2023/11/26 22.栗 子供たち
「マスター!」
「マスター、いっぱい拾ってきました!」
「たくさんあります!」
ある日、雑貨屋が休みの日にガラハドやリデルたちと外に出たラピスとノエルが皮の鞄に一杯に何かを持ち帰って帰ってきた。なんだなんだと集まる面々の前で、二人は寒さのせいか頬を赤く染めた状態で鞄を開けた。
「これは」
「栗ですか」
「これは、なかなかのものですね」
「すごいな、三人とも」
聞けば今日はガラハド達の騎獣に乗ってセカンの方まで行ってきたようだ。そこではこの時期に栗拾いをしており、それに参加してきたとのこと。
「参加?」
「参加費を払うと、2キロまで持ち帰っていいとかあるんだよ」
「なるほどな」
ガラハドの説明にうなずいていると、「子供たちに大人気だったわよ」とカミラが言う。ついつい拾うのが楽しくて、オーバーした分は企画側の取り分と言うわけだ。
「一番張り切っていたのはコイツだったけどな」
「だはははは」
イーグルのガラハドを見る目が冷たい。どれだけオーバーしたことやら。それにしても各々二キロでも六人分ともなれば十二キロか。なかなかの数。まぁ栗は使い道が多いから問題ないか。
「それじゃ私が買い取ろう」
艶々して大振り。【鑑定】してもそこそこのランクだ。おそらくはセカンで採取して他の町で売る。みたいな交易クエストなんだろうな。一瞬ガラハドが何か口を開いたが、イーグルに脇をつつかれて閉ざす。
「さて、二人とも、いくらで売ってくれるかな?」
「えっと、ここのギルドの納品金額が1キロ2000シルでしたから、それでお願いします!」
「です!」
「わかった」
チラリとガラハド達へと視線を向ければ三人が頷いたので、赤字ってことはないだろう。二人にそれぞれ4000シルを払い、頭を撫でる。もちろん他の四人も同様だ。
「わりぃな」
「何、こちらも教育だ」
こちらこそ、それこそ三人はこの程度はした金だ。でも彼らが受け取らないとラピスとノエルもいらないとか言い出すからな。ここは受け取ってもらうしかあるまい。――後日迷宮素材となってしこたま詰め込まれているのでむしろもっと払ってもいいと思います。
一応何かあっても大丈夫なようにはしておきたい。ちなみにリデルは来ずかいとして自分でリボンやら布やらを買っているらしい。人形に使うんだそうだ。もちろん私もいろいろ渡してはいるが、自分で選ぶのも楽しいのはわかります。
「さて、明日はこれを使ってケーキを作ろうか」
「お、いいな!」
ちなみに今日のケーキはサツマイモと蜂蜜の|カトルカール《バターケーキ》だ。ザラメを表面に入れたザラメがいいアクセントになっているはず。
カルに紅茶を淹れてもらい、セッティングされたテーブルにケーキを運ぶ。休日はまだ時間がある。子供たちの冒険の話を聞きながらまったりしよう。
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