2023/11/14 08.アールグレイ Zodiac

 ちょっとお使いクエストでスパイスが多く手に入りました。
 さてどうしようかなと思いながらクランハウスに戻る。スパイスを使った料理は好みが分かれるからなぁ。

「そんなわけで、スパイスケークをいくつか作りました」
「ケーク? ケーキじゃないでしか?」
「ケークはパウンドケーキ型で焼くバターケーキのことを言うな。まぁ大した違いじゃない」

 とりあえず今回用意したのは三つ。試食係はいつものメンツです。

「これがジンジャー、イチジクを八角とワインで煮たもの。プルーンをオレンジとシナモンで煮たもの。だな」
「うっすらピンクでし」
「表面に塗るシロップやアイシングの砂糖にもイチジクを煮た赤ワインを混ぜてあるからな。なんでこれはちょっとお茶漬は気をつけろ」
「りょうかい」

 全体的にはアルコールが飛んでて、赤ワインはアイシングだけなんで酔うほどじゃないけどな。と、お茶漬けに言う。
 飲み物は最初は全員紅茶。ここまで来たらスパイスで統一しようとアールグレイだ。カルダモンの香りがふわりとあたりに漂う。

「ん、私的にイチジクがあたり。いやそんな顔しなくても酒の風味があるからじゃないからね?」

 ペテロが目を見開いてイチジクのパウンドケーキを指さす。苦笑いを浮かべているが、私は何も言っていませんよ。
 菊姫はもともとスパイスが多いのはあまり好きではないのだが、プルーンのものがブランデーに合いそうだとのこと。

「他は?」
「どれも美味しいけど、あえて言えばジンジャーかなぁ。ピリッとしてさっぱりしているのがいい感じ。まぁこの三つでは、だからこれだけ食べたらまた別かもしれないけど」
「わははは、みんなうめぇ! けど、シナモンのがいいな」
「俺もイチジクだな」

 あーなるほど、それはあるか。菊姫はジンジャーに蜂蜜かけるか?

「ほしいでし」

 そう言って手を伸ばした菊姫に蜂蜜を入れた小さなポットを渡す。お茶漬も欲しいというので渡した。
 しかし、好みが実にバラバラだな。作り甲斐はあるのでいいのだが。

「ん、美味しいでし」
「ジンジャーに蜂蜜もあうよねぇ」

 しみじみと言うお茶漬。
 ちなみに八角はパウンドケーキだけでは消費しきれないので、角煮も作った。

「それも食べるでし! あと焼酎!」
「私も!」
「肉!」
「肉!」

 はいはい。ドーン! と、大皿に山盛りのせた『剛角豚』の角煮に勇ましい声を上げるのはレオとシン。さっそくクランハウスの共有倉庫から酒瓶を取り出す菊姫と、グラスを用意するペテロ。それにため息をつくお茶漬。うん、通常営業です。

powered by 小説執筆ツール「notes」