふやになる。
 要するに、ウクラマト王女はきちんと仲間と認識しているが、競争相手の二人の兄はほんのり敵認定なんだろうな。
 そして、もう一人の競争相手は恐らく印象最悪であり、当人が顔を出すかこちらから尋ねない限りは現時点で存在自体を忘れてるだろう。
 少なくとも自陣営の関係は良好なのが伺えて、何よりだ。

『おっとそろそろスヤスヤタイムだ』
「そうだな」
『お休みー、ちゃんと寝るんだよ』
「ああ、お休み」
『フリじゃないかんね? ちゃんとお布団で寝るんだよ? あっ布団で本読み出すのもダメだからね』
「分かってるって。そっちも、しっかり休んでくれよ」

 慣れない場所であれそれ駆け回ってるんだ。疲れはしっかり取ってほしい。
 まあ、彼女は熟練の冒険者だ。休むべき時にしっかり休む重要性も、見知らぬ土地で眠る肝の太さも持ち合わせているだろうから、言うまでもないだろうけど。
 リンクパールの通信が切れて、座っていた椅子を立ち、きちんと約束通り眠るべくベッドに向かおうとして、ふと。

「……そういえば、あの本の貸出期限って、明日だったよな」

 思い出してしまった。
 大書院から借りてきて、まだ半ばまでしか読めていない本が、一冊。
 一瞬、思考する。
 大人しく今夜は寝て、明日再貸出もしくは期限延長の手続きをするか。
 でなければ、今夜のうちに読み切ってしまうか。
 ……七割がたは読んでいたはずだ。残り三割程度なら、日付が変わる前に読み切れるだろう。
 うん、この位なら夜更かしにも入らないし、明日の手間も減る。
 一つ頷き、借りていた本を手に取る。そのまま頁を捲り、文字を目で追う。
 そうして、本の内容に没頭し始めて、しばし。

「夜に寝ない子は……」
「え?」
「誰じゃあぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁ?!」

 唐突に背後で湧いた声に顔を上げた次の瞬間、怒声に本気で驚いて悲鳴を上げてしまった。
 いや、夜中にこれは割と真面目に迷惑行為だ。明日謝らないと。
 さておいて、読んでいた本を取り落とし、ばっと背後を振り返ると。
 ……そこには、眉を吊り上げ仁王立ちの体勢の、青い髪の英雄がいた。

「な、な、な、なんでここに?!」
「いや、シャーレアンに留学してたあのメガネ兄さんが結構技術持ち帰ってるらしくてさ。向こうにもエーテライトがあるんだわ」
「ああ、普通にテレポが使えるのか……。だとしても結構な金額になるんじゃ」
「たかだか数回のテレポ代くらい、気にならん程度には稼いでますよ私は」

 転移魔法の利用は便利な反面、魔法適性が必要だし、何よりかなり高い。
 他の移動手段……例えば船を使うのに比べたら10倍か、はたまた100倍か。
 それを躊躇わない程度には稼いでる、とは……うん、まあ、それはそうだろうな。
 初めての場所に行くには徒歩や船を利用するにしても、既知の場所の行き来を手軽にしてしまうのは、不思議じゃない。

「いや、オレが聞いたのは『どうやって』じゃなくて、『どうして』なんだが」

 聞きたいのは、手段ではなく目的だ。
 さっき、確かに『お休み』と寝る前の挨拶をして通話を切った。
 現在マルエラはウクラマト王女と同行中で、謂わば仕事中。
 夜襲がかかる旅では無いだろうが、夜にちょっと抜け出す、と言うには度が過ぎて無いか?
 問うと、仁王立ち体勢で胸を張っていた彼女はぱちりと目を瞬かせて。
 それから、ちょっと気まずそうに視線を逸らした。

「いや、それは、その、……なんとなく、急に、こう、……ちょ、ちょっとだけ、ラハの尻尾をふわふわしたいなあ……って……」

 仁王立ちも解除され、もじもじと両手の指先を触れ合わせて、照れくさそうに言う姿に頭が破裂しそうになった。
 いや、可愛いんだが。気にならないとは言うが、かなりの高値になるテレポ代を出してでも、オレに甘えたかったと?
 普段勢いと能天気と破天荒の擬人化みたいな人だからこそ、たまに見せるこういう様子の破壊力がデカい。
 恋仲になって尚、あんまりひっつくのは恥ずかしいと、なかなか先に進まない照れ屋な彼女からの甘えたい要請に応えない理由がない。
 しかし、伸ばしたオレの手はひらりと回避された。

「でも、今日はラハが約束破りしてたからダメ! 罰ゲーム執行です、このまま帰る!」
「えっ……、あ! いや、その、これは今夜たまたまで、昨日までちゃんと……」
「たまたまだとしても、夜更かししてたのは事実じゃんか! 時計見てみろ、ラハのばーかばーか!」

 マルエラは素早く踵を返して扉を開くと、べえっと子供みたいに舌を出して、バタンと閉めてしまう。
 慌てて追って扉を開くも、そこには転移魔法の名残のエーテルが舞っているだけ。
 肩を落として扉を閉め、ちらっと時計を見ると……時刻はとっくに日付を変えて久しかった。
 うん、これは夜更かししてるな……
 ……いや、これマルエラの方も夜更かししてないか? オレだけダメなのか?
 まあ、夜中に急に目が覚めて、唐突に恋しくなったから来たとかもあるか。思い立ったら即行動の人だからな……
 そんなたまの甘えたい衝動を完遂させてやれなかった申し訳なさやら、現在の状況的に気軽に触れられない筈なのに訪れたチャンスを逃した事への悔しさやら。
 思わず唸り声が漏れ、そしてがくりと肩を落とした。
 ……確かに約束破ったのは事実だしな……。彼女の心配を無下にしたも同然だ。
 反省、しよう。



■




 あの日はオレの不手際で臍を曲げさせてしまったが、翌日の夜はいつも通りに連絡をよこしてくれてホッとした。
 相変わらず、怒りも拗ねも尾を引かない人だ。その場の発露は大きくても、その後の切り替えが早い。
 ……そうしてまた、しばらく経った頃。

『もしもしぃ、ラハ……』
「ん、どうした? なんかずいぶん疲れてないか?」

 何やら、随分と声が間延びしていて、リンクパール越しでもかなり眠そうだった。
 実際、かけてくるにしては遅めの時間だ。

『んん……ちょっと修羅場った……。流石に疲れて眠い……』
「いや、そう言う時は休息を優先してくれ……」
『んー……、ちょっと声聞きたくて……』
『……どうした? 眠気が大丈夫なら、話だけでも聞くけど」
『んにゃ、私のメンタル的なのは大丈夫……。大変なのはラマちょだし……』

 ……ウクラマト王女の方の苦労はありそうだが、マルエラ自身は疲れてるだけか。
 かなり仲良くなったらしいのを察しつつ、相当な激戦が起こったようだが、訴えるのが疲労だけならまあ、同行者の皆も無事と言う事だろう。

「アンタが無事なら良かった。それはそうと、無理しないで今日はもう休んでくれ」
『んんー……』
「次の機会に長めに話そう。オレも早めに仕事を切り上げるようにしておくからさ。な?」
『……分かった。おやすみぃ……』

 連絡をくれるのは嬉しいが、疲れと眠気でふにゃふにゃな状態では心配の方が勝る。
 体力には自信があると豪語する彼女がこうなのだ。修羅場中の修羅場だった事は想像に易い。であれば、話を聞くよりもゆっくりと休んで欲しい。
 重ねて休んでくれと言えば、ほんのわずかに不満そうな声を漏らしたが、素直に受け入れてくれた。
 寝る前の挨拶をすると、ぷつんと通信が途切れる。
 いったい、何があったんだろうな。王位継承権を得る旅って、そんなに危険なものか? トラル大陸は昔はいざ知らず、今はグルージャジャ王の統治の元、かなり安定していた筈だが……
 ……まあ、未知の強敵との戦いは、どこでも起こり得るか。
 そういう時に、彼女と肩を並べて戦う事が出来なかったというのは、少し残念だが。留守番を選んだのはオレだ。
 きっと、またそういう機会もあるだろう。そうだ、その時に腕が鈍ったなんてならないように、たまには戦闘訓練もしないといけないな。
 久々に外に出るか。近場の……ラヴィリントスに行くくらいなら、留守番の面目は立つだろうし。
 そう思いながら、ふと時計を見る。
 まだマルエラと約束した寝る時間には早いが……、流石に今から外に出て、納得するまで訓練をしていたら、余裕で日付は変わるだろう。
 先日、うっかりやらかして怒られたばかりだ。続けざまに約束を破れば、今度こそ本気で怒らせるだろう。それだけならまだしも、嫌われるとか失望される、なんていうのは御免だ。
 とはいえ、さっきの通話の様子からすると、あっというまに眠りに落ちて、疲れているなら明日の朝まで目覚めない可能性は高いと思うが……

「……そういう時に限って、なんでか察知して顔出したりするんだよな」

 本当に何故か、人がよからぬ考えで行動した時に限って、ひょっこり現れる人だ。そして自ら巻き込まれに来る。
 何かが起こる前兆でも察知してるのか? と考えてしまうほどに、タイミングが良い。もしくは悪い。神出鬼没も良いところだ。
 あっちこっちで、色んな事に首を突っ込んで関わっているのは、この性質のせいだろう。
 なので……戦闘訓練については、素直に明日以降として。今夜は早々に寝ることにしよう。
 ここから本を読みだしたら、また後方からの不意打ちをされる気しかしないからな。



 ふ、と目が覚めた。
 普段より若干早めに就寝したせいか、まだかなり早い時間のようだ。窓から漏れる光はまだ淡い。
 ……起床には確実に早いが、夜にあまり夜更かしできないことを思えば、今起きて読書したりするのはいいかもしれない。決して、早起きは咎められる事じゃないだろう。
 寝起きの頭でそんな思考をしつつ、僅かに身動ぎをしたその瞬間。

「ひ?!」

 ぞわわわっ、と唐突な悪寒が走り、うっかり悲鳴じみた声が漏れた。
 なんだ?! なんだ今の感覚は?!
 夜中に騒ぐのも迷惑だが、早朝に騒ぐのもまた迷惑行為だ。この間は当たり前だがオジカに怒られたし。
 故に混乱を極力抑え、謎の感覚の解明をしようと視線を動かした。

「…………」

 そして気がついた。
 オレが被っている毛布が、確実にオレ1人分以上に膨らんでいる。
 誤魔化しようもないサイズの丸いものが、オレの腹の横あたりにある。
 この時点でなんとなく察しが付いたが、そーっと毛布をめくり上げてみた。

「すぴー……」
「……ウッソだろ」

 そこには、オレの尻尾を頬ずりするような形で抱え込み、猫のように丸まって寝ているマルエラがいた。
 なるほど、さっきの悪寒はオレの尻尾に寝息がかかったからだろう。
 いや。いやいやいやいや。
 何がどうしてこうなったんだよ。アンタ、昨晩疲れたって寝た流れだっただろ。オレが寝ついたのは、その後そこそこ時間が経ってからだぞ。それから侵入したにしても、なんで潜り込まれてオレも起きなかったんだよ。マジでそうはならないだろ。

「本当に、何を思ってそうしてんだよ……」

 確かに、マルエラはオレの尻尾を気に入っている。自分は毛足の短いすらっとした尻尾だからか、ふわふわしてていいなあ、と。
 それにしたって、恋人のベッドに潜り込んで優先的にくっつくのが尻尾かよ。どうせなら本体に抱きつくにして貰えないだろうか。いや無理か。
 そもそも、男の部屋に侵入した挙句にベッドに入り込むとか。一歩間違えれば、襲われても文句言えないぞ。誘ってるのかと思われて当然だ。
 オレだって男である。そして彼女はオレの恋人である。
 そんな相手が自分と同じ毛布に包まり、無防備に寝ている様子に、善からぬ欲求が顔を出すのは致し方ないだろう。
 脳裏に、こういう事をしたらどんな目に合うか、ちょっと分からせた方がいいんじゃないか? なんて思考が過ったが。

「……でも、起こすのは気の毒だよな……」

 まだ早朝だ。二度寝も許されるほどの。
 そもそも、昨日はなにがしかの修羅場が発生し、彼女は疲れ切っていた。だというのに、無体を働くのはどうなのか……という理性のブレーキがかかった。
 安心しきったように眠るマルエラの寝顔を見ながらしばらく葛藤し、……結局、元の通りに毛布をかぶせた。
 前回はオレのうっかりで、甘えさせてやれなかったんだ。
 こうして全幅の信頼を向けてもらえているのは、恋人冥利に尽きると言えばそうだし。
 好きにさせてやろう、と早起き読書を諦めた。
 ……ただちょっと、時折尻尾に寝息がかかったり、すりすりと頬を擦り寄せる感触がこそばゆくて、声を上げたりするのを我慢せねばならず、二つの意味でちょっとした拷問気分だったが。



 尚、すっかり日が昇った頃に目を覚ましたマルエラは、『やっべー寝すぎた!!』と慌てふためき、挨拶もそこそこに転移魔法でトラルに戻って行った。
 無論、こちらからのスキンシップ的なものは無しで。

「……夜更かししてもしなくても、罰ゲームやらされてないか、オレ?」

 どちらにしても、お預け食らった気しかしないんだが??
 我慢した分の諸々のやり場もなくて、がくりと肩を落とすこととなったのであった。
 ……我ながら、振り回されてるなあ……





■





そうはならんやろ

なっとるやろがい!!


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