2023/11/24 21.津軽りんご 迷宮
さて、迷宮である。
「白」
「む、なんじゃダンジョンじゃな!」
こうも、さも期待しておりませんでした。みたいな反応をさせると、それはそれで寂しい。
「それで、何を集めるのじゃ?」
「リンゴです」
そして場所を理解した後のことセリフよ。まぁ食材集めなんですがね!
本日の目的は食材ルートの季節限定モンスターのドロップ品で、『津|重《・》林檎』に『香玉紅玉』、『王|森《・》林檎』の三つだ。
黒やリデル、クズノハも呼んで、みんなでリンゴ狩りだ。――文字通りの方の意味で。
姫りんごみたいな矢じりの弓を撃ってくる『アップルナイト』を切り捨て、凶悪な口をした『お化け林檎』を雷で蹴散らし、木の形をした『キラーアップル』を燃やし尽くすこと数時間。【ストレージ】にたっぷりリンゴが確保できました。
セーフゾーンに移動して休憩だ。
スルスル~と、リンゴの皮をむく。最初から最後まで途切れないで剥けるとなんとなくうれしい。特に何もないんだがな。
実の方は今日は赤ワインで煮てケーキに入れよう。酸っぱいりんごでジャムを作ってもいいな。
「ん、うまい」
「美味しいわね」
「歯触りがいいですね」
「これで茶を淹れるのじゃ」
「はいはい」
剥いたリンゴをシャクシャクと食べる三匹と一人。白に強請られてリンゴの皮で紅茶を淹れる。そう言えば最初に白と飲んだのもこれだったな。
爽やかなリンゴの香りを楽しみ煮ながら、私も一つ。シャクッとした歯触りと甘酸っぱい蜜が口の中に広がる。うん。美味しい。
「誘ってくださればよかったのに」
「いや、戦闘と言うよりも、乱獲だったから……」
クズノハが【誘引】して白と黒とリデルがデバフをいれて、私が根こそぎ倒すという。戦闘と言うよりも狩り、いや、本当に乱獲でした。雷を使っているだけに、ダイナマイト漁をやっている気分になります。そのうち|弱体化《ナーフ》されたりせんだろうか、これ。
そんな風にカルにちょっと恨み言を言われつつ本日のおやつです。今日のおやつはまさに狩ってきたばかりの林檎を使ったケーキ。タルトタタンのパウンドケーキ版とでも言えばいいのか。リンゴとカラメルを底に敷いて、そこにパウンド生地を流し込んで焼き上げる。冷えたら型から外してひっくり返せば出来上がり。大人向けに赤ワインで煮たリンゴをたっぷり入れたものもある。
他にもリンゴのチップスに、リンゴのムース、紅茶はアップルティでリンゴづくし。もちろん生の林檎も剥いてある。
「美味しいですねぇ、ミスティフに貰ってもいいですか?」
「あぁ、持っていってくれ」
シャクシャクと『津|重《・》林檎』を食べたレーノの言葉にうなずく。何ならリンゴの木も植えるか。
とりあえずケーキを食べて機嫌を直したらしいカルにほっとしつつ、次はちゃんと声を掛けようと思う私です。
powered by 小説執筆ツール「notes」