11.WEDDING

「ホムラ、モデルやってほしいでし」
「モデル? なんのだ?」

 クランハウスで菊姫に頼まれる。彼女にモデルを頼まれるのは初めてではない。私は姿勢がいいので見栄えがいいそうだ。姿勢はともかく見目はアバターの勝利なんですがね。それはともかく、私は気軽に尋ねたのだがさすがに今回のお題は驚いた。

「ウェディングドレスでし」
「?」

 なんだって? と思わず首をかしげる。

「『性別転換薬』を飲むのか?」
「そのままでいいでし」
「私、今、男のアバターだぞ?」
「知ってるでしよ」

 詳しく話を聞いてみたところ、仲間内で男性アバター向けのウェディングドレスのコンペのようなものをするらしい。

「住人作成のウェディングドレスは性別限定なんでしよ」

 あぁなるほど。『性別転換薬』だと変化後の容姿はランダムだし、今のアバターが気に入っている場合はそもそも変化をしたいわけではないだろうしな。そもそもカジノでも結構なお値段だしなぁ。

「タキシードじゃだめなのか?」
「だめでしね」

 こだわりがあるらしい。とりあえず顎下のみの撮影で、モデルは匿名希望OKとのことなので了承した。





「それでこれ?」
「うわぁ、キレイだねぇ」

 菊姫がペテロとお茶漬に見せたのは、撮影したばかりのSSだ。約束通り、私の顎当たりまでしかわからん。来ている服はドレスというか、タキシードがベースで、背後にスカートみたいなのが付いていると言えばいいのか。レースとフリル、刺繍でかなり華やかだ。
 ジャケット風の上部にも白いバラの飾りが添えられていて、ドレスらしい華やかさを添えている。

「うん、ホムラの銀の髪によく映えてる」

 ちなみに髪もゆるくみつあみにして花をこれでもかと飾られております。これ着て、髪のセットとかなんだかんだ半日かかってるんですよ。世の中の花嫁さんは大変だなぁ。まぁゲームなので一回着れば次からはフルセットがボタン一つで終わるが、その予定はない。

「今回のコンセプトどんなのだったの?」
「最大身長付近でし。だからシンみたいな体格の人もいたでしよ」

 おう、それは本当にいろいろだな。私に他の人のも見せてもらったが、それぞれ個性的でありながら確かにウェディングドレスと言われれば納得できる出来栄えだ。

「結局、誰がコンペ優勝したの?」

 ペテロの質問に菊姫が「これでし」と見せてくれたのは、なんというか、うん。

「小林さ〇こ?」
「いや、そこまではいってないから、美川〇一?」

 とりあえず、二十世紀末の年末歌合戦を彷彿とさせるド派手なドレスでした。はい。

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