20251005_スケ荼_ハチミツ
荼毘がソファの上で眠っている。
死んでいるのではないかと思うほど静かに寝ているから、スケプティックは思わず近づいて、まじまじとその顔を覗き込んだ。荼毘の顔の横に、スケプティックの髪が落ちる。照明のあかりを遮って、影が落ちた。
すうすうと寝息を立てている。
胸が上下している。
死んではいない。
ふう、とスケプティックは安堵の息を吐いた。離れようとすると、ぐっ、と髪の毛を引っ張られた。え、と思っていると、荼毘の唇が近づいてくる。
――かすめるだけの、キス。
大きく目を見開くスケプティックに、荼毘は悪戯が成功した子どものような顔で、にやりと笑った。
スケプティックが「いつから起きてた?」と問えば、「さあ?」と返し、ゆっくりと身を起こす。
「寝込みを襲うなんて、あんたもたいがいエッチだね」
「襲ってない」
「え、襲わないの? オレ準備してきたんだけど」
きょとんと目をまんまるにする荼毘に、スケプティックは溜息をつく。長い長い溜息と逡巡の後に、「……襲う」と答えた。くすくすと荼毘が笑う。
余裕ありげな笑い声を、一刻も早く切実な喘ぎ声に変える必要がある。荼毘の唇に指で触れる。荼毘が笑う。この男をかわいいと思う自分を、理解できない。
今度はスケプティックから、荼毘にキスを仕掛ける番だった。かすめて、触れて、しっかりと重ね合わせて。そうやって荼毘の熱を高めていく。互いの熱を与え、奪い、貪っていく。ひとつの生き物になるように。
「あは、好きだよ、スケプティック」
荼毘が言う。
スケプティックはまだ、答えを持っていなかった。
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