ぽわっとフワっと♪らぶゆ~れっすん☆

アイカツオンパレード きらあこと有栖川おとめちゃんのユニット、ぽわフワドリーミン♪のssです。
pixivで頂いたリクエストをもとに書かせて頂きました。ぽわフワドリーミン♪が初めて一緒にダンスを合わせた時のあれこれのお話です。


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 あこがレッスン室に着いてストレッチをしようと思ったら、ちょうどきららもやって来て早速飛び付いてきた。
「あこちゃん~♡今日も頑張ろうね♡♡」
「もう、急に抱きつくのはおやめなさいといつも言ってるじゃありませんの! シャーッ!」
「怒っちゃメェ~なのっ!」
 いつものようなやり取りを繰り広げていたら、後ろからもう一つの影が近づいていた。
「と~っても仲良しさん! らぶゆ~です~♡」
 そう言って瞳をキラキラさせながら二人に向かって言ったのは、綺麗に纏めあげたお団子ヘアーがキュートな少女だった。
「あなたは!」
「有栖川おとめちゃん!?」
「あいです~。今日はよろしくなのです」
 その少女、おとめは明るく微笑んだ。二人も慌ててお辞儀をする。おとめとこうして言葉を交わし合うのはこれで二度目だった。一度目は先週。おとめの方からユニットを組まないかと言われた時だった。
 別の時空にあったアイドルの世界が繋がった、というのはこの世を揺るがす世紀の大ニュースだった。そもそもみんな自分達が暮らす以外の別の時空があるだなんて思ってもみなかったし、別の時空にもアイドルがいただなんて驚きだった。もちろん社会的にはまだ混乱もあるようだが、アイドル達はすぐに交流を始め、様々なコラボユニットを組んでステージに立つというのが今やトレンドになってきている。
 あこときららもコラボをしてみたいと思っていたところにおとめが声をかけてくれたので、トントン拍子で話が進んだ。しかし3人ともトップアイドル。それぞれ単独での仕事も色々とあるため、今日が最初で最後の練習だ。
「きらら、一緒の練習とっても楽しみだったんだ!」
「わたくしもですわ。よろしくお願いいたしますわ」
「それじゃあ始めちゃうのです~!」
 めいめいにストレッチなどをして早速ダンスを合わせてみる。曲はハートがスキ♡ップ。ポップでとっても可愛くて3人とも大好きな曲だ。それぞれ個人でかなり練習してきているので、一人ひとりに目立ったミスはない。完成度でいうと全員がかなり高いはずなのだが、どうしてだかどこかちぐはぐな印象があった。目の前に広がる大きな鏡の中の自分達は、ユニットと言うには一体感がなかった。曲を止め3人で首を傾げる。
「これは……どういたしましょう」
「う~ん、困ったね」
「そうですね~……」
 暫く沈黙が続いた。あこは脳内コンピューターをカタカタさせてみるがなかなか妙案が思い浮かばない。きららも、みんな踊れてるのになんで~? と言って唇を尖らせていた。パンッと手を叩いたのはおとめだった。
「あこたん、きららたん!」
「にゃ!? どうされましたの!?」
「おとめちゃん、もしかして何か良いレッスンの方法を思いついたの?」
「あい! みなさん、可愛いとか楽しいとかそんな気持ちになるものの名前を言っていきましょう!」
 おとめはきらりと目を輝かせながら言った。
「は? ど、どういうことですの?」
 怪訝な顔をするあこのことは気にも留めない様子でおとめは言葉を続ける。
「それではまずおとめからいきますよ~。ポップコーン!」
「ですからそれは一体どういう意味でーー……」
「はいはーい! きららはね、ふわふわのコットンキャンディー!」
「わぁ~、きららたんさすがです~」
 おとめはパチパチと手を叩き、きららは嬉しそうに頭をかいている。なんだこれは。
「あとはですね~、カラフルなレインボー!」
「それなら、ゆめかわなユニコーン!」
「ポテポたん!」
「フワフワメリー!!」
 既に通じ合ってしまった様子の二人に何だか取り残されたようになってしまってあこは更に眉間の皺を深くした。
「あの、あなた方、先ほどから一体何なんですの?」
 頭にハテナをいっぱい浮かべながら聞くと、きららもおとめは同時に顔をあこの方に向けた。
「だからー、可愛いとか楽しいって気持ちになれるものの名前だよあこちゃん」
「ほらほらあこたんも遠慮せず言うのですーっ」
「ですからこれがどうダンスに関係ありますの?」
「あこちゃん!」
「あこたん!」
 二人にグッと詰め寄られて、たじろいで、どうにもならずあこは口を開いた。
「ああ、もうっ! スパンコールのお星さま! これでどうですの!?」
「あこちゃん、最高だよ~♡」
「と~ってもらぶゆ~! なのです♡」
 思いっきり二人にぎゅっと抱きつかれてしまう。
「な、なんなんですのこれ……」
 言いながらも顔は勝手に熱くなり、なんだか満更でもないような気分だ。そのあともしばらく可愛いものや楽しいものを言っていった。気が付けば、少し前までダンスで行き詰まっていた時の、悩ましくて緊張感のある雰囲気はすっかりなくなっていた。自分達の思う可愛いや楽しいを言い尽くしたおかげで、気持ちが明るくなっていた。それはそのまま効果を発揮した。その直後にもう一度合わせたダンスは、最初の頃と見違えるくらいに綺麗に揃ったのだ。まるでずっと前から一緒にやっているユニットかのような息の合い方だった。
「すごいですわ……!」
「ほんと。めっちゃヤバイよ!」
「良かったのです~!」
 ニコニコと微笑むおとめを見ていて、あこの脳内コンピューターがカタカタピンポン! と音を立てた。自分達は今日初めて一緒に踊った。それぞれスキルは高いが、個性はバラバラだ。だからこそ、息を合わせるにはお互いのことをよく分かって信頼し合わないといけない。可愛かったり楽しかったりするものを言っていったおかげで、お互いがどんなものを気に入っているか、どんなものを可愛いと思うかを伝え合い、共感し、わかり合うことが出来た。だからダンスが揃ったわけだ。おとめはこれを始めから分かっていてやったのだろうか。だとしたら。
「あこたん? どーしたのです?」
「えっ?」
「ずーっとおとめの方、見ているので」
「いえ、そにょ、な、なんでもありませんわ!」
「えーっ、あこちゃん浮気~?」
「あなたは何を言ってるんですの! シャーッ!」
 調子に乗り始めたきららにはいつものように窘めてやる。するとおとめが、ふたりは本当にらぶゆ~♡なのですねと意味深に言うので、何となくシャーッの切れ味が削がれてしまった。有栖川おとめ、スターライト学園でトップの座にも着いていたらしいとは聞いていたが、想像以上というか、ただ者ではなさすぎるとつくづく思ったあこなのだった。
 帰り道、おとめと別れたきららとあこは、この後一緒の仕事が入っていたため、二人で迎えのワゴンに乗り込んだ。
「おとめちゃん、すっごかったねぇ! レッスン、楽しかった~!」
「ええ、本当に。最初はどうなることかと思いましたけれど、あの方、本当にすごかったですわ」
「うんうん。きららたちがとってもらぶゆ~な関係だってこともバレバレだったしね」
「にゃっ!? ら、らぶ……!? ど、ど、どういう意味ですかしら!?」
 慌てて赤くなるあこに、きららはニシシとからかうように笑う
「もう~分かってるくせにぃ。らぶだよらぶ♡世界を救うし、最高で永遠なのがらぶだっておとめちゃん言ってたじゃん。きららとあこちゃんはそーゆー仲でしょ?」
「まったくあなたはどうしてそう恥ずかしげもなく……」
「あこちゃん、らぶゆ~♡」
「はいはい」
「ほらぁ、あこちゃんも、らぶゆ~ってゆって~♡」
 口調は軽薄、しかし丸っこくて大きな瞳はどこか熱っぽく、期待するような眼差しをあこに向けている。
「にゃ!? ……なんでわたくしがそんなこと言わなくちゃいけませんの」
 ぷいとそっぽを向いた。急にきららがやたらと可愛く見えてきて、これ以上まともに見つめあっていたら身が持たないと思ったけど、そんなこと素直に言ってやる気はない。
「だってきららのこと好きってのはほんとのことじゃん~」
「もういい加減にしなさいな~っ!」
 いつものやり取りを繰り返し、ワゴンは次の仕事の現場、テレビ局の方へ吸い込まれていった。

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